5月28日(水)川崎メガソーラー発電所(川崎市・東京電力)と川崎クリーン火力発電所(丸紅)の見学会を実施した。初夏の好天に恵まれ、総勢11名が参加。朝9時川崎駅へ集合し、まず浮島メガソーラー発電所*へ向けて出発(バスにて約45分)。
1.川崎メガソーラー発電所(川崎区浮島)
- 当発電所は、羽田空港の近辺で、川崎市が約11ヘクタールの土地を家庭ごみや汚泥などで埋め立て、東京電力に無償貸与にて(18年間)建設し、平成23年(2011年)8月稼働開始した。モジュールはシャープ製、使用枚数は約38,000枚、最大出力は7,000kw、年間電力量は約740万kwh:一般家庭約2,100軒分を賄う能力を持つとのこと。
- 当日の発電量は午前早く、まだデータ集計されていなかったが、前日(曇天)は、30,600kwh:一般家庭約3,250軒分、発電したとのこと。
年間稼働率は平均20%未満で、やや低い印象だが自然頼りのため止む無しか。
- 建物の屋上から見たモジュールを敷き詰めた光景は壮観であり、近くを飛行機がひっきりなしに飛んでおり見とれてしまう。建物から出てパネルを近くで見学。約10度の斜面に小さく、薄いモジュールが1パネルに約50枚敷き詰められて発電の源を目前、間近で見学させてもらった。
ビル屋上からのメガソーラーの前で
ビル屋上からのメガソーラーの前で |
メガソーラーの上を飛行機
メガソーラーの上を飛行機 |
前日のソーラー発電量が掲示
前日のソーラー発電量が掲示 |
- 海に近いが、鳥の糞や風による雑物の被害は少なく、少々は「雨」が流してくれ、その都度、人間の手でメンテナンスは必要なくコストはかからないとのこと。
以前、見学した風力発電に比べてメンテナンスコストがゼロに近いとは!!
- メガソーラー発電所は建設コスト、稼働率、償却など企業ベースにて採算取れるかどうかの質問に明確な回答は無かった。現在、「再生エネルギー(太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス)」により発電された電力には固定価格買取制度が設定され、20年間一定金額で電力会社は買い取り義務がある。特に太陽光は現在32円/1kwで高額である。ただし、その分は国民が標準家庭で約100円負担せねばならない現実もある。
*メガソーラーとは出力1000kw(1メガw)以上の大規模太陽光発電をいう。
原子力発電が停止され、再生エネルギーへ転換すべきと云う議論の中、全エネルギー供給のうち、太陽光発電は普及速度早いが、まだシェア1%程度。我が国では、大量のパネルを敷き詰める広大な用地は求められない。建設費等採算性から見るとまだまだ課題は多い。
(2014.5.28 野村俊彦記)
埋立地のため周辺に食事処が無く、一旦川崎駅まで戻り、駅ビルで昼食を摂った後、再びバスで、川崎臨海部にもどり川崎クリーンパワー発電所を見学した。
川崎臨海部には、東扇島火力(200万kw)、川崎火力(150万kw)を始め天然ガス、太陽光、バイオマス、風力など各種の発電施設が多数稼働しており、その総出力は約580万kwと1都3県の一般家庭の消費電力約630万kwの9割に相当する。
2.川崎クリーンパワー発電所(川崎区水江町)
- 電力システム改革によって2000年から漸次自由化が進んでおり、現在は高圧受電(6,000V以上)で契約電力が50kw以上ならば既存の電力会社(大手九電力など)以外の特定規模電気事業者(新電力:PPS*)と電力供給契約を結ぶことが出来る。
更に今年の6月に改正電気事業法が成立し、2016年には一般家庭向けを含めた電力小売りを完全自由化することが決まった。
- 丸紅は2002年から電力小売り事業を開始し、自社電源の拡充や他社電源の確保を進めてきたがその一環で2003年に稼働開始した当発電所(1、2号機)を日立造船から買取り3、4号機を増設。2008年4月川崎クリーンパワー発電所として稼働開始。
- 燃料は環境にやさしい都市ガスを使用したフィンランドのバルチラ社製ガスエンジン4基で出力約3万kw、機器冷却水は空冷式(ラジエーターの採用)で循環使用しているため水消費量はゼロ。
- ガスエンジンなので起動・停止が容易で電力需要に応じた発電の追従性が良く、丸紅の本部からの指令に基づき発電量を制御している。稼働時間は7時から22時までの15時間で夜間は停止している。
- 電力の主な販売先は宮内庁、経産省、川崎港海底トンネル、足立区小学校、川崎競輪場、国会図書館、その他オフィスビル、ゴルフ場などへ東電の送電線網を借りて託送している。(丸紅のパンフレットより)
- ガスエンジンは防音を施した建屋内に設置されているので、屋外では気にならないが、扉を開けて中に入るとその騒音の大きさに驚く。説明員の声は全く聞こえない。
*PPSはPower Producer and Supplierの略
クリーンパワー火力発電所の前で
クリーンパワー火力発電所の前で |
発電システムに目新しいものは無かったが、大手商社である丸紅が自ら発電所を所有し電力小売り事業の拡大を目指していることに驚きを覚えた。またこの川崎臨海部は首都圏のエネルギー供給拠点として大きな役割を担っていることを知った。
この施設の見学には丸紅株式会社・国内電力プロジェクト部の安日太郎様に大変お世話になり、この見学記において感謝の意を表したい。
見学が終わって川崎駅前に戻り、野村リーダーご推奨の居酒屋で美味しいお酒と料理で、約12時間にわたった発電所見学会の疲れを癒し解散した。
(2014.5.28 大谷浩一記)