DF監査役部会第9クール 第4回研修会
長年の法改正で監査役の制度や権限は整備されたが、監査の実務ではそれらが有効に活用されていないのではないかとの問題意識から、第4回研修会では、「監査役の権限、義務、責任を再確認し、その上で監査の実効性を確保するためには何が必要か」を取上げた。
- 開催日時:平成26年1月29日(水)午後3時〜5時
- 場 所:学士会館203号室
- テーマ:「監査役の権限、義務、責任と監査の実効性の確保
常勤監査役、社外監査役それぞれについて考える 」
- 講 師:佐藤明夫氏(弁護士 佐藤総合法律事務所代表)
【要 旨】
「監査役の権限、義務、責任」
- 監査役の権限は商法改正のたびに強化されてきているが、十分に活用されていない。
「権限」は、行使の仕方を間違ったり、合理性なく行使しないと責任が発生し、「義務」に近い。
- 監査役の基本的義務は善管注意義務(良識を持った社会人として行動すること)である。
- 監査役の責任は①会社に対する責任(任務懈怠責任)、と②第三者に対する責任とがある。
- 経営判断の原則とは、役員の責任(とりわけ忠実義務や善管注意義務)の違反の有無を判断する基準で、「結果責任」ではなく「プロセス責任」を問うものである(監査役も意識が必要)。
- 最近は、裁判所も忠実義務、善管注意義務、経営判断の原則を厳しく適用する傾向がある。
「監査の実効性の確保」
- 監査役は何のためにある(いる)のか⇒企業価値の向上のためにある(いる)。
→監査を通じて、あるいは監査を行うことで「企業価値の向上」に貢献できているかを常に考えることが大事。「監査の実効性」を判断する基準もここに尽きる。
- 監査の実効性は「仕組み、枠組み」の問題ではなく、監査役と経営の意識の問題がほとんど。
① 常勤監査役
- 監査役は「企業価値向上のために監査業務を行う」ということへ意識改革が必要。
- 高いレベル、難しい内容の経営判断事項に対して、きちっとした意見を持ち指摘をする。
また、適切に執行サイドに対して批判的見解を言う「腹のくくり」が必要。
- 会社は、適切な人材を登用の上、監査に全面的に協力する体制を整備する。
② 社外監査役
- 外の社会の事象や社内にない視点・思考を積極的に役員会で展開することが必要(結果としてその役割を果たすとしても、不正の発見のための存在ではない)。
- 会社は、適切な人材を登用の上、会社が社外監査役に期待する役割を本人に明示すべき。
(出席者感想)
多くの出席者から「企業価値向上に貢献する監査」への賛辞・共感が相次いだ。
全般に「明解で割り切りのよい、かつ丁寧な説明で良く理解できた」と、好評であった。
以上