超高齢社会対応の新社会システムづくりでDFと東大シンクタンクが連携

Study Teams(分科会)
超高齢社会ここに注目
2023年8月30日

8月7日の会合で「高齢者就労など産学連携プロジェクトを展開」で合意

一般社団法人ディレクトフォース(DF)が、超高齢社会のさまざまな問題に取り組もうとチャレンジの形で立ち上げた100歳社会総合研究所にとって、素晴らしい外部連携の枠組みが、新たにスタートすることになりました。

1カ月前の7月24日付けのこの欄でのレポートどおり、8月7日午後に東京大学工学部8号館ライブラリーで、日本が今後直面する超高齢社会時代に対応する新社会システムづくりに関して、東大高齢社会総合研究機構(以下、東大IOG)と合同会合を開催しました。会合では取り組み課題について、お互いに報告しあうと同時に、意見交換を行った結果、今後、プロジェクト連携していこう、ということで双方が合意したのです。

東大IOGは2011年から柏市でまちづくりプロジェクト

東大IOGは、2011年から高齢化に苦しむ千葉県柏市内の豊四季台団地で、高齢社会対応のまちづくり・柏プロジェクトなどに取り組むレベルの高いシンクタンクで、これまで優れた研究実績を持ち、専門家の間でも大きな評価を得ています。とくに高齢者就労、フレイル予防、生活支援、医療・介護、まちづくりなど8つの研究テーマに取り組み、状況によって専門家集団とも共同研究している、とのこと。

その東大IOGが、今回の合同会合での意見交換などを踏まえ、ディレクトフォース(以下DF)と問題意識を共有できたとし、「産学連携して、企業が主導する地域社会などでの高齢者就労づくりなどのプロジェクト展開が可能」との点から、今後、新社会システムづくりに向けて互いに連携して取り組もう、という判断に至ったようです。

私たちDF100歳社会総合研究所(以下DF100歳社会総研)にとっては、東大IOGと産学連携という形でプロジェクト展開できるのは、大変に光栄なことです。

DFは研究実績でハンディを抱えるものの、企業の高齢者就労づくりで今後、貢献へ

とはいえ、DF100歳社会総研は企業幹部OBを中心に、今後本格化する超高齢社会のさまざまな課題などに関して、旺盛な問題意識を持っているものの、研究スタッフ機能が十分でなく、かつ研究実績もまだ乏しく、いわゆるシンクタンクとしての体裁を整えていない弱さ、ハンディキャップを持っているのは間違いないところです。

しかし、DF100歳社会総研メンバーは、東大IOG客員研究員の立場でプレゼンテーションされた辻哲夫氏(元厚生労働省事務次官)の「超高齢人口減少社会への挑戦」、それに続く東大IOG名誉教授、秋山弘子氏の「地域社会における高齢者就労」の2つの問題提起をしっかり受け止め、これまで企業で培った経験や問題意識、人脈ネットワークを生かして地域貢献につながる高齢者就労のマッチングシステムづくりなどに関して連携できると考え、東大IOGとの産学連携にチャレンジしてみよう、となりました。

DFが「超高齢社会国・日本に対応する新社会システムづくり」で問題提起

合同会合では、辻氏、秋山氏の問題提起型プレゼンテーションにつなげる形で、DF100歳社会総研から牧野が「超高齢社会国・日本に対応する新社会システムづくりが最重要課題」というテーマで問題提起しました。ポイントは、以下の点です。

65歳以上の人口比率が14%超の国が高齢社会国、その比率が21%超になれば超高齢社会国という世界保健機構(WHO)の定義のもとで、日本は、その比率が28.6%超で、2位のドイツの21.7%をはるかに上回り、世界で突出した超高齢社会国になっている、ところが日本は、その枠組みに対応する制度設計が不十分で、社会システムづくりが喫緊の課題である、と実例を挙げて述べたあと、日本がここでしっかりしたモデルをつくれば、人口高齢化と経済成長のジレンマを抱える中国、タイ、ベトナムなどから「日本は成熟社会のモデル国家だ」としてリスペクトされる、というものです。

超高齢社会国家日本に対応する新社会システムづくりの必要性(牧野義司会員)

東大IOG辻氏「未知の超高齢人口減少社会でパラダイム転換必要」と強調

これを受けて、東大IOGの辻氏は、「超高齢人口減少社会への挑戦」のテーマで問題提起されました。具体的には、目前にしている超高齢人口減少社会が、これまで経験したことのない未知の社会であること、とくに個人の生き方、社会のシステムの両面で人口の高齢化、それに少子化に伴う人口の減少という重い課題を背負うため、日本は、その両面でパラダイム転換が必要だ、という点です。重厚なもので、ぜひ添付資料をご覧ください。

辻氏の問題提起のうち、日本は、2040年に向けて、総人口が減少傾向をたどる中で、85歳以上の人口が1000万人に及ぶ一種の逆ピラミッド状態の人口構造になること、その際、都市部で急速な人口の高齢化が進み、要介護の高齢者が急速に増えるなどの現実を冷静に受け止めた対応策が極めて重要、と強調されていたのが印象的でした。

東大IOGはフレイル予防など8分野でチャレンジ、高齢者就労の地域定着めざす

辻氏がこれらのテーマのうち、とくに力点を置いたのは、高齢者の地域就労に関する部分で、高齢者就労を定着させることが出来ると、シニアの人たちは働き、身体を動かすことで健康によく、生きがい、さらには地域社会を元気にするなどの形で地域貢献につながる。企業が地域就労にかかわれば、人手不足の解消にとどまらず、シニアを生かした新たな経営の実現に役立つ。しかも個人ベースでもフレイル予防、認知症予防にもつながるーーなどのメリットが生まれてくる、という指摘部分です。

辻氏は、この高齢者の地域就労の課題として、地域にある様々な事業活動について、シニアの高齢者にふさわしい仕事の切り出しと、高齢者を仕事につなげていくマッチングシステムの仕組み開発、それに対応する政策立案などの連携対応が必要になる、とも述べていました。

秋山氏が地域課題解決に向けシニアが活躍できる成功モデルづくりを主張

地域社会における高齢者就労の問題に関しては、東大IOG名誉教授の秋山氏も強い問題意識を持っておられました。合同会合にオンラインで参加された際、「地域課題の解決に向けてシニアが活躍できる成功モデルづくりが必要。それとシニア就労がスムーズに機能するマネジメントシステムも重要になる」と述べられました。

その際、秋山氏が強調されたのは、シニアの人たちが地域で複数の人たちと互いに力を合わせてスクラムを組むモザイク型就労という形での新たなモデルづくり、そしてローカルイベントや地域での生涯学習など地域活動をつなぎ合わせて、就労や社会参加などの機会を広げるマッチングプラットフォームづくりが重要になる、という点でした。

シニア自身で新起業、モザイク就労など多様な働き方の開発が必要、と秋山氏

このあと、合同会合では辻氏、秋山氏への質疑応答、そして意見交換に移りました。秋山氏が別のオンライン会合への参加で途中退出されましたが、その質疑の中で、DF参加者にとって興味深い問題提起がありました。以下の点がポイント部分です。

秋山氏によれば、高齢者が地域社会で大きな比重を占める人生100年社会時代のもとで、新たに全員参加・生涯参加社会をつくる発想が今後、重要になる。社会でシニアと呼ばれる高齢者にはいろいろな状況に置かれた人たちがいるが、シニアの人たちが無理のない範囲で働いて、全員で社会を支える点がポイントになる。また、シニアの多様な働き方の開発も重要で、たとえば、新たにシニアで起業、複数の人たちでスクラムを組むモザイク就労、働く人たちで協同組合をつくるワーカーズ・コレクティブなどが一例、という。

企業は人手不足から高齢者雇用、辻氏は「企業主導で地域貢献につなげる雇用を」

DF100歳社会総研メンバーからは、辻氏らのプレゼンテーションに対する質問のあと、企業の現場で今、人手不足に苦しみ、その労働力確保からパートタイム雇用をベースに高齢者雇用に踏み出している事例がある、との指摘や報告がいくつかありました。

ただ、問題は、秋山氏が指摘されていた「地域課題解決に向けて活躍できるシニア」、あるいは地域社会で医療や介護の世話にならずに活動するアクティブシニアを生み出すきっかけとなる生きがい就労の場づくりが今後のポイントになってくるが、企業でどこまで本気で取り組むのかが大きな課題、との指摘があったのも事実です。

その点に関連して、辻氏から「企業は、65歳以上の高齢者の再雇用に関しては簡単ではないのが現状。一方地域での就労に関しては、経団連や労働者団体の連合も地域社会での雇用創出が今後の重要課題なのに、地域の実情はあまり把握されていないと思う。地域社会の核になる学校や行政の現場での厳しい労働事情、同じく介護や農業の現場での働き手の不足などについて各地域に居住する企業のOBが取り組めるような仕組みにできないか、更に言えば、今後、企業においても各地域の事業所関連で地域貢献につながる生きがい就労の場づくりのための仕事の切り出しを進めることができないか」との問題提起がありました。

東大IOGから「9月にDFの皆さんに柏プロジェクトの現場見学を」との提案

今回の合同会合では東大IOGから、問題意識が旺盛な企業幹部OBの多いDF100歳社会総研の人たちに、地域社会を元気にするきっかけになる生きがい就労の場づくりなどでご協力を、との期待メッセージがありました。DF100歳社会総研メンバーで今後、討議して、どういった形で企業に働きかけを行うかなどの方向付けが必要になってきます。この点は重要なポイントで、今後のテーマになります。

そうした中で東大IOGから、猛暑が落ち着く今年9月以降にDF100歳社会総研の人たちに柏プロジェクトの現場見学をしていただき、それを通じて、高齢化が進む地域社会でのまちづくりの課題は何か、また地域貢献につながる生きがい就労はどういった枠組みがベストかなどを双方で方向付けができるようにしたい、との提案がありました。今後、現場見学会をいつごろにするか、関係者間で詰めますが、ご期待ください。

GOOD NEWS! 辻氏から、健康医療研究会の江村代表の寄贈本を高く評価

最後に、GOOD NEWS です。今回の合同会合の場で、DF100歳社会総研の活動報告の1つとして、健康医療研究会代表世話役の江村泰一会員が研究会の取り組みを報告、そのあと活動の成果や記録などを出版物の形で世の中に問うた研究会の著作ともいえる本を数冊、東大IOGの辻氏らに現場で手渡す形で寄贈されました。

柏プロジェクトのリーダーの辻氏は、健康医療研究会の活動内容に強い関心があったためか、さっそく読まれ、辻氏からDF100歳社会総研との連携窓口になっている牧野あてにEメールで「素晴らしい活動報告で、学ぶことが多いものでした。DF100歳社会総研との今後の連携に大きな期待を持ちます」という趣旨のメッセージをいただきました。その点を江村会員に伝え、江村さんから辻氏あてにEメールで、活動を評価くださったことのお礼を伝えたそうです。双方の連携の「実」が着実に出てきている、といえます。

なお、DF鎌倉会(鎌倉支部)の平井隆一会員からは同会の地域貢献に関して資料提供がありました。
鎌倉支部報告(平井隆一会員)

以 上(DF超高齢社会問題分科会世話役 牧野 義司)