
( 11/07/23 )
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7月の勉強会は、7月15日に学士会館で会員100人余りが参加して開催されました。今回の講師は、成田国際空港株式会社代表取締役社長森中小三郎氏にお願いし、「進化する成田空港〜国難を乗り越え、アジア時代の幕開けに向けて〜」というテーマで講演していただきました。
東日本大震災と福島原発事故の影響克服、アジアの目覚しい経済成長と航空需要の高まりへの取り組み、アジア巨大空港間の激しい競争とLCC(格安航空会社)への対応、オープンスカイ時代到来への備えなど成田空港が直面する課題について多角的な観点から説明がありました。そして成田空港が競争力を備えた空港へと進化するため、現在取り組んでいる空港容量拡大をはじめとするハード面およびソフト面の経営施策についてお話いただきました。成田空港と航空業界を体系的に知る貴重な勉強会となりました。詳細は次のとおりです。
3月11日の東日本大震災では、成田空港は震度5強を観測。地震発生直後に緊急対策本部を設置。幸い滑走路、誘導路などの基本施設には被害がなく、地震発生直後は航空機の運行を停止したが、出発便について同日19時以降に順次運行を再開。翌日からは概ね通常ダイヤで運行。航空機燃料は十分備蓄が確保され、航空機の運行に支障は出なかった。旅客ターミナルビルの被害も軽微で、負傷者もいなかった。ただ、地震発生後、空港アクセスに必要な鉄道、バスが運休し、当日夜は約8,500人が空港内で一夜を過ごした。これらお客様には毛布、水、軽食等支援し十分なケアを行った。鉄道、バス会社にはお客様の足の確保を要請し、翌日以降通常ダイヤに近い状態まで回復した。
福島原発事故の影響として外国人出国者が激増し、他方入国者は激減。一部航空会社の運行変更があった。NAA(成田国際空港株式会社)では成田空港における放射線の影響を懸念する声への対応として、空港内に放射線測定器を独自に設置し、測定した値と自治体公開測定値をホームページに掲載して正しい情報を周知させてきた。
日本政府が出した福島原発半径20km内の避難措置に対して、3月16日にはアメリカ政府が、日本滞在の自国民に対して半径80km以内は避難勧告を出し、同様に英、仏、独等も帰国又は西日本に移動する避難勧告を出したというメディア報道により、諸外国の日本への不安感が強くなった。NAAは国土交通省など関係機関と提携して日本への渡航に支障がないことをアピールした結果、3月18日にICAO(国際民間航空機関)が5国際機関を代表して日本への渡航制限がないことを宣言した。これを受けてIATA (国際航空運送協会)、ACI(国際空港評議会)も同様の声明を発表した。
震災後のゴールデンウイークを除いた外国人入国旅客数は、3月11日から31日が前年比53%、4月1日から27日が33%、5月9日から31日が43%、6月1日から30日が51%とであり、4月の減少をピークに回復の兆しが見られる。今後は日本経済の回復、原発事故収束の見通しに伴い2011年度末には震災前ぐらいのレベルまで回復するだろう。
国際線発着回数の前年比は、旅客数の落ち込みほどではない。これは航空会社が路線便を維持してくれたこと等による。旅客数減少のピークがゴールデンウイーク前であるのに対して、国際線発着回数の落ち込みのピークはゴールデンウイーク後に来ている。航空会社が旅客数の動向を見ながら運航対応したことによるものと考えられる。ちなみにゴールデンウイーク期間中は、前年比89%。震災直後から成田空港の機能維持に全力を結集した結果、航空需要は減少したものの航空ネットワークを維持することが出来たことにより空港機能はほぼ平常に保たれている。
アジア人口は4,167百万人で世界人口6,906百万人の60,3%を占める。2005年から2050年の間にアジアで増加が見込まれる人口は13億人、北米プラス欧州に匹敵する規模の人口が増える見込み。
アジアにおける経済成長は日本を除く各国で高い成長率が予測されており、中でも中国やインドは2016年まで10%近い成長率が続くと見込まれている。
日本における1人当たり実質GDPと出入国者数の推移を見ると一定の相関関係がある。韓国や台湾の事例からみて、1人あたりGDPが3,000〜5,000ドルを超えると出国者数が顕著に伸びる。アジアの経済発展が今後航空需要を拡大すると期待される。IATAは、アジア太平洋地域では、今後2014年までに3億6千万人の航空客が増加して世界の30%を超える世界最大の航空マーケットに成長すると見込まれ、さらに急速に成長を続けると予測している。
各国の経済が発展することに伴い、各国間のEPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)が締結され、経済のグローバル化が更に進展する。これにより人、物、金、情報の動きが活発化して航空輸送が増えていくと予想される。更に2国間協定であるEPA,FTPが多国間協定のTPPに進む可能性があり、航空輸送のグローバル化が一層進むと考えられる。

ACI(国際空港評議会)がまとめた2009年のデータで、東アジアの各空港の滑走路数と長さ、国際線旅客数、国際線貨物量を比較すると、成田空港が東アジアの拠点空港として香港、シンガポール、インチョン(仁川)などと激しく競り合っているのが分かる。
成田空港と香港、インチョン空港との現状比較では、成田の最大の特長として航空ネットワークの多様性が挙げられる。成田空港のアジア路線が全体の48%に対して、香港81%、インチョン77%に及んでいる。香港、インチョンは欧米路線が成田に比べ弱く、成田は東アジア路線でやや弱いと言える。また航空会社アライアンスの面で成田がバランス良く均衡が取れているのに対して、香港はスカイチームの比率が低く、インチョンはワンワールドがほとんどない。アライアンスのバランスが取れている点から、成田空港は航空ネットワークの機能を十分に発揮すれば世界の空港に対抗できる力を備えている。羽田空港と合わせれば、首都圏空港としてのポテンシャルは、最終形として国際線年間発着枠36万回に及ぶ。
世界の大都市ではマルチエアポートによる空港運営が行われている。2009年の旅客数はロンドン130百万人、ニューヨーク101百万人、成田プラス羽田94百万人。今後、首都圏の空港容量拡大が見込まれており、将来的にはロンドン、ニューヨークと肩を並べると期待される。
米国国内線の航空輸送量は2002年から2011年にかけてほぼ横ばいであるが、2009年のリーマンショック以降LCCのシェアは確実に上昇し、2011年4月では全体の30%強を占めるに至っている。EU域内は2009年のリーマンショックによる一時的な低迷があるものの輸送量が伸びているが、LCCの成長がEU域内の航空輸送の成長を牽引しているかたちで、そのシェアは35%を超えている。
単一小型機材による短距離の高頻度運航、空港滞在時間の短縮と機材高稼働率の追求、高コストでダイヤ設定の制限を受ける混雑空港を避ける、サービスの簡素化ならびに機内サービスの有料化、Web予約と自動チェックイン、スタッフが複数業務を担当、アウトソーシングを導入するなど徹底したコスト削減により格安料金を実現し、航空マーケットを開拓していることに特徴がある。
順調にシェアを増大させ、2009年の段階で29%を占める。ただ、同時期に東アジア(日本、韓国)では4%、中国では3%と低い水準にある。シンガポールに拠点をおくエアアジアは、タイやインドネシアに拠点を展開し、タイ・エアアジアやインドネシア・エアアジアが設立されるなど、アジアにおけるLCCの波は直ぐ近くまで来ている。今後の日本の航空業界を大きく変えていく原動力として期待される。
フルサービスエアラインがLCCに参入する、短距離にとどまらず長距離路線に進出する、フルサービスエアラインと業務提携あるいはマイレージで提携するなど新しいビジネスモデルを導入しながら、LCCは急速に多様化している。ヴァージングループでは自らをLCCと呼ばず、ニューワールドエアラインと名づけグローバルなネットワーク構築を試みている。
国際民間航空条約(シカゴ条約)は領空主権の原則の下、外国への就航には相手国の許可が必要と規定しており、国際航空輸送は2国間の合意に基づき乗り入れ地点、便数、航空会社、運賃条件等を取り決めることになっている。日本は1953年に批准している。
2国間の航空輸送において、乗り入れ地点、便数、航空会社、運賃条件等まで2国間の合意で定められたものがなくなり、新規航空会社の参入、新規路線への就航、増便などが自由になり、多様な航空ニーズに対応することができ、利便性向上、新たな需要喚起が期待される。
多様なニーズに対応する航空ネットワーク構築が、航空産業生き残りの重要な戦略となる。日本においても、高成長が続くアジアのダイナミズム取り込むため、首都圏を含めた戦略的オープンスカイを国が推進している。
2010年の米国に続き、韓国、シンガポール、マレーシア、香港、ベトナムの6ケ国とオープンスカイに合意している。日韓オープンスカイ合意によって、新たに2社の韓国LCCが成田空港に乗り入れることになった。今後、東アジア、ASEAN諸国の主要国との合意をめざして、航空需要の成長、新規就航や増便の可能性、安全・保安に対する政府の監督力、訪日観光客の拡大、政治的、経済的関係の重要性などの項目について総合的、戦略的に評価することになっている。
オープンスカイ進展に伴い、成田空港では新たな成長が期待されるLCC誘致,アライアンス強化を進めるフルサービスエアライン、ビジネスジェットへの対応など多様な航空ニーズに応えるマルチファンクションエアポートをめざし、4000km未満路線の拡充、国内線ネットワークの充実も図る。
お客様に選ばれる空港であるため、利便性、快適性を追求する施策を展開
年間発着能力を現在の22万回から30万回にすることについて地元との合意が2010年10月にでき、段階的に容量を拡大させ、最速で2014年度中には30万回をめざす。そのための空港整備マスタープランを地元に提示。一方、政府は、訪日外国人の誘致を現在の1000万人から将来的には3000万人を目指すと新成長戦略で謳っている。
CIQ(税関、出入国管理、検疫)施設を備えたビジネスジェット専用施設の整備を検討することを国土交通省主催の「ビジネスジェットの推進に関する委員会」で提案し、本年6月の同委員会において、「平成23年度中のできるだけ早い時期に施設を完成させ、ビジネスジェット専用施設及び動線の供用を開始する」とされた。現在、その整備を行っている。
全ての受託手荷物を手荷物搬送設備に組み込んだ爆発物検知装置で自動検査するインラインスクリーニングシステムを導入し、スムーズなチェックインが可能となっている。
・AR(拡張現実)技術を用いた、スマートフォン向け館内ナビアプリケーションを導入
・訪日外国人への案内サービスとしてスマートフォン向け多言語音声翻訳システムを導入
大型マルチ画面による迫力の空間演出と情報提供、一部娯楽の提供など効果的な広告掲出を目的とする。
お客様からの声を聞き、分析し、施設、サービスの改善に繋げる。成田空港CS協議会を設置し、空港スタッフ全員のCS意識向上を図っている。
太陽光発電パネルの設置、LED照明の採用、生ごみのコンポスト化、燃料電池自動車実証実験に協力して「成田水素ステーション」を設置する等実施。
民営化を機に、非航空収入の増大を目指し、第一旅客ターミナルビルに「ナリタナカミセ」、第2旅客ターミナルビルに「ナリタ5番街」という免税ブランドモールを整備。
昨年7月、成田スカイアクセス線が開通し、鉄道アクセス時間が大幅に改善されたが、更なるサービス改善を図り、都心から90分以内に機内へ、到着時には、様々なサービスを一つのカウンターで手配可能とする実証実験、乗継サービス改善、自動化ゲートの普及など実施し、空港を利用されるお客様に対する利便性向上を図っている。
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講演後の懇親会での森中小三郎氏と、氏を囲み歓談する皆さん |
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