2012/06/15(No127)
古屋 昭彦
その1で、日本人同様、ベトナム人は米国が好きであるという事を私の結論としましたが、この関連で、ベトナム人は日本人と共通点が多い事を説明します。外見もそうですが、同じ起源を持つ民族と思えるぐらい色々な意味で、よく似た人々です。93年当時、最貧国の様相をしていたこの国が、日本の援助と投資のお蔭もあって、今やBRICsに次ぐ、NEXT11*の中に数えられる国へと成長した事はうれしい驚きですが、元々勤勉さには定評がありました。
21世紀は、箸文化の国が発展するという説を唱えたアメリカの学者がいましたが、その国は、中国、韓国、ベトナム、日本です。ただし、中国も韓国も箸と共にスプーンを使いますから、主食を箸だけで食べるのは日本とベトナムです。農業国で米が主食というベトナムの田園風景が日本のそれと似ています。
日本もベトナムも大乗仏教の国です。あわせて儒教も入っています。何宗かという事に拘わらず、お寺で手を合わせて願い事をし、おみくじを引き、その後は屋台の並ぶお祭りへと出かけます。屋台からは日本と同じイカや子魚を焼くにおいがただよってきます。盆踊りの様な音楽も聞こえてきます。
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ハノイの女性たち |
日本に昔あったお歯黒の習慣がベトナムにもありました。ただし、ベトナムの場合は中国人と識別するために男女を問わず歯を黒くしたという事です。
ハノイの中心部には、市民が集うホアン・キエム湖があり、そこには大きな亀が祭られています。その由来は亀にもらった剣で敵を追い払ったという伝説で、その剣を亀に返した事から還剣湖とも言われています。なにやら浦島太郎伝説を思い浮かべますが、浦島伝説の乙姫様と黒髪を長く伸ばしたベトナム女性のアオザイ姿のイメージが重なってきませんか?!
ベトナムと日本の共通点を数々挙げてきましたが、諺や表現にも類似のものが多く、私が95年にハノイを発つ日の心境を表す次の言葉で終わりとします。
トイ・デイー・ロン・コン・デー・ライ〈人は去るが、心は残る〉は、日本語の〈後ろ髪を引かれる〉に相当します。 ■
ふるやあきひこ ディレクトフォース会員
元外務省(国際社会協力部審議官、OECD日本政府代表部公使、在ゼネガル大使館特命全権大使、
国際協力銀行理事、在南アフリカ大使館特命全権大使、外務省特命全権大使)
*NEXT11:米国のゴールドマン・サックスが、2003年にBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を発表。その数年後この4カ国に次ぐ成長の見込みある国として11カ国をあげたもので、韓国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、トルコ、エジプト、メキシコなど11カ国。