(11/12/13 )
監査役部会第7クールの第3回研修会が、次のとおり開催されました。
金融危機はなぜ起きたのかをマクロ経済、ミクロ経済のそれぞれから考察し、金融危機後アメリカ政府・議会はアメリカのガバナンスの再構築をどう進めてきたか、またビジネス界もこの3年間どう自らのガバナンスの再構築を進めてきたか紹介されました。その上で、日米で共有できるプラットホーム(Hybrid Corporate Governance Platform)の紹介をいただき、外から見た日本のコーポレート・ガバナンスの問題点とその改革について講師のご意見を拝聴しました。
金融危機は自由市場経済の金融サイクルの一環での欠陥ではなく、金融システムの崩壊であった。天災ではなく人災であったと米国の金融機調査委員会は2011年1月に結論付けた。
マクロ経済の視点からは、@自由市場資本主義への盲目的信仰 Aグローバル化によるパラダイム・シフト B金融商品・市場のイノベーションとこれに伴うバブル
ミクロ経済の視点からは、金融機関のマネジメント・ガバナンスが機能できなかったことによる、@金融機関の企業文化の劣化 ACEO・取締役のリーダーシップの欠如 B取締役の独立性の欠如 Cリスクマネジメント・戦略のオーバーサイトの失敗 DCEO・取締役・株主間のコミュニケーションの欠如
があげられると指摘された。
課題として、マクロ経済の視点からは金融商品・市場の監督機関・ルール作りが、ミクロ経済の視点からは企業のコーポレート・ガバナンスの再構築が必要とした。
オバマ政府と議会は、金融危機の再発防止のために金融機関が市場で健全に継続性を持って機能するためのルール、及び消費者を金融機関のリスクから守るルール作りを目指して、紆余曲折を経て2010年7月に金融改革法を成立させた。これは1930年代の大恐慌以来の大きな金融改革で、@FRBの権限の強化と透明化 Aデリバティブ取引の規制 B消費者保護 C投資家保護 を目指す内容となっている。
全米取締役協会は、第1ステップとして、2008年10月に「10項目の基本原則」に従い自らのガバナンスを見直すことで、ガバナンス再構築を行う「基本に帰ろう運動」を提案した。(@取締役会のコーポレート・ガバナンスの中枢機能のとしての責任 Aコーポレート・ガバナンスの透明性 B取締役の能力の適格性と取締役会の最適構成等)
第2ステップとして特にクリティカルなテーマとして4テーマに絞って各支部で分担協議のうえ、全体として"White Papers"にまとめ全米企業、ホワイトハウスにも提案した。(リスク評価、リスク戦略、役員報酬の承認のあり方、ステークホルダーへの説明の透明性 4テーマ)
全米取締役協会南カリフォルニア支部のメンバー、USCの教授と議論し、日米の経営比較の上で、日米の経営のプラットフォームの良さを複合したベストプラクティス(Hybrid Corporate Governance Platform)を作ることとした。
日米で共有できるプラットフォームは次の5つを基本原則として取りまとめた。
@会社の価値観 A会社の文化 B会社のVision CCEOの「ダイナミック・リーダーシップ」D取締役のパワー・ガバナンス
と提案された。
最後に "Sometimes in the winds of change, we find our true direction(読み人知らず)" の言葉にあるように、今の日本はこの国の風の変わり目にあり、正しい方向を定める時期にあると締め括くられました。
以上