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( 2015年3月2日 掲載)

DFガバナンス部会第10クール    第5回研修会

刻々と変化する「企業関連法制」、「会計制度」の概要とその状況下での監査役の対応について研修した。

  • 開催日時:平成27年2月17日(木)午後3時〜5時
  • 場  所:学士会館203号室
  • テーマ:「最新の監査役の実務課題(その6)」
    ーーコ-ポレ-トガバナンスから国際会計基準までーー
  • 講  師:杉田 純 氏(公認会計士・三優監査法人統括代表社員)

【要 旨】

講師

Ⅰ.激変する世界経済と試練の日本経済

  1. 世界経済の牽引役は米国、一方中国経済の減速・新興諸国の経済停滞・ギリシャなど懸念あり。
  2. 第4次産業革命(IoTを駆使した高度技術戦略)により社会改革の実現を目指す時代に突入。
  3. アベノミクス第3の矢の修正。特に女性の活躍とグローバル人材の活用は不可避。
  4. 監査役もこうした変化の流れを念頭において実務にあたる必要がある。

Ⅱ.コ-ポレ-ト・ガバナンスに係わる新たな動き

  1. 企業関連のコンプライアンス違反のトピックス
    1)食品関連の不祥事 2)ブラック企業 3)研究(費)不正 4)犯罪収益移転防止 5)内部通報制度 6)特定秘密保護法 7)高額報酬
  2. 2014年の不適切会計事案(上場15社)及び防止提案
  • 事案の大半が、子会社・関係会社関連。特に海外子会社は目が届きにくく要注意。
  • 監査法人は反面調査ができないなど精査・往査には限界があり、監査役も同様。規程とマニュアルによるフォーマルな監査とこれはおかしいという感性による切り込みが必要。
  • 日本監査役協会の報告書(H.26年7月24日)である「取締役の職務の執行の監査-取締役会に関する監査役監査と不祥事発生後の監査対応を中心に」は監査役実務のバイブルのようなもの。是非活用して欲しい。
<監査役の職務>
  • 取締役会構成員としての取締役また業務執行を担う取締役の職務執行の監査
  • 職務の範囲は広く、職務遂行にあたっては取締役会資料のみをベースにしてはいけない。積極的に現場で稟議書の運用状況などのチェックが必要。
  • 内部統制に係わる同業社と同等以上のレベルの規程(がなければ導入と整備を勧告)に則って取締役の職務が遂行されているかの監査を行なう。
  • 経営の意思決定の監査は、取締役会等の会議の場でも以外の場でも難しい領域。
  1. コ-ポレ-トガバナンス強化の新たな動き
  1. 会社法改正
    平成26年6月26日成立、平成27年5月1日施行予定。
    主な企業統治関連事項は以下の通り 。

① 監査等委員会設置会社の創設

② 社外役員の要件の見直し(東証が別途独立役員の要件を設定している)

③ 社外取締役を置いていない理由の開示(監査役設置会社+公開会社+会社法の大会社)

④ 会計監査人の選任等に関する議案内容の決定 ⑤ 多重代表訴訟制度の創設

  1. スチュワードシップ・コード(機関投資家と会社との関係)
    ① 機関投資家が、他の株主の権利を害しないことを前提に会社に提言するなどの取り決め。
    ② 平成26年2月26日金融庁が7つの原則を承認し公表した。
  2. コ-ポレ-トガバナンス・コ-ド

① 平成26年12月、わが国のコ-ポレ-トガバナンスの充実と強化を目的とし、株主保護と企業価値の向上などをテーマとした原案(コ-ポレ-トガバナンス・コ-ド原案〜会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために〜)が金融庁と東証により開示された。

② 基本原則は、以下の通り。
A.株主の権利・平等性の確保 B.株主以外のステ-クホルダ-との適切な協働 C.適切な情報開示と透明性の確保 D.取締役会等の責務 E.株主との対話など世界的に通用するレベルとなっている。

③ パブリックコメント(註‥‥DFとしても提出済み)も参考とし、東証が必要な法整備を行なった上で平成27年6月1日から適用予定

④ 本コードは原則わが国の証券取引所に上場する会社を適用対象とするが、東証一部、二部上場企業以外の企業については一定の配慮が必要としている。

  1. スチュワ-ドシップ・コ-ドやコ-ポレ-トガバナンス・コ-ド策定の背景となった経済産業省「伊藤レポ-ト」の問題意識(平成26年9月6日)

① 企業への提言
・イノベーションの創出と高収益の実現-企業と株主の「協創(強調)」による持続的な企業価値向上の勧め=コ-ポレ-トガバナンス・コ-ド・日本型ROE

② 投資家への提言
・機関投資家はパッシブ投資からアクティブ投資への転換(深い分析に基づく投資)。個人投資家は長期的な応援株主としての育成=スチュワ-ドシップ・コ-ド

③ 持続的成長に向けた企業と投資家の「対話」のあり方への提言
・対話促進に向けた株主総会や企業情報開示のあり方の検討

Ⅲ.IFRS(国際会計基準)の状況

  1. 欧州諸国は、日本が完全適用国になれば世界で約65%の上場企業がIFRS適用会社となることから早期の適用を待っている状況。(現在55社の日本企業が任意適用会社)。
  2. 課題は「日本版国際会計基準」とのギャップ解消。例えばのれん償却期間。日本は最長20年の償却に対しIFRSは一括償却。リース会計上の課題もある。
  3. このほかIFRS本国の新収益認識基準として、これまでオフバランスであった「注文獲得状況と履行義務の契約段階でのオンバランス化(IFRS15号)」の適用が来年1月1日より決まっており、日本としての対応が課題。(米国はFASBで同様の認識基準とした)。
  4. 上記のれんなどの問題と合わせ意見調整していくことになる。

以上