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一般社団法人 ディレクトフォース

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2014/10/01(No182)

「図解 海外子会社マネジメント入門」の出版にあたって

毛利 正人

筆者私は現在、クロウホーワス・グローバルリスクコンサルティングという会社で日本企業の海外子会社に対するガバナンスの導入、リスクマネジメントやコンプライアンス体制の構築、内部監査などの支援業務を行っています。仕事柄海外出張が多く、日本企業の数多くの海外子会社の実態を見てきました。逆に、欧米多国籍企業の日本の子会社のコンプライアンス活動などの支援をすることもあり、欧米企業の先進的なガバナンススタイルを学ぶ機会にも恵まれました。この度、このような私の直接の体験をベースに考えをまとめる形で東洋経済新報社より、「図解 海外子会社マネジメント入門」という本を出版いたしました。この場をお借りして、以下に内容を簡単に紹介させて頂きたいと思います。

わが国企業の海外進出の歴史を振り返ってみると、これまでの海外事業推進の中心は日本本社であり日本からの海外駐在員でした。しかし近年は、現地の状況に適応した迅速な経営判断と機動性が重要であることから、海外事業推進の主役は徐々に海外子会社とそこで採用した経営者、管理者に移りつつあります。その意味で、現地への適切な「権限委譲」がますます重要になってきています。一方で、目の届きにくい海外子会社の経営の失敗によりグループ全体の企業価値を毀損してしまった事例もあり、日本本社としても海外子会社をある程度コントロールせざるを得ない事情があります。また、最近増えている海外子会社における不正も悩ましい問題です。このような新たな経営環境の下、日本企業はどのように海外子会社をマネジすべきか、またどのように現地の経営者に対してガバナンスをきかせることができるか、という問いに対する答えのひとつとして本書を執筆いたしました。

これからは日本人駐在員を派遣することによるガバナンスに過度に頼ることなく、「事業運営は現地に任せるが、本社が検証する」という子会社への仕組み導入によるガバナンスを主体に考える必要があります。本書全体を通じて私が最も訴えたかったことは、海外子会社マネジメントの重要な要素である「ガバナンス」「リスクマネジメント」「コンプライアンス」、そしてそれを支える「内部通報制度」「内部監査」は、それぞれが独立したものではなく連続した一連のプロセスであり、そのように一体として運用した時に効果は倍増するということです。企業の海外事業推進部門の方々、管理部門の方々、クロスボーダーM&Aを今後企画または過去に実施し、マネジメントにお悩みの方々などにご一読いただき、問題解決に向けた一助となれば著者としては望外の喜びです。

なお、本書は海外子会社マネジメントの入門書という位置づけですが、「経営がグローバル化している企業が株主に対するコーポレートガバナンス責任を全うするためには、海外子会社に対するガバナンスを確立しなくてはならない」という私の基本的な主張がベースとなっています。余談となりますが、この度この主張に近年における外国法人株主の増加という現象の視点を加え、「日本企業のグローバル化と海外子会社に対するガバナンスのあり方について」という論文にまとめました。日本監査役協会の設立40周年記念懸賞論文に応募したところ、思いがけず社会人・一般の部で「佳作」受賞いたしました。この論文の全文が日本監査役協会の以下のホームページに掲載されています。ご関心のある方はぜひ併せてご一読ください。マーク

日本監査役協会の該当ページ⇒ http://www.kansa.or.jp/news/information/40-2.html

もうり まさと ディレクトフォース会員(会員No.1018)
現クロウホーワス・グローバルリスクコンサルティング 元監査法人トーマツ

編集註:
「図解 海外子会社マネジメント入門」の紹介記事はこちらをご覧ください

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