( 10/10/27 )


監査役部会第6クール研修会 第1回目研修会

監査役部会第6クール研修会(6年目)は、10月14日(木)からスタートした。
トツプバッターに歯切れのよい語り口で定評のあるブーズ&カンパニー(株)エグゼクテイブ・デイレクターであり、マトリックス株式会社代表取締役である松田千恵子氏(写真右)を講師に迎え、「グローバル化の波にさらされる日本企業のこれからの経営戦略〜ダイバーシティマネジメントへの対応」と題してご講演いただいた。

講演は、コンサルティング分野における最前線の組織戦略テーマを体系的に、

  1. 金融危機がもたらした変化
  2. 左脳的な企業価値を上げる
  3. 本社の役割と機能
  4. 右脳的な企業価値を考える
  5. 監査役の役割

について解説いただいた。

参加者からは
「講義の内容はとても分かりやすい。時宣を得たテーマ。右脳的な企業価値、特に経営理念の大切さを強調され、監査役としての自覚・役割の重要性を再認識した。その他、現在の日本企業の置かれている状況及び普段自社で皆が悩み議論している事柄で課題認識も共感出来る点が多く今後のためにも大変参考になった。競争優位を確保する会社戦略・事業戦略はグローバル市場で劣性を強いられる日本企業にとり最重要課題でダイバーシティマネジメントについて考える良い機会でヒントも沢山いただいた」
等の感想が多数寄せられ、第1回目から質疑も活発で非常に盛り上がつた好評な研修会であつた。

講演要旨は以下の通り。

  • 金融危機以降、企業を巡る環境変化が急速に顕在化している。
    1. スピード化―情報通信技術の進歩により情報の共有スピードが極端に速まっている
    2. 規模化―規模を巡る戦いはより厳しくなり、投資能力がなければグローバルでは戦えない
    3. 新規優良企業の増大―新興国企業の発展スピードは早く優良企業化するところも増えている
    4. リスクの増大―自国以外での規模とスピードの獲得、厳しい競争は事業リスクを増大させる
    5. 景気変動の変化−従来のような景気変動を前提にはできない
    等変化は根本的である。根本的な変化に対して従来同様の「幻想」を抱いても無意味であり、グローバル化にしても、情報通信技術の発展によるグローバル化は未知の世界であり、従来とは異なりオペレーションのグローバル化ではなくマネジメントのグローバル化が進展していることに対処しなければならない、と強調。
  • 企業価値には、左脳的な企業価値―企業の経済的な価値、投資家・ファイナンス的な定義と、右脳的な企業価値―企業の理念の両方が存在すると提唱。前者については、日本企業における成功指標が売上から企業価値へと変化したことで、投資家が企業を見る視点が企業経営自体に欠かせなくなってきた。投資家の関心は将来の投資方針、特に将来キャツシュフロー生成力が最大関心事である。本社の役割としても、その点に注目した個別事業の評価と事業ポートフォリオ構築、企業価値重視の視点からのPDCAサイクル見直し等の経営資源配分とその基盤構築が重要であると指摘。更に右脳的な側面から本質的な企業変革を目論む際には組織のハード面だけでなく企業風土などソフト面に向き合うことが必要となり、典型的な例としては企業買収後の変革などがあげられる。
    また、人的資源の重要性が増すほど対応が必要になっているのはその「多様性」の確保である。具体的には、「情報生産性」が重要であり「価値」「多様」「支援」がキーワード。さまざまな価値観を持った多様な頭脳が効果的に情報をやりとりすることで企業は成長する。多様な差別化要素は企業が生み出せる価値の源泉であり、それを担保していくためにはダイバーシティマネジメントの運用が極めて重要であると強調された。

最後に

  1. 不連続な変化のなかで、左脳的な企業価値と右脳的な企業価値の双方の向上に留意する
  2. 全社的なミッション・バリュー・ビジョン・ストラテジー・マネジメントシステム・ビジネスプロセスの整合性、及び全社的なミッション・バリューをどのようにグループ全体に浸透させているかに留意する
  3. 企業統治・リスクマネジメント・情報開示(CSR)は三位一体であり、繋がりを意識して経営をチェックする。

等を認識して監査業務に当たることが、監査役に求められる役割である。
と指摘された。

以上