DFガバナンス部会第10クール 第3回研修会
企業ガバナンス部会第3回研修会は、内部監査の本質と内部統制の構築、社外役員との関係等について、実践的な取り組みを踏まえて、内部監査のエキスパートである毛利直広氏にご講演いただいた。
- 開催日時:平成26年12月22日(金)午後2時〜4時
- 場 所:学士会館203号室
- テ ー マ:「内部監査の使命および本質と、欧米企業における内部監査の実践」
- 講 師:毛利直広氏(メットライフ生命保険執行役常務チーフオーディター監査本部長)
【要 旨】
1.内部監査の本質的要素
- 内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的とし、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である。
- 内部監査(PDCAのCheck)の使命は、内部統制構築の有無の確認とそれが有効に機能しているかを確認することである。チェックに当っては、リスクの高い所から視る。自分が経営者だと思い、被監査部門の活動が戦略に合っているか、リスクに見合う内部統制があるか、それが有効かといった視点で監査する。
- オペレーショナルリスクの適切性や事務事故・不祥事故の適切性・適時性の検証、内在するリスクの存在を十分認識し、リスクを組織の経営目標に沿った形で適切に軽減する体制が構築されているかを評価する。
- 内部統制が機能しないと、レピュテーションリスク(看板に傷がつく→倒産)・コンプライアンスリスク(法令違反、反社)・プロダクトライアビリティ(製造物責任)に晒される。
2.経営目標の効果的な達成に役立つ監査(内部統制の向上)
- 経営目標の効果的な達成には、効率的な業務遂行と資源配分が不可欠であり、組織内の規則やルールが法規に則り(準拠性)かつ実用的でなければならない。ルールは神聖ではなく過去の使えないルールは改廃する。
- 監査は準拠性だけでなく、組織内のルールの実用性や有効性も含めて行わなければならない。
- その前提として、内部監査人は戦略・戦術ならびに監査対象業務を十分理解し、資源配分・雇用状況をチェック、業種の違いによる統制のあり方も考慮する必要がある。
3.公正かつ独立の立場
- 経営判断に内部監査は立ち入らない、被監査部門に対し口は出すが手は出さない、という立場で客観性を確保する。問題点とその解決策は提示するが、解決策の選択は相手に任せる。
- 内部監査は監査以外の業務を担当しないことにより、経営陣を含むすべての部署に対して公正かつ独立した意見を述べることが出来る。
4.経営諸活動の遂行状況を評価
- 組織内で監査対象とならない所は無く、正に「聖域なき監査」である。
- 内部統制上の問題の根本的な原因を突き詰めて解決することが大切であり、監査実施時は、自分の「心象(猜疑心・職業的批判の目・このモデルなら儲かる等)」を持っておく。
- 「問題解決は現場にある」が、被監査部門の業務運営を観察するばかりでなく定期的に開催される重要な会議に参加し、議事進行や参加状況の評価とともに内部統制に関して定期的に報告する。違法行為や利益相反行為等については、首を覚悟で意見を述べ、議事録にしっかり残す。
5.三つの防衛線(内部統制構築上の重要な要素)
- 営業や業務の現場等で行われるコントロール。顧客にきちんとリスクを説明、苦情が無く利益を確保できる。
- リスク管理・コンプライアンス部門等がⅰを牽制するコントロール。営業や現場と苦情処理に対応する。
- 内部監査。ゴールキーパーとしての役割であり、ゴールされると会社に不都合が起きる。
ⅱが最も重要であり、それぞれが牽制と相互扶助によりⅰの第1線をフォローする。
6.社外監査役・社外取締役と内部監査
- 監査役は法令上内部監査をすることとされており、アドバイザリーとしての役割を期待されている。
- 会社の上層部の脱法行為を止めるのは監査役と社外取締役であり、内部統制の理解と内部監査部門や監査法人との連携が必要である。経営判断は監査役監査の領域であり、近時金融庁は、経営監査という言葉を使い、監査役は内部監査と連携してもっとしっかり経営陣を取り締まるよう発言している。
- 監査役監査も内部監査と同様に「聖域なき監査」が可能であり、首を覚悟で意見を述べる必要がある。
- 経営目標や戦略を理解し、リスクが何かを知り、知識吸収のため不断の努力を続ける必要がある。
出席者の感想
- 「実務レベルの話で参考になった」
- 「内部監査の役割等主要な点を理解できた」
- 「テーマがタイムリーであった」
等大変好評であった。講師の長年の監査業務経験を背景にした実践的な話に高い評価が多かった。
以上