( 11/06/12 )

一般社団法人 ディレクトフォース 5月勉強会

テーマ:「大震災における市民活動及び企業の役割」

 

笹川陽平氏

一般社団法人ディレクトフォースの5月勉強会は、5月25日学士会館で会員約120人が参加して開催されました。今回は『大震災における市民活動及び企業の役割』というテーマで、公益財団法人日本財団の会長笹川陽平氏にお話いただきました。

笹川氏はハンセン病撲滅運動をはじめ国内外で幅広く社会福祉活動に取り組んでおられます。このたびの東日本大震災についても発生後すぐに現地にとび、状況を把握したうえで、日本財団としての被災者支援活動を他に先駆けていち早く開始されました。阪神・淡路大震災、新潟県中越沖地震、ナホトカ号重油流出事故など今回を含めこれまで29回に及ぶ救援出動ノウハウを生かした東日本大震災被災者支援活動は高く評価されています。ディレクトフォースはこうした的確でタイムリーな活動に賛同して、会員から寄せられた義援金を日本財団に寄託しました。

お話の内容として、ステージに応じて被災者が一番必要としているものを、必要なだけ一刻も早く届けることが支援活動に求められる重要なポイントである。支援しようとする側の善意だけで物を送るのは混乱している被災地現場でミスマッチを生じ、タイガーマスク現象*になりかねないと警告されました。詳細は次のとおりです。

1.日本の寄付文化

日本には古来寄付文化、施しの文化があった。しかし戦後の税制改革や富の平準化によって脆弱化していく。本来は経団連が重要な役割を果たすべきであるが、透明性を高め、説明責任を尽くすことができずにその機能が十分には発揮されていない。経団連はニューヨークの5%クラブを参考に、経常利益の1%を寄付する1%クラブを創設したが、その後続いているのか、どのような活動をしているのか詳細は分からない。一方で高度成長期に企業のメセナ活動がブームになる。しかし景気後退後、メセナ活動は衰退して行った。文化的活動を含め、経営者の思いつき、世の中の風潮でしかなかったと言える。

2.企業に求められるCSR活動

企業は雇用を創出し、安価で品質の良い商品を提供し、利益をあげて株主に配当するという活動だけでなく、よき市民として存在し社会に貢献するCSR活動を求められている。多くの企業はCSR部門を設けているが、大半の企業では組織におけるその位置づけが弱い。

今や時代は変わり、社会に敏感に反応し市民活動、NPO活動を支援しているか、あるいは環境に配慮する企業であるかなど社会に対する還元の仕方の優劣によって、市民の目で見た企業の社格、社徳ともいうべき評価がなされるようになっている。

3.CSR活動を刺激する

財政赤字は実質1000兆円を超え、国あるいは地方行政の疲弊によりセフティネットからこぼれていく人たちが多数いる。誰がこの救い手になるか。一つは4万余りあるNPO法人、もうひとつは企業のCSR活動による資金をNPO活動に循環させることしかない。企業のCSR活動をどのように刺激するか、NPO法人をどのように質的に向上させるかが重要なポイントになってくる。

企業のCSR活動刺激策のひとつとして、日本財団のWebサイトに東証一部上場1700社のCSRランキングを1位から100位まで掲載することにした。その結果、アメリカのブルームバーグ(金融情報サイト)が、投資家に日本企業への投資判断の指標を提供するため日本財団と提携した。また日経新聞がCSR活動の重要性に気づき、提携の申し入れをしてきている。

次に学生の就職情報誌に広告を掲載し、学生が就職活動をするとき各企業が行っているCSR活動がひとつの選択肢となりうるようにしている。

このように投資判断という角度、あるいは学生が就職活動をする際の企業の見方、更に一番大事なこととして消費者がものを購入する際にCSRに力を入れている企業を選ぶ消費者からの目、これら3つが完成すれば企業は否応なくCSR活動を活発化せざるを得なくなるだろう。

企業の組織形態が社長あるいはCEOの直轄下にCSR部門を置き、その傘下に広告宣伝、広報が位置付けされるようになったとき、初めて日本のCSR活動が欧米並みになったといえる。そのような時代が早く来ることを望んでいる。

4.支援活動で求められること

東日本大震災がこれまでの災害と異なる点は局地的な災害ではなく、南北300kmにわたる海岸線が破壊され、被害が複数県にまたがり、原発事故が加わって複合的災害になっていること。

これに対して企業はどのように動いたか。企業は被災地にこれが必要だろうと考えて色々な物を送っておりその志は評価すべきであるが、大事なことは受け取った人が良いものを送ってもらったと感謝の気持ちを持つたときにはじめて善意の行動が完結するということである。物を送りつけたところで終わるのではタイガーマスク現象にほかならない。自治体は壊滅状態であり、送ったものの多くは野積みされたままで、現地ではミスマッチが今も起こっている。

災害が発生したとき、一番必要とするものを必要としている人に一刻も早く届けなければ意味がない。

日本財団は職員が現地避難所に行き、自治体を煩わすことなく自分たちの手で死亡者、行方不明者1人につき5万円を配っている。阪神淡路大震災以来今回を含め29回出動したが、その経験から今何が必要かステージに応じた必要物を知るため宮城県だけでも600箇所の避難所を定期的に調査している。企業が提供できる物や連絡先を日本財団のWebサイトに掲載していただければ、必要なものを、必要なだけ、必要とするところに的確にお届けすることが出来る。

5.日本赤十字に集まった義援金

日本赤十字は日本赤十字社法に基づいて成立しており、政府から独立した中立組織である。今回2100億円集まった義援金をめぐり、官邸から中立機関である日本赤十字社に配分促進の働きかけがあったことについて国民から批判の声が上がった。そのきっかけは、私が義援金と支援金は違うとブログに書いたことによる。日本赤十字に集まったのは義援金であり、罹災証明、死亡証明にもとづき支払われる。本来公正、中立でなければならないのに、今回は厚生労働省において開催された配分委員会で各県ごとの配分金額を約2時間でまとめ各県に送ってしまった。自治体は人手がないため、配分出来ずにそのまま宙に浮いている。

この間働いているのは全部NPOのボランティアで、この人たちの活動を支えるお金が支援金。今必要なのは支援金である。日本財団の支援金口座にお送りいただければ責任を持ってNPOの活動に役立つよう使わせていただく。

6.NPO活動を活発化するために

日本財団は50年近く活動をしてきたので、5万8千の支援データを持っている。4万数千のNPOについて、会計報告や事業報告についてデータを5つ星ランクで査定し、情報公開することによって企業がどのNPOにお金を出せばいいか判断基準となりうるようにしていきたい。日本財団は企業のCSR活動とNPO活動が上手くマッチングするような触媒の役割を果たせれば良いと考えている。

企業が商品のイメージだけでなく、素晴しい社会活動を行っていることで評価される社格とか社徳が問われる時代が近づいてきている。

7.質問に答えて

Q1.日本財団以外にNPOに対する支援活動をするところがないのはどうしてか。日本財団におけるNPO支援の活動の位置づけはどのようになっているか。

A1.NPOが育たない原因の一つは、本来NPOは自分たちでお金を集めて活動すべきものであるのに行政がお金を出したこと、自分たちは良いことをしているのだから誰かがお金を出してくれて当然という考えがあることである。日本財団は阪神淡路大震災以降、試行錯誤を重ねNPOを支援してきたが、この15年間で2倍、3倍の組織に成長したNPOは一つもない。

しかしこれからの日本においてNPOボランティア活動は絶対必要。そこで各県にボランティアセンターを設け、その県内のボランティアを束ねることを試みてきた。唯一成功したのが仙台で、いま大活躍している。NPOは、広く浅く、多くの人に支えられ多くのひとに参画してもらうことによって評価されるのだと説明している。ファンドレイジングするためには事業の説明責任と会計報告が必要であると口を酸っぱくして説いている。

そこでファンドレイジング協会を立ち上げ、5年間は支援するが5年以内にファンドレイジング協会自体が自立できなければ日本の公益活動、NPOは全滅すると挨拶をした。NPOトップの最大の仕事はお金を集め、透明性を高めることである。この点が欠落したままNPOが発展してきたことに問題がある。

 

Q2.日本で、NPOが上からの目線でなく、キチンとしたフィロソフィを持った活動をすることが出来るようになるのか、あるいは素晴しいNPO活動に企業が共鳴してファンドが流れるような仕組みが育つ土壌があるか。

A2.私は良い仕事をしているという考え方は少し思い上がった考えだと思う。良い仕事をさせてもらっているというべきで、結局は自分のためである。自分の精神生活を豊かにするために活動した結果が相手にとっても良かったという形でなければいけない。人様にいいことをしているということでは決してない。心の豊かさが重要で、その結果相手に喜んでもらえるということが基本である。

 

笹川陽平氏 懇親会 懇親会

講演後の懇親会での笹川陽平氏と、氏を囲み歓談する皆さん

 

註:*タイガーマスク現象とは、今年に入りプロレスリングのタイガーマスクが施設にランドセルを送り、マスコミにその善行が大きく報道され、次々とタイガーマスクが現れ、相手の立場も考えずに自らの善行を信じ一方的に贈物した現象。