( 11/06/12 )
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6月の勉強会は6月9日学士会館で、会員約120名が参加して開催されました。
今回はDF会員でアキュフィックス研究所アジア地区担当副社長、創造的生物工学研究所常任顧問の福元守氏に講師をお願いし、『遺伝子と老化と病気―遺伝子との関係でガンは治せるか? 』というテーマでお話いただきました。
「生物の基本的情報を決定しているのは遺伝子であり、遺伝子がヒトの細胞活動や老化を支配している。体細胞は最初活発に増殖するが、分裂は50回が限度。ヒトの染色体の両端にはテロメアと呼ばれるものがあり、細胞分裂するたびに短くなっていく。一定以下の長さになると分裂が止まる。これが老化現象の要因である。
この過程でテロメアを伸ばす酵素テロメアーゼが発生すると細胞は分裂を継続する。テロメアーゼは生殖細胞とガン細胞にのみ存在する。テロメアーゼの働きを止める物質を与えればガン細胞は正常細胞と同じ分裂傾向を辿り、やがて消滅することになる。テロメアーゼ阻害剤としてマイナス水素イオンが有力とされている。
老化を遅らせ病気を予防し平均寿命を延ばすには、栄養摂取量を制限し細胞分裂を抑制すること、適度な運動により肥満を防止することがポイントである」
と解説されました。詳細は次のとおりです。
加齢とは「生物の経過時間」であり、老化とは異なる。老化は多細胞生物の特徴で、原因は細胞数の減少と細胞機能の低下にある。多細胞生物は体細胞が分化しており、それぞれの役割を分担し共通の内的環境を保っている。体細胞が有機的に協力して互いの生存に都合の良い内的環境を作っているので、全体の細胞が統一のとれた増殖や代謝をしなければ個体が成り立たない。変異が蓄積し異常繁殖する細胞があるとバランスが崩れるので、これを取り除かないと生存を維持できない。それを決めるのは遺伝子であり、この機構が老化の基本となっている。
ヒトの体細胞を培養するとはじめは活発に増殖していくが、やがては分裂を停止する。これが体細胞の老化(有限分裂性)と言われる現象で、(50-n)回の時点に達すれば増殖は止まる。
生物の平均寿命は細胞の分裂回数にほぼ相当している。
細胞の増殖期から分裂停止期にさしかかると、細胞が死なない現象が生じることがある。遺伝子が細胞の死なない酵素を作ることによるもので、ガン細胞の発生である。
生物の基本的な情報を決定しているのは遺伝子である。
細胞分裂の際には染色体も分裂する。染色体の末端にはテロメア、中央にはセントロメアという物質がある。テロメアとは、ヒトの染色体の両端にある6個の塩基配列を1単位にしてそれを2000回繰り返した構造をいう。細胞分裂するたびにテロメアは短くなり、特定の長さ以下になると、細胞分裂は止まり、細胞は死滅する。これが体細胞老化の原因になっている。
ところが、テロメアを伸ばすテロメアーゼという酵素があり、これが発生すると細胞分裂は停止しないで継続し、細胞は死ななくなる。テロメアーゼは生殖細胞とガン細胞にのみ存在する。テロメアーゼの働きを止める物質(テロメアーゼ阻害剤)を与えるとガン細胞は正常細胞と同じ分裂傾向をとり、消滅することになる。ガン細胞が1㎤(立方cm)以上に成長すると自らテロメアーゼを生成しはじめるので、ガンの早期発見と早期治療の重要性がここにある。
老化は重要臓器の機能低下であり、寿命を決定するのは生命維持に不可欠な重要臓器の機能不全による。臓器の重量減少の原因の一つは体細胞の有限分裂で、神経細胞数の減少は脳萎縮、細胞縮小による筋肉や骨の萎縮もある。これを廃用萎縮といい、運動をしなくなると現れることが知られている。
老化による人体臓器重量の減少に関して、脳や心臓は80歳代で80%程度にとどまるが、肝臓、腎臓は機能が低下してくる。胸腺(免疫)については早い段階から落ちる。機能低下が一番早い臓器の寿命によって個体寿命が決まることになる。
呼吸は多細胞生物にとって必須であるが、呼吸によって生じる活性酸素によってDNAが破壊される。多細胞生物にとっては変異や老化物質の蓄積は不可避であるが、傷つけられたすべての細胞を修復することは極めて多くのエネルギーと栄養素を必要とし、修復には限界がある。分子警察官とよばれる
P53が老化遺伝子の産物であるP21を介して細胞の分裂を止める。大きな遺伝子損傷の場合にはアポトーシス(細胞自滅)によって異常細胞を除去する。これにより、ガン遺伝子の活性化、ガン抑制遺伝子の消失が起こるが、細胞分裂を止めることにより発ガンが防がれている。すなわち体細胞増殖を継続させるテロメアーゼを抑制し、不要な体細胞を犠牲にすることが老化の基本になっていると推定される。この構造が個体を守り、そして個体を老化させるゆえんである(体細胞廃棄論)。
体細胞の損傷を防げば細胞の廃棄を避けることが出来る。寿命の回数券ともいうべきテロメアの短縮については、エネルギー摂取制限など代謝の抑制で延長することが出来る。適度な運動によりエネルギー代謝を抑えることで病気を予防することが可能である。テロメアを延長させること、ガン予防の装置を組み込むことの可能性が今後期待されるところである。
老化は遺伝子の関与に加え、後天的にエネルギー代謝に影響される。栄養摂取量の制限により平均寿命を数10%延長することが可能である。体細胞の分裂を栄養低下などで制限すればテロメアの短縮が遅れ、それだけ体細胞の寿命は延長される。
老化によるミトコンドリア機能の低下は活動能を下げて肥満の一因になる。過剰栄養による肥満は高コレストロール血症、動脈硬化症を介して主要な循環器疾患である心筋梗塞、脳梗塞を発生させる。
老化とともに活性酸素の生成量が増して不飽和脂肪酸が酸化され動脈硬化症の発生率が高まる。
マイナス水素イオンを体内に注入すると、活性酸素はこれと化合し水となって対外に排出され、DNA損傷が抑制される。ガンの初期段階には有効。
脳には通常化学物資は入らないようになっているが、イオンは取りこまれる。これを老化モデルマウスで検索すると、普通の餌でマウスは50日から100日ぐらいで死に至る。マイナス水素イオン化合物を混ぜた食事を与えると2年3カ月生きる。脳内で遺伝子が発現している状態を調べ、病気が治るメカニズムの中に2つに分かれる遺伝子活動があることが解明されている。遺伝子の効果を上げる「アップレギュレーション」と下げる「ダウンレギュレーション」。
脳に入ったマイナス水素イオンは脳下垂体に作用する。脳下垂体はホルモングループと副腎皮質刺激ホルモンを統括している。ホルモングループ間のバランスを大きく変えることが分かった。注目したのは、痛みを感じさせるベータエンドルフィンで、ガン末期の激痛を抑えるためにモルヒネが投与されるが、マイナス水素イオンはこの6倍の効果が認められ、さらにガン細胞の縮小、消失も確認されている。ガン治療では「完治」という評価はないが、4週間でガンの大きさが半分になる場合、あるいはレントゲンで見えなくなる効果を「寛解(かんかい)」といい、マイナス水素イオンは、抗ガン剤のこの評価を上回る「完治」という臨床上の実績評価が得られた紹介であった。
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講演後の懇親会での福元守氏と、氏を囲み歓談する皆さん |