DF監査役部会第9クール 第3回研修会
経営戦略を策定・実行するうえで、リスクマネジメントとの関連性・必要性を理解することが不可欠であるため、第3回研修会のテーマとした。
- 開催日時:平成25年12月17日(火)午後4時〜6時
- 場 所:学士会館203号室
- テーマ:「経営戦略とリスクマネジメント」 具体的事例から学ぶ
- 講 師:松田千恵子氏(首都大学東京大学院 社会科学研究科 経営学専攻教授 マトリックス株式会社代表)
【要 旨】
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日本企業に多いリスクマネジメントへの誤解
- 「リスク」という言葉は日本語に訳せない。その定義の違いから取組の間違いが発生する。
- 「リスク」は、「ある事象の変動に関する不確実性」とそれによる「損失発生の可能性」。
「リスクマネジメント」の本質は、「損失が発生した場合に、企業が消滅する恐れ・事業が中断し損失を発生し続ける『無駄な存在』になる可能性・誰がどのように認識し対応するのか」ということで、正に経営(経営トップ)の問題である。
- 日本企業でリスクマネジメントが進捗しないのは、日本人の特性・徳性が邪魔をしている。
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改めてリスクマネジメントを考える
- 経営トップの「リスク」に対する「感度」の鋭さがこそがリスクマネジメントのあり方を決める。 トップの強いコミットメントを軸に、自らがその全体像を策定し、浸透させる必要がある。
- リスクを管理するとは、リスクの識別・リスクの評価・リスクの対応を行うことである。
- 特に事業会社におけるリスクの識別は"泥臭く"行う必要がある。表面的なリスクだけでなくその原因及びリターンの可能性についても考える。
- リスクにどのように対処するか
- リスクが本質的に識別・評価できていなければ、効果的なリスクコントロールに繋がらない。経営計画策定時に検討したリスクの識別・評価・対応は、リスクマネジメントに直に繋がる。
- 「起きてはならないこと」を様々な立場で、実地にシミュレーションすることで真に有効な手段が見えてくる。
- 危機管理と事業継続の間に、企業として重要な対応「危機広報」がある。経営トップが前に出る、窓口一本化、事実が特定できる範囲の明確化、共感を示す、ことがポイントである。
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企業経営におけるリスクマネジメント
- 社内監査役は社内事情を熟知しているメリットがある一方、株主よりも会社(上司・仲間)の方を向く傾向がある。一方社外監査役はその逆であり、両者がうまく協働することでリスクマネジメントにも良い効果をもたらす可能性がある。
- 企業の景況感が良くなってきた昨今、特に監査役として留意してほしいリスクには、投資とその判断指標が適切かどうか、という点、及びグローバル化に伴い不正などの問題が増えている海外子会社や海外投資先における管理、すなわち親会社のガバナンスが適正に効いているか、という点がある。この不正が増えており、新たなリスクとして認識する必要がある。
- リスクマネジメントはガバナンス、企業理念から経営戦略、内部統制からコンプライアンス、
内部監査といった企業経営の全体系と深く結合している。孤立した存在では意味がない。
- リスクマネジメントは、利害関係者との関係性の問題でもあり、社会に意味ある存在として
自社があり続けることを利害関係者に的確に納得してもらう効果を持つ。そのための発信
を持続的に行っていくこともまた重要である。
以上