DFガバナンス部会第10クール 第2回研修会
企業ガバナンス部会第2回研修会は、会社法改正に伴う社外役員の在り方に関し、社外取締役に焦点を当て、早稲田大学商学学術院の宮島英昭教授(写真)をお招きし、実証的研究からの講演をいただいた。
- 開催日時:平成26年11月7日(金)午後3時〜5時
- 場 所:学士会館203号室
- テ ー マ:「社外取締役の企業業績への効果について:コーポレートガバナンスと業績との実証研究」
- 講 師:宮島英昭氏(早稲田大学商学学術院教授)
【要 旨】
「日本企業の統治構造の特徴」
- 日本の売上高上位500社における上場企業は70%(最近でも持ち株会社の増加により60%弱)を占め、英国(27.8%)独・仏(14%)伊(10%以下)と比較して極めて多い。これは我が国では上場のメリットが大きいことを示している。
- 最近の米国・英国では上場企業が大幅に減少、上場企業のたそがれと言われている。
- その主な理由は、① 2002のエンロン事件以降、内部統制が強化され、それが大きなコスト負担となっていること、② 機関投資家が圧倒的な力を持っており、MBOで非公開企業になるケースが多いことなどによる。
- 近年の日本企業においてはアウトサイダー(外国人、個人、投資信託、年金信託)の株式保有率(時価総額の加重平均値)が急増(60%)。しかし、米(78%)英(90%)よりは低い水準にある。
「企業統治改革の視点」
- 英米は、機関投資家の株式保有比率が高く、上場企業が減少。
- 大陸欧州は、ファミリー企業中心の所有で、上場企業は限られていることにより、創業家と株主の間での利益相反が問題となっている。
- 我が国は、外部株主の支配力が弱く、保守的経営=リスクをとらない経営、財務政策が蔓延している。
- 長期保有・従業員のコミットメントといった日本企業の利点を維持しつつ、特に外部株主の利益をより強く反映させるような制度設計が課題である。
「内部ガバナンス(取締役会)改革」ーー 会社法改正・日本版コーポレートガバナンスコード
- 日本は適法性監査主体で、妥当性監査は機能してこなかった。
- 米の取締役会は "モニタリングボード" 機能が強いが、日本は "マネジメントボード" の色彩が強い。
- 米は、経営と監督の機能が分離している。
- 日本は、労働インセンティブを "職位の供給" という形で実現してきた。すなわち、早い昇進 → 到達点は取締役 → その中から社長ポストを獲得。
- 2002年の商法改正(委員会設置会社の選択)で、取締役と経営執行役の分離という米国型経営が導入された。
- しかし、導入企業は極めて少なく、スキャンダルがらみでの導入企業も見られた。
- 役員報酬では、米は高い報酬、高い業績利益感応度に対して、日本は低い報酬、低い業績利益感応度。
- しかし、社外取締役の報酬は米国でも少ない。むしろ名誉職として無報酬もある。
「社外取締役導入の実態」
- 上場企業における社外取締役は、2004年には30.2%であったが、2013年には62.2%と倍増している。
- 国際的には米(70%)英(40%)韓(30%以上)である。
- 社外取締役をパフォーマンスの観点からみると
- 社外取締役が多いと、パフォーマンスが上がるという証拠はない。
- 外部からの情報獲得コストが低い企業では、社外取締役はパフォーマンス効果がある。
- 機関投資家が多い企業では、社外取締役はパフォーマンスに負の効果をもたらす。
「会社法改正後の課題」
- (社外取締役の導入実績について)2013年6月時点では、時価総額上位200社で社外ゼロは24社。
- 2014年度は17社が1名以上導入し、残りは7社。
- 取締役会の機能をモニタリングボードとするかマネジメントボードとするかは今後の課題。ただし、すべての企業をモニタリングボードとするのは非現実的。
- 中規模企業、新興企業では未導入企業が目立つ。
参加者感想
「社外取締役の会社業績への評価・効果について良く理解できた」「社外取締役の導入を分析的に説明されていて大変興味深かった」「社外取締役の導入に係わる効果の実証分析が面白かった。」など、時宜にあったテーマとの評価が高かった。
以上