DF監査役部会第7クール - 第6回研修会
監査役部会第7クールの第6回研修会が、次の通り開催されました。
- 開催日時:平成24年3月14日(水)午後3時~5時
- 場 所:学士会館203号室
- テ - マ:グローバルに通用する経営管理
本当に良い企業とは何か
- 講 師:首都大学東京大学院 社会科学研究科教授 松田千恵子先生(写真)
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- 参加人員:55名
【講演概要】
前段では日本企業がグループとして成長していく為に、今後取り組まねばならないマネージメントのグローバル化について、また後段ではその際に欠かせないコーポレートガバナンスで考慮すべき点について、明解かつ分かりやすい解説をいただいた。
【講演要旨】
◆ グローバル化に向けた対応
- グローバル化は喫緊の課題。平均で約7割の企業が今後5年程度の間に組織・人材面で具体的な対応の必要性を感じている。
- グローバルにグループ経営を考える上では、単なる戦略論や組織論は通用しない。
- 現在求められている具体的対応は
①「本社力」の強化、すなわち本社の「機能」を明確にすることと、
②マネージメントに対するガバナンスの見直し、すなわち企業統治の構造論から脱却することが必要。
◆ グループ本社の役割
- 投資家的な機能、すなわち「見極める力」「連ねる力」「束ねる力」を発揮すること。
- 必要な機能で本社に欠けているものはないか、本来本社機能でないものをやっていないか等を絶えず見直すこと。
- 企業がグループ経営を行う上では、①事業の型の把握、②キャッシュフローの生成力の理解、③他社との相対比較、④事業部門のコミットメントの獲得、⑤アナリスト機能の定着化が特に必要。
◆ グローバル化時代の経営
- 企業価値重視の経営プラットフォーム構築の必要性が益々高まる。
- 具体的には世界の共通言語である企業価値を軸とした経営、経営企画部門の見直しとCFO機能の強化等。
- 上記の視点からマネージメントサイクル(PDCAサイクル)を見直し機能させることが重要。監査役の着眼点はP(PLAN)の部分。
◆ 多様性の受容(ダイバーシティ・マネージメント)
- ダイバーシティ・マネージメントは、①「個」の違いの尊重、②全構成員の能力の最大発揮、③サプライヤー多様性要件、④リーダーシップの発揮とコミュニケーションの活性化、⑤PDCAの着実な実行等より構成される。
- 多様性の受容においては、軸となる不変の価値観、言い換えれば「拠って立つ不変の共通の軸」が求められる(例えばP&Gグループの多様性の定義が参考になる)。
- グループ経営においては、企業が目指すべき要素である「企業理念」を明確化し浸透させる努力が必要(ファストリテイリングの企業理念は好事例)。
◆ M&A
- M&Aを考える場合には、CFO部門および人材の充実度が成功の鍵となる。
- 買収後の統合において最も悩ましいのは、様々な背景を異にする海外企業の管理。
- 決め手になるのは「企業統治と経営管理(特にカネの配分)」と「人的資源(ヒトの評価、報酬、育成、コミュニケーション)」。
- グループ経営の手法は、自立分権型(例:ネスレ)、中間型(例:セメックス)、中央集権型(例:GE)等様々であり、事業や企業の特性によって「個別解」は異なる。
- 顔を合わせて議論してグループのルールを作り上げていくコニュニケーションは有効。
◆ 日本のコーポレートガバナンス
- 企業統治に関する議論は様々であるが実効性ある議論が欠けている。構造論すなわち「ハコもの」議論が多い。
- 企業統治の「構造」は重要であるが、それを作るだけが企業統治ではない。不祥事が起きると「ハコ」の強化だけが議論されがち。
- 日米の企業統治構造には違いがあり、その本質を無視した議論となっていることも多い。
- 米国では取締役と執行役が分かれており、外部に十分な「人材プール」があるが、日本ではこれがなく(監査役設置会社では)取締役が執行役を兼ねており、役員の代替が効かない点も問題。
- 企業統治とは本来は経営者を孤独にしないための仕組み(経営をやり易くする仕組み)であることを理解すべき。
【むすび】
- 経営においては、投資家との関係だけでなく、様々なステークホールダーへの戦略的対応が企業の存続・発展に不可欠となってきた。
- 「良い企業」に至るための道のりは長いが、必要な要素を企業の仕組みとして理解し実行していることが不可欠である。
以上