第15回環境時事セミナー講演録
開催日:2012/06/05(18:00~20:00)
- 会 場:東京ウィメンズプラザ
- テーマ:「東電の国策再生と日本の電力改革への課題」
- 講 師:志村嘉一郎氏(朝日新聞経済部記者 OB)
-
今回の爆発でどれだけの放射能が出たか?
- 広島原爆の168倍(熱量:30倍、ウラン235:20倍、セシウム:168倍)
- チェルノブイリは広島の500倍、福島はチェルノブイリの1/3(東電発表は1/6)
- 人体への影響について国際放射線防護委員会は、2007年の勧告では年間1ミリシーベルトとしていたが、福島市や郡山市は18ミリシーベルトもあったので、政府は「最初の2年間は20ミリシーベルト。除染して5ミリシーベルトに下げ、長期的には1ミリシーベルトにする」とした。除染をどうするか。特に子どもの場合、15〜20年後に発症する心配あり。
- 何故原子力発電だったのか、何故福島だったのか、何故東京電力範囲外だったのか
- 米は冷戦時代は原爆、同じ技術で原発も作り日本に売り込んだ。
- 1961年木川田一隆社長(「人間尊重」「企業の社会的責任」などを訴えたまじめな人)当時、公害問題などもあり原発に踏み切る。福島は木川田の出身地。東電管内にいい地がなく、堤庚次郎の国土開発から福島第一用地を購入。
- 1971年福島第一原子力発電所1号機が稼動。同じ年、東電は田中角栄(室町産業)から柏崎刈羽原発用地取得。 この辺りから、政治家、政商と原発用地の絡みが出てくる。
- 9電力体制と地域独占の形成
- 戦前は松永安左エ門らの活躍があり、1941年:配電統制令・日本発送電に集約
- 1942年:1発送電・9配電(日本発送電・北海道、東北、関東、中部、北陸、関西、四国、九州各配電会社)
- 1951年:9電力体制発足地域独占で他の発電業者は参入できず、発電所増設と電気料金値上げは思いのまま。 総括原価方式といわれる、コストに適正利益(3〜4%)を上乗せした額を原価とし、これを回収できる料金を設定できる「権利」を与えられた。
- 原発のビジネスモデルは、償却が16年で、長く使えば利益が大きくなるし、短い償却期間で必要な償却費用は料金値上げで回収できる上、キャッシュフローは楽になるというメリットがあった。
- 原発安全神話の形成
神話の製作、神話の語り部、神話の流布、神話の完成と繋げるため東電並びに各電力会社は何をしたか。
- マスコミ、東大、地元対策に札束攻勢。年間3,000億円の広報対策費(東電) 東大の原子力に情報を集約し(後の原子力村になる)、京大には資料を与えないで干す。最後にはイデオロギーで反対しているのだろうと追い込む。
- 東電全体が広報。会長、社長の名経営者らしさや文化人神話を演出。ゴーストライター活用。
1976年平岩外四6代社長。1985年原子力発電所10基(福島9基、柏崎刈羽1基)完成。1990年平岩外四経団連会長就任
- マスコミの取り込み
- 広告。東電の広告費はテレビ、新聞などで250億円。経済誌や週刊誌は別。業界全体で900億円。
- 資本参加。H22年の有価証券報告書によれば、東京放送HD:6.5億円、TV朝日:4億円、松竹:7億7500万円(何故映画会社の株か?)
- 東電役員がTV会社の監査役に就任。フジTV&フジメディアHD。TV東京
- 他の電力会社もマスコミの役員に。東北電力:新潟放送、中部電力:中部日本放送、九州電力:RKB毎日放送
- NHK経営問題委員 NHK基本問題調査会 平岩外四NHK経営委員 東電OB女史、中部電力取締役
- 東北地方放送番組審議会 東北電常務
- 四国地方 四国電常務
- 記者取り込み 原発信奉記者団、女性評論家活用
- 反対派の排除 イデオロギーで原発反対と決め付け、原爆反対と原発反対を同列視
- 天下り 歴代副社長は通産から、2011年9月末現在51人、警察OB32人
- 政治献金 献金御三家、会社が社員の個人献金を集め国民協会、民主協会に献金 労組が民主党対策
- 東電の衰退期
- 1993年 荒木浩第8代社長就任。普通の会社にしよう「コスト削減」「兜町を向いて仕事」
- 1997年 原発17基完成
- 2000年 3月期決算で配当年60円に増配、創業以来初
- 2001年 原発13基のトラブル隠し発覚
- 2007年 中越沖地震で柏崎原発小破壊
- 2011年 東日本大震災 勝俣会長と鼓副社長マスコミOBをつれて北京に、清水社長は妻と奈良の「お水取り」見学。西沢社長「値上げは権利である」発言
- 2012年 実質国有化 下河辺和彦会長「第二の創業期」と語る。 原子力村の失敗は、太平洋戦争時の日本軍の失敗と同じで、5重6重の安全→絶対安全→研究させない→安全を信じ込む→失敗を認めない体質になっていた これからは、原発動かず、自家発増え、発送電自由化、数兆円の被害者救済金、体質を変えねば生き残れない、9電力体制の危機
- 質疑応答
Q1.実態解明はどうなっているのですか?
A1.中国の列車事故で先頭部分を穴を掘って埋めて隠したのと同じで、現場の吉田所長を病院に囲っている。彼に話を聞かないと問題の本質は分らない。
Q2.今後の電力会社のありようはどの様な形ですか?
A2.企業は自家発を増やしていくでしょう。そのためには、送電線を施設する必要がある。電源開発に送配伝網を売ればよい。5〜10兆円の価値はある。
現在1億8000万Kw位全国で発電がある。
① 電源開発で送電を自由化すれば、全国に電力を回せる。
② 9電力体制を崩す。
③ 縮原発、40年以上経過の原発は廃炉
④ 5.2Kwhの太陽光発電は200万円くらいで出来る。こうして原発を他の発電に切り替えていく。
Q3.東電の総合事業計画について
A3.
-
LNGの価格が高い:100万BTUを17〜18ドルで購入している。国際価格2ドルなのに、長期契約で石油に連動しているから高くなる。
- 人員削減:10年で10%しか削減していない。
- ボーナス:10年で3000億
- 年金:やっとOBの年金を下げる。これまで会社負担で6.5%で運用していた。
- 持ち株放出:マスコミ株を放出するか。
- 清水社長:子会社の社長へ転出。アラビア石油の株主の富士石油の社長にもなる。
- 株主代表訴訟:東電は訴訟費用を出すと言っている。訴訟を起こした人が負担するのが当然なのに おかしい。