2023年11月24日
第201回講演交流会開催
第21期会員総会に続き、初代原子力規制委員会委員長を務められた田中俊一氏をお招きして、第201回講演交流会が開催されました。
2012(平成24)年9月、同委員会はそれまで経済産業省内の原発推進組織と同居していた規制組織を分離・独立させるとともに、各関係行政機関が担っていた原子力規制や核物質などを守るための事務が一元化されるなど、わが国の新しい原子力安全規制体制として期待の中で発足しました。
その立ち上がり後、私たちが報道を通じて拝見した田中氏のご奮闘のお姿は、まだまだ記憶に新しいところです。今回はご学友の宮下博文会員(924)のご尽力で、田中氏の“生の声”を伺う貴重な機会を得ました。
政治・行政、メディア、科学者等専門家の責任は重大
「多数の住民が避難を余儀なくされた福島第一原発事故。避難は当初の予測を大幅に越えて長期化し、事故から12年経過した現在も、帰還できる見通しがない広大な地域が残されている。この原因は、事故後に科学的根拠のない放射線や放射能の不安や恐怖が流布され、そうした世評に迎合するような避難が実施されたことによる」(田中氏)
田中氏は、原子力規制委員長を退任した後、飯舘村に住み、福島の実態に向き合ってこられました。
「我が国の政治・行政は、科学的判断よりもポピュリズムに流されがちであり、今回の事故対応には、そうした面が多々見られる。また、事故当初の冷静さにかける専門家の姿勢に留まらず、事故から10カ月経ってから長期の避難を固定化する判断に与した専門家の責任は重大である」(田中氏)
講演会終了後は立食の交流会となり、田中氏と大学時代に同じ寮で過ごした宮下博文会員からエピソードの紹介があり、その後、多くの会員から田中氏への質問、意見交換が活発に行われました。
また、総会で創設が報告された「地域デザイン総合研究所」の所長に就任されたDF理事・学術顧問(東京大学教育学部教授)のご挨拶がありました。
以 上(得丸 英司)
2023年8月18日
第200回講演交流会開催
ディレクトフォースの講演交流会は、DF創業当初の2003年以来継続して開催され、今回、第200回を迎えました。誠にご同慶の至りです。
その間、2020年にはCOVID-19のパンデミックに見舞われましたが、多くの会員のご尽力で、オンライン講演の手法を開拓し、途切れることなく継続しています。
- 日時
- 7月24日(月)15:00~17:00
- 講演
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新しい資本主義とイノベーション
- 講師
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平 将明 氏 衆議院議員
- 方式
- 学士会館 + Zoom Webinar
- 参加者
- 学士会館 47名、Zoom 67名
- 交流会
- 立食 17:00~18:00
講師の平将明氏は経済産業大臣政務官、内閣府副大臣を歴任され、政府内でも自他ともに認めるデジタル化の旗手で、今回の講演でも行政のデジタル化の動向についての現状の課題と将来に向けて、わかり易く明快な解説があり、聴講した会員からは好評でした。
以下は平氏の要旨(一部)です。
「One to One
マーケティングの行政サービス」がデジタルガバメントの目指す理想の姿だが、現在は国や地方自治体の把握できている国民一人一人の情報が不足しているので実現のハードルは高い。だから、2020年の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策の際の「一人一律10万円の特別定額給付金」のような施策にならざるを得ない。One
to One
の行政サービス(真に必要な人に必要なだけのサービスが提供できる)が実現すれば、マイナンバーカードを軸に「プッシュ型の行政サービス」が提供できるようになる。行政サービスに係るランニングコストを下げられるし、人員削減にもつながり昨今の人手不足対策にもなる。
また、ChatGPTに代表される生成AIに対する平氏の持論も展開されました。
生成AI(ChatGPTなど)については、今年5月のG7広島サミットにおいても、国際的なるルール作りを進行することで参加国が合意した。それが「広島AIプロセス」として走り始めている。基本的にはファンデーションなどのベースの開発については規制すべきではないと考えている。だからこそ、米国のような第三者認証や監査制度が重要になってくるのではないか。G7でも論議されたように、AIを使った兵器(開発)などの禁止は言うまでもないが、それ以外にも、生成AIの抱える著作権の問題など解決しなければならない課題はある。しかし、将来的には「電子政府」へと発展を遂げ、デジタルガバメント・ガバメントクラウドによって、いわゆる「行政窓口の一本化」の実現が期待される。
漸く再開した交流会でも、久しぶりに親しく飲み交わす様子がみられました。また、交流会にも参加いただいた講師の平氏からは、談笑する会員に対して「皆さん方の慣れ親しんだ “アナログ”
にもいい面は沢山あり、その役割はまだまだ健在ですよ」と配慮いただく場面があるなど、和やかな会となりました。
以上(得丸 英司、小林 慎一郎)
2023年5月15日
第199回講演交流会開催 講演要旨
- 日時
- 2023年5月9日(火)15時~
- テーマ
- 『オリンピックとコミュニケーション』
- 講師
-
堀尾 正明 氏(元NHKアナウンサー)
- 場所
- 学士会館 + Zoom Webinar
講演に先立って、段谷代表から、DFの新しい活動基盤づくりである「地域社会デザイン」プロジェクトのキックオフと同企画委員会(平尾光司委員長、牧野篤顧問)設立の報告がなされました。
今回の講演は、元NHKアナウンサーの堀尾正明氏を迎え、「オリンピックとコミュニケーション」をテーマにお話を伺いました。
紅白歌合戦総合司会、ニュース10キャスターなど、TVを通じてお馴染みの堀尾氏ですので、学士会館のリアル会場では大変和やかな雰囲気の講演会となりました。
【コミュニケーションの不得意な日本人】
アナウンサーという仕事(職業)は、日本独特のものであり、欧米などの諸外国にはみられない。我が国では、「話す」というコミュニケーションが、特別な訓練を経た専門スキルであるということが分かる。それだけ日本人は「コミュニケーションが不得意」ということ。
昔「男は黙って…」というTVCMが流行ったが、元来日本では「寡黙が美徳」とされてきたように思う。オーバーアクションとも思われる大げさな身振り・手振りを交えて、顔の表情豊かに会話する欧米諸国の民族とは、明らかに違うのではないだろうか。
【コミュニケーション能力が低いと騙されやすい?】
コミュニケーション能力とは、人の話を「きちんと聴くことができる」「常識を持って聴くことができる」「論理的に聴くことができる」ということ。
これらの能力が低いと、オレオレ詐欺などの特殊詐欺トラブルに巻き込まれやすいと言われている。
この後、堀尾氏からクイズが出されましたが、参加した会員のほとんどが正解できず、大笑いするとともに、コミュニケーション能力を鍛えることの大切さを痛感した場面もありました。
また、堀尾氏はアテネ・トリノ・北京オリンピック総合キャスターなども務められており、昨今のオリンピックの巨額な放映権をめぐるスポーツメディア事情など興味深い話も披露されました。
講演会終了後は、恒例の新入会員紹介の後、交流会が開催されました。交流会会場では、名刺交換や和やかに談笑する姿があちこちでみられ、「コロナ禍以前の本会のことが思い出され楽しかった」との声が聞かれました。
以上(得丸 英司)
2023年3月16日
第198回講演交流会開催 講演要旨
- 日時
- 2023年2月27日(月)15時~
- テーマ
- 『検証 地方創生』
- 講師
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上田 清司 氏 参議院議員
- 場所
- 学士会館 + Zoom Webinar
今回は埼玉県知事を4期16年勤められたご実績について、「上田県政16年の検証」をテーマに興味深いお話を伺うことができました。
【犯罪の減少】
一般に、人口が急増し経済発展する地域では、地域社会のコミュニケーションが悪くなり、犯罪が増えるなどのマイナス面が出てくるが、「民間パトロールの活用」で減少。
【財政の健全化】
副知事を県指定出資法人の代表者にする慣習をやめ、民間企業家を起用して、黒字化を達成。赤字補填の資金注入減と黒字化の収入増のダブル効果で県財政の健全化を達成。
【教育の正常化】
「上田プログラム」と称し、ライオンズ・ロータリークラブに協力を依頼して、
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幼稚園での一週間の体験学習
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事業所でのインターンシップ体験
自己肯定感が醸成され、夏休み後の不登校生徒数が大きく減少。高校中退率の減少につながった。
【物流網の充実】
圏央道の建設促進により関越道、東北道との接続で、埼玉を物流の拠点化。
ニッポン(失われた30年)の検証
【どうするニッポン】
アベノミクスの検証は現段階では難しいが・・・
世界シェア 一人当たりGDPで判断するとどうなる?
政府債務は300兆増だが、国際競争力は?
「検証」して政策に反映することが必要
「地方に学ぶ」地方の好事例を参考に(政策を科学を導入して反映)
地域社会の共同体=過密地域と過疎地域の齟齬(利害対立)
社会のレジエンス=社会全体の強靭化(抵抗力)の再構築が必要
そのための新しい産業づくり(国民生活を豊かに「安全・安心」へ)
災害列島ニッポンの強み=防災産業の世界への進出
- 16年の検証
- 県内総生産
終了後、新入会員の紹介、懇親会が実施された。
以上(得丸 英司)