( 08/05/30 )
環境問題研究会の第9回となる勉強会が5月16日、日本教育会館で、約40名の方々を集め開催された。今回は会員の他に外部及び千葉大学関連の方が参加された。この勉強会は、会員の斉藤さんの所属されるNPO法人「フォレスト」とディレクトフォースの連携により、千葉大学大学院園芸学研究科にご協力をいただき実現した。
勉強会は3部で構成され、第1部基調講演として千葉大学大学院園芸学研究科 小林達明教授の「環境問題への提言」。第2部は「環境問題に親しむーもう一度大学で学ぶ」で千葉大学大学院園芸学研究科 渡辺均 准教授から同大学院でのシニア参画型の講座の紹介、そして企業を卒業され、現在同大学院で学ばれる、NPOフォレストの副理事長 宮下佳廣(出光興産OB)さんから体験談の紹介、そして第3部では宮下さんからNPOフォレストとディレクトフォースの連携への提言が行われた。
また、千葉大学大学院園芸科庭園デザイン専攻の田中笹子さんから、目の見えない子供たちに環境の大切さを教えるボランティア活動の紹介もされた。宮下さんと同じ千葉大で学ばれるシニア大学院生の岡直子さん、シニア大学生の斉藤定夫さん(出光興産OB)、これからシニア大学生を目指す木佐美廣さん(都庁OB)も紹介され、今までの人生をリセットし、新たな挑戦をする「学ぶシニア」達の若さと情熱の現状を垣間みることができた。
勉強会終了後、千葉大学、NPOフォレスト及びディレクトフォースの有志で交流会が開かれ、環境論、大学の在り方、人生論など熱い議論がなされた。
以下、勉強会の概要です。
小林教授のプロフィール
景観生態学、緑化学が専門。「中国ムウス砂地の緑化植物の生態と水分生理」で京都大学の農学博士の学位を取得。現在千葉大学大学院の園芸学研究科の教授をする傍ら景観生態工学国際学会連合(ICLEE)事務局長として緑化や自然再生に関するアジアの研究交流に尽力、また、政府外来生物対策分類群専門家グループ会合(植物)委員として生物多様性政策に関わる。
植生を阻む世界の砂漠化が刻々と進行している。
砂漠化、日本には馴染みのない問題であるが、世界的にみると地球の陸地の1/4がすでに砂漠化し、年々、日本の九州、四国を合せた規模の面積で広がり、約9億人が影響を受けているといわれている。
中国の内モンゴル自治区でも砂漠化は深刻である。数十年前まで豊かな草原だった地域が、人口増加にともなう過開墾・過放牧により、砂の大地に変わっている。家や畑が砂に埋もれ移住を余儀なくされるなど、住民の生活が脅かされている。
砂漠化とは植生に覆われた土地が植物の生育や農業に適さない不毛な土地になっていく現象をいう。
今日問題となっている「砂漠化の多くは人類の活動が原因となる人為的な行為によって引き起こされたもの」である。砂漠化のプロセスは砂漠化が進行している地域によってそれぞれ異なるが、主なものとして土壌流出、塩性化、飛砂がある。
中国では、国土の3割弱がすでに砂漠化し、毎年ほぼ日本の神奈川県の広さが新たに砂漠化しているといわれている。国土の北西に行くほど降水量は少なく、砂漠や沙地が広がっている。気候的には草原が広がるはずの地域・内モンゴルで、1960年頃から砂漠化が急速に進んでいる。その結果、内モンゴル自治区の使用可能な草原の面積は半減した。この背景には、1949年の新中国成立後に定着型の農耕・牧畜が進められたことと、漢民族の移住による爆発的な人口増加があったこと。こうした生活形態の変化や人口増加は、過剰な土地利用を生み出し、さらに自然・気候条件が追い討ちをかける。中国北方にはかつて海や湖があったことから、草原の下には砂が堆積している。そのため植生が破壊し表土が剥がれると、砂の層が表出。土地は保水力を失い乾燥し、この地域特有の強風が砂を飛ばす。障害物にあたってできた砂丘も流動しながら、次第に砂ばかりの大地に変貌していく――これがこの地域の砂漠化のしくみである。
このように、土地の再生能力を超えた過剰な開墾・放牧を主原因に、気候的な影響が砂漠化に拍車をかけるかたちで砂漠化が進む。中国では牧畜地域の開墾が長い間、禁止されていたが、清の時代になり許可され、その結果土地の再生能力を超えた開墾・放牧が行われ、その結果遊耕が増え、砂漠化が進行した。
とくに植生破壊となる山羊放牧、そして金になるカシミヤ山羊の放牧は植生を阻み、砂漠化をもたらしたとのこと。数年前から過剰な放牧は沈静化したものの自然に与えた影響は大きい。
渡辺均准教授プロフィール経 歴:サントリー勤務を経て、千葉大学で農学博士取得
専 門:花卉(かき)園芸学、植物育種学。観賞植物の育種に関する研究
屋上緑化および壁面緑化に関する研究、花卉苗の生産技術に関する研究
特に、ペチュニアと近縁属の遺伝資源解析では日本の第一人者
また、環境健康フィールド科学センターで高度化セル成型苗生産利用システムの開発推進、成果物の事業を推進している。
宮下佳廣氏のプロフィール
経 歴:元出光興産役員、森林インストラクター資格取得後、千葉大学園芸学部園芸別科(造園・樹木専攻)入学、現在千葉大学大学院園芸学研究科緑地環境学専攻。
傍ら、NPO法人「フォレスト」設立し副理事長、全国森林インストラクター協会理事として活躍。
・渡辺准教授:千葉大学では社会人の再チャレンジ支援制度として、学費免除の仕組みを開設した。
シニア学生が増えてきている。それはシニアのこれからのQOLを高めるチャレンジの一つとして「大学で学ぶ」が脚光を浴びている。
・宮下氏:社会人大学院生の体験としては、今人生の忘れものを取りに戻ってきたつもりで、「今更は禁句」(今更、勉強とか、若い人たちに頭を下げられるか、というようなエキュスキューズを使わない)生き方がQOLの向上につながっている。また、若い人の気持ちもわかるようになった事、人生の先輩として彼らから相談を受けるなど日々新しい情報や刺激でワクワクし、若返りの恩恵に浴している。
宮下氏の話
・NPOフォレストも推奨している「森林インストラクター」という準公的資格がある。これは森林を利用する一般の人に森林の案内や野外活動の指導が行える資格である。DFの会員の方もこれからのシニアライフの選択肢の一つとして資格取得にチャレンジされたら如何!試験は一次、二次試験あり、9月7日が一次試験とのこと。(事前講習もあり)
・NPOフォレストでは「セイブキッズ」という世界的な環境教育を指導する活動に関与している。試みに練馬区で保育園児と一緒にドングリを拾い、ポットに植え、それを成長時に植樹する活動を企画している。DFの会員の方の参加歓迎!
以上