(11/12/2013 )
先ず自己紹介をさせていただく。自分は岩手県花巻の農家の次男坊で、父親は県の農政畑一筋でコメの品種改良、技術開発に一生をかけた人です。我が家は4町歩の田畑を持っており第二種兼業農家としては大きい方です。兄は岩手県庁に勤めましたが、自分は東京の大学を出たのち国家公務員試験に合格して農水省に入省し、その後日経新聞に転職しました。
10数年前政治部に所属していた時に安倍晋三氏(当時内閣官房副長官)の番記者をしていた関係で今でも取材などでお会いしたり話したりする機会があるが、先の参議院議員選挙を乗り切り、10月1日に消費税率のアップを正式決定すると見られている。それに関連して法人税減税が取り沙汰されているが安倍総理がそれに拘っているのはアベノミックスの指標となっている株価を支えているのは、証券取引高の7割を占める外国人機関投資家の投資動向である。この外国人投資家が求める分かりやすい政策が法人税減税であり次がTPPである。TPPに日本が参加するには農業改革は避けられない。
産業競争力会議(成長戦略を立案する)や規制改革会議で農業のあり方、農協の在り方、農家の戸別補償制度の見直しと言ったことが改革の俎上にあげられ議論されることになっている。
日本の農業の現状は一言でいうと「生産額が減って高齢化が進んで儲からない」というイメージが定着している。
輸出市場の伸びはここ数年伸びが止まっている
「主業農家」だけが農家ではない。農家という概念ほど多様なものは無い。
戦後農政の主な出来事年表で
<オランダの競争力の背景>
質問1: 日本の農業の衰退の原因の一つに農地に対する税金、即ち耕作放棄地も生産農地と同じように固定資産税が殆どゼロに近い優遇を受けているためいつまでも所有していられるということがあると思う。
質問2: 広島県と新潟県では農民の土地に対する意識が大きく異なるが、意識改革はどのようにしたらよいか。
安藤講師:農地の税制については問題になっている。安い相続税、固定資産税特に耕作放棄地でもほとんど税金はかからない。転用期待(いつか道路などの公共事業で買い上げてくれるのを待つ)も最近は公共事業が減少しているので減ってきているが、土地の保有経費が極めて安いので土地の流動化がなかなか進まない。従って税制等の見直しが必要だということは認めている。しかし相続税や固定資産税を見直すには税制の抜本改革が必要になる。財務省は2015年に消費税が10%になるがそのあと2020年に更に消費税を上げるという議論をしたいと思っており、この時に税制の抜本改革(所得税、消費税、固定資産税等々の改革)をしようと思っているので今すぐに土地税制の改革を議論することは無いと思う。
土地の集約化に向けて都道府県に農地中間管理機構を設けようとしているが、これは耕作放棄地や農地を貸したいと思っている人から土地を国の予算で借り上げて、担い手に貸し出すことを計画している。しかし問題点は ① どうしようもないような土地を機構が借り上げて整備しても貸出先が見つかるか? ② 農業委員会(農協幹部や地元の有力者などが委員)の問題がある。即ち農業委員会が農地法3条で定められた田畑の売買や賃貸を審査する権限を持っており農地中間管理機構もその影響を受けるので期待したような成果を出せないのではないか。
質問3:
特区をつくっても既得権者との軋轢があって期待した成果があげられないという例が多い。
制度改革をする場合は既得権者の利益を明らかにして皆が認識したうえでそれを打破して改革案を推進する必要があると思うが如何?
安藤講師:我々マスコミがその役割を果たさなければならないと思うが、自民党農水族議員が法案を決める際に大きな力を発揮する。その議員を選んだのは我々国民であり、前の民主党政権を選択したのも我々国民である。従って既得権益層を打破しようとするならば我々国民(マスコミも含めて)の投票行動が問われてくる。
現在競争力会議や規制改革会議でこのような問題について議論をしているが、これに最も影響を及ぼすのは世論である。菅官房長官が農業の問題に切り込みたいと頑張っているが、秋田出身で農村問題については熟知している。一方、彼は横浜選出の都市部の議員で選挙にも強いのでこの難しい問題にも手をつけられるとも言える。先日の参院選挙で31の小選挙区で自民党が勝利したので地域の民意は無視できない。即ち地元の意見を代表する議員の意見は当然それなりの重みをもつということ。
質問4:全国で農協の職員数は? 安藤講師:2010年度で約22万人、農協の数は2013年3月末で738農協まで減ってきた。
質問5:植物工場の話題が多くなってきたが、これら新しい形態の農業の採算性、将来性について 。
安藤講師:利益率の高い農業は野菜・果物で雇用も創出する。オランダの例のように輸入大国は輸出大国でもある。以前牛肉、オレンジの自由化で日本の牛肉は壊滅すると言われたが確かに一部の酪農家は止めたが安い牛肉が輸入されたので庶民でも手が届くようになり牛肉の購買層が大幅に拡大した。そして差別化した国内産のマーケットが出来上がった。
アスパラガスは当初海外からの輸入品だったが、国内で消費が伸び年間供給の需要が出来たので国内農家が生産するようになった。
野菜・果実は経営効率が高い、可能性も高い。国内マーケットを拡大する上で輸入を拡大することによって様々な可能性があり、輸出の可能性を追求することによって国内マーケットだけでなく海外のマーケット特に非関税障壁を取り除けば中国は最大のマーケットなのでTPPや経済連携協定を進めてルール作りを行うことが後押しになると考える 。
以上