技術部会トピックス

「リスクセンス フォーラム 2023」開催

2017年9月20日

NPO法人リスクセンス研究会 の主催の下で、「リスクセンス フォーラム 2023」が開催されました。詳細は次の通りです。

  1. 開催日時:2023年7月15日(土)13:00~16:45
  2. 開催場所 : 東京大学 工学部11号館( 隈ホール
  3. 開催内容は次の通りです。
    • 第一部:2022年度 GSEFの顕彰
    • 第二部:2022年度 Good Risk Sense Award の顕彰と記念講演
    • 第三部:研究会活動の報告と意見交換

このフォーラムは、産業事故・不祥事の撲滅を目指した各社の活動・取り組みを紹介するとともに顕著な業績を残した企業・団体を顕彰するものです。このようなフォーラムを開催することにより、産業事故・不祥事の発生を低減させ以て社会に貢献できることを目指しています。今までは毎年開催されてきましたが、コロナ禍で中断していました。今回4年ぶりに復活し、一般社団法人ディレクトフォース(DF)からも私どもリスクセンス推進研究会を中心に約10名が参加しました。主な内容は、次の通りです。

第一部 2022年度 GSEFの顕彰について

GSEFとは Good Safety Education Facility の略で、産業事故を防止する基本は作業員への教育であるとの考えに則り、全ての企業・団体に「安全」に関する良好な教育環境を構築していただくことを目標とする活動です。今回GSEFの顕彰の対象になった企業は次の3社でした。

上記3企業・団体の教育環境は、実際の作業現場に近い模擬環境を研修場所に作成し、現実に起こる産業事故(落下・転倒・挟み込み・感電等)を身近に体験してもらい、その防止策を教育するものです。特に鉄建建設株式会社様においては、施設内に実際に電車線路を敷設し踏切等を用意する徹底ぶりでした。顕彰された各企業・団体の発表を聞いていますと、事故、特に作業員の人身事故を撲滅することに真剣に取り組んでおられる様子が伝わってきました。

第二部 2022年度 Good Risk Sense Award の顕彰と記念講演

Good Risk Sense Award とは私どもの提唱するリスクセンス向上活動を企業・団体の経営現場に適用し、これにより著しい成果を収めた企業・団体に対して贈られる賞です。今年の受賞企業は 凸版印刷株式会社 様に決まりました。同社副社長執行役員 大久保伸一様が記念講演をされましたが、趣旨は次の通りです。

  • 凸版印刷株式会社の本業は印刷業であるが、今までイノベーションを続けることにより成長してきた。これからも経営を維持し成長するためにはイノベーションが必須であるが、これにはイノベーションを生み出す「人財」の育成・確保が欠かせない。
  • 上記の観点で、社員の皆さんに安心して就業してもらうためにいくつかの経営施策を行っている。例えば、労使共同で「働きがい推進委員会」を設立する、「安全道場」を全国に展開して産業事故の撲滅を図る、「健康経営宣言」を出して社員およびその家族の更なる健康の増進を図る、「役員塾」を開いて役員自らが社員と接して社員の育成を図るとかである。 上記の凸版印刷株式会社様の経営施策は、私共の提唱する「リスクセンス」を経営現場に適用した事例の典型的なものです。大久保様の記念講演からは、同社が如何に社員を大事に育てているか、健全な経営が産業事故・不祥事撲滅のために如何に有効であるかが、理解できました。

第三部 研究会活動の報告と意見交換

このセッションにおいてDF会員梅里泰正さんが講演をされました。

詳細については、梅里さんの 講演資料 をご参照ください。趣旨は次の通りです。

  • 梅里さんが現役の社長であった時に、産業事故特に再発事故を防止するために苦心をしてきました。具体的には、「再発防止マトリックス」を作成し再発の発生傾向とか原因分析を行ってきましたが、結果的には上手く行きませんでした。
    経営に有効な予兆管理が出来る事故・クレーム防止システム10件の産業事故には10通りの再発防止策が出来上がり、無限のモグラたたきに陥りました。ISO9001(品質マネージメントシステム)も導入しましたが、結果は変わりませんでした。
  • 梅里さんがDFに入会されて、中田さんから「リスクセンス診断システム」の話を聞き、組織を健全に保つことが事故防止に有効であることを知りました。現役時代の苦労があったためにこれに関心があり独自に調査研究をされ、その考えに賛同し納得しました。これには、ジェームズ・リーズン博士(UK)のスイスチーズモデルという安全工学上の理論的な背景があります。
  • 但し、同時に梅里さんは経営者自らが不正に走った場合にはこれを防ぐ方法はなく、経営者への研修の仕組みとかその監視のあり方について問題提起をされました。この間の事情については、「各種マネージメントとリスクセンスシステム」をご参照ください。 梅里さんの講演は、出席した多くの企業あるいは主催者の皆様からの共感を得ています。

振り返って見れば、4年ぶりに「リスクセンス フォーラム 2023」が開催されたことは出席した企業・団体の皆様が産業事故・不祥事の防止の重要性を改めて認識するとともにその対応策を情報共有することができ、成功であったと理解しています。

以上(立石 裕夫)