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(最終更新日: 2015年2月7日

歌舞伎同好会 
世話役:跡部 浩一 

2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年

見出し 2014年版

目 次

実施日付 お知らせ/出し物 劇 場
11月16日(土) 第24回例会 「顔見世大歌舞伎」鑑賞 歌舞伎座
5月24日(土) 第22回例会 5月例会「文楽」鑑賞 国立劇場小劇場
1月19日(日) 第21回例会「通し狂言 三千両初春駒曳」四幕七場 国立劇場

14/11/26

第24回歌舞伎同好会 観賞報告

歌舞伎同好会今年最後の観劇会を11月16日、歌舞伎座で開催しました。当日はご家族を含め38名の皆様に参加をいただきました。

出し物は「寿式三番叟」「井伊大老」「熊谷陣屋」の3本立て。初代白鴎33回忌追善供養公演で幸四郎、吉右衛門、染五郎等の俳優陣の活躍が期待されました。

今回の観劇では2つの収穫がありました。

「寿式三番叟」は能の「翁」の舞踊化ですが、「翁」の源流は、古代の五穀豊穣を祈った農耕神事に遡れるでしょう。「熊谷陣屋」は1757年初演の人形浄瑠璃の歌舞伎化されたもので、平家物語の敦盛最後をベースにしたフィクションです。「井伊大老は」昭和31年初演の北条秀司作の新歌舞伎(昭和歌舞伎)で、これはまさしく近代リアリズム演劇で、女形と三味線音楽があるから歌舞伎?と疑問を抱かせますが、吉右衛門が醸し出す井伊直弼のスケールの大きさは、やっぱり歌舞伎役者じゃないと表現できないもがありました。

このように今回の観劇では歌舞伎の、あるいは日本演劇史を4時間弱の時間でなぞることになりました。

もう一つの収穫は、確保できた席が花道直下のかぶりつき、但し裏側で役者の後ろ姿しか見えないのではないか心配でしたが、染五郎、松緑の二人三番叟が花道で激しく踊る姿を仰ぎ見ることができました。足で激しく床(所作板)を打つエネルギーに流れ散る汗のしずく、白塗りも剥げ落ちかかるすさまじさに、遠くから眺めるのと違った迫力を見ることができました。稲穂型の鈴を打ち振り、満身を込めて土(床)を踏み付ける姿に、農耕民族としての日本人の祈りを見る思いでした。

更に、熊谷陣屋の幸四郎演じる直実の花道で幕外での名せりふ「16年は一昔、ああ夢だ、夢だ」を目の前で仰ぎみるように聞くこともできました。我が子を忠義のため手にかけた父親の不条理は出家によって救済されるかもしれませんが、母親の嘆きからの救済はどうなっているのと思われた方もあったのではないでしょうか。

「敗戦後40年の経済大国は大昔、ああ夢だ、夢だ」とならないように現役、次世代の皆さんに頑張って欲しいですし、DFの皆様には「今ははや、何思う事なかりけり、弥陀の御国に行く身なりせば…」という身勝手はまだまだ許されないのではないでしょうか。

来年度は、1月18日の国立劇場初春公演「里見八犬伝」から観劇会を始まります。歌舞伎同好会も満5年を経過しました。引き続き6年目も多数の会員のご参加を期待しています。

(神村 記)

14/06/12

第22回歌舞伎同好会 観賞報告

5月24日(土)国立劇場小劇場で19名の参加者を得て、同好会で年に1回恒例となった文楽(人形浄瑠璃)鑑賞会を開催いたしました。

演目は文楽5月公演「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」徳庵堤の段、河内屋内の段、豊島屋油店の段で、人形遣いは与兵衛が桐竹勘十郎、お吉が吉田和生です。次いで「鳴響安宅新関(なりひびくあたかのしんせき)」勧進帳の段と続きます。人形遣いは、富樫が豊松清十郎、弁慶が吉田玉女でした。

女殺油地獄は近松門左衛門が69歳の時に著し1721年大阪竹本座で初演されましたが、近代になって近松が再評価される昭和27年まで上演が途絶えていました。

甘やかされて育った青年与兵衛が借金に困り、周囲の深い情愛をも顧みず、親身になって面倒を見てくれている油屋の女将お吉が追加の借金を断ると、ついに脇差を抜いて最悪の事態へと突入します。複雑な家庭事情の中、放蕩者の与兵衛を気遣い慈悲に満ちた深い情愛を示す周囲の者達、執拗に借金返済を迫られ追い詰められていく与兵衛、そしてついに心のよりどころであったお吉に対してまでも刃を向けることになるのですが、そこに至るまでの心理描写が見事です。クライマックスはこぼれた油と血糊で滑る床の上を命乞いをしながら必死に逃げ回るお吉と、同じく滑り、転びながら脇差を振りかざして執拗に追いかける与兵衛の地獄のような場面です。人形を横に倒し滑らせながらの熱演でした。

余韻を冷まして次いで鑑賞したお馴染みの鳴響安宅新関 勧進帳の段では、義経を気遣う弁慶と富樫とのやり取りと心の交流は何度鑑賞しても心を打たれます。歌舞伎では義経を速やかに逃がした後、弁慶が六法を踏んで花道を引き上げますが、文楽では弁慶が六法を踏んで舞台下手に消え幕となりました。

終演が午後8時を過ぎるため懇親会はなしとしました。鑑賞会を終え、一同感慨に浸りながら涼しい夜風の中、家路につきました。

実は今回の文楽鑑賞会は、午前11時開演の第1部と、午後4時開演の第2部のどちらかを選ぶことが出来ました。幹事達は演目の面白さから満場一致で第2部を選び国立劇場へ申し込みました。ところが、その後しばらくして人形浄瑠璃文楽座大夫で、人間国宝、日本藝術院会員、文化功労者の七世竹本住大夫(89歳)の引退が発表され、第1部に引退公演が組み込まれたことを知るという少し残念な結果となりました。

以上 
(2014.6.11 保坂 洋)

14/01/28

第21回歌舞伎同好会 観賞報告

2014年新春歌舞伎を1月19日(日)国立劇場で会員24名ご家族17名の合計41名が参加されて、開催いたしました。

今回の演目は「通し狂言 三千両初春駒曳(はるのこまひき)」で、原作は「けいせい青陽鷦(はるのとり)」ですが、時代設定や登場人物の名前を「太閤記」の世界に移して、小田(織田)信長死後の後継者争いを物語の背景としていました。

人物関係が複雑で、さらに高麗国の王家の子女が渡来して活躍するという設定も加えられたので、物語のスケールは広がりましたが、幾分複雑になったように感じられました。しかし、幹事の神村さんから事前に「すじがき」のコピーが参加者に渡っていたので、皆さん分かりやすかったのではないかと、ほっとしております。

開始早々、場内が真っ暗になり、正面に馬の姿が光輝いて映し出され、観客から溜息と盛大な拍手があり、新春午歳にふさわしい幕開けとなりました。

物語はテンポよく進み、小田三七郎信孝が悪党の馬方を切り伏せて三千両の載った馬を曳いて行く場面―通称<馬切り>は信孝の颯爽たる風姿の描写で明治以降好評を博したそうです。今回は好評の「馬切り」の立ち廻りや「釣天井」の仕掛けを始めとして、原作の面白い趣向を生かしながら、台本を大幅にアレンジして通し狂言として約150年ぶりに復活上演されました。

信孝の菊五郎を中心に、時蔵、松緑、菊之助などが勢揃いし、正月らしい華やかなものとなり、歌舞伎の魅力満載の舞台を楽しみました。

懇親会はいつも通り3階の「向日葵」に席を移し、和気藹々とおこなわれました。

27名といつもより少なかったのですが、新入会員佐藤さんの楽しい自己紹介があり、飛び入り参加のDF会員小林さんから歌舞伎は初めて見たと面白い感想があり、笑いに包まれながらお開きとなりました。

今年は5月に文楽公演、7月に歌舞伎鑑賞教室、秋に新歌舞伎座での鑑賞会と4回(含今回)を予定しております。時期が来ましたら、会員の皆様に参加募集のご案内を致します。奮ってご参加くださいますよう、お願いいたします 。

なお、会員数は昨年2名の退会、今年2名の入会があり、現在会員数は70名となっております。

以上 
(世話役 織本 記)