2023年10月10日(掲載日)
酒蔵巡り報告(No. 3:23/04/20)
- 日時
- 2023年4月20日
- 参加者
- 樋口、 嘉屋、 角谷 計3名
- 酒蔵
- 須藤本家株式会社
800年以上の歴史を持つ日本最古の酒蔵であり、日本で初めて「生酒」、「ひやおろし」を上市された蔵と言う点に興味を覚え、是非社長から直接話を伺いたく訪問した。以前昭和女子大の学生を連れ訪問された平尾先生のご紹介のお蔭で、社長自ら丁重にお迎え頂き、酒の歴史、食文化の解説、ご自身の酒造りの拘りと内外への日本酒の普及活動への想い等伺い、試飲も含め約2時間にわたり「勉強」させていただいた充実した半日であった。特に、米、水への拘りが強く、また、同業他社とは異なる何かにつけ My way な造りを徹底すると言う拘りが印象的であった。若い頃より試飲を繰り返すなど、Tasting能力の高さは想像できない。
同社概要
茨城県笠間市にある1141年創業という日本最古の酒蔵。現社長は55代目。
常磐線友部駅よりタクシーで10分弱と都心からも簡単に行ける。
1973年、日本で最初に無濾過の「生酒」を上市、地元の飯米コシヒカリのみを高精米し使用、2013年以降全て無濾過、生酒純米大吟醸のみを醸している。米、水、土、木など原料と自然環境にもこだわり、食とのマリアージュを重視した酒造りに注力。30年程前から海外市場への進出を試みており、業界他社より10年も早い。伝統を守りつつ革新的な酒造りに挑む「古くて新しい」特徴のある酒造りを目指している。
須藤社長より概況説明
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食とのマリアージュ
(いきなり食とのマリアージュが大事だと切り出されやや驚きであった。)
今でこそワインの世界では食とのマリアージュが常に話題となるが、戦前までは日本酒も食事に合わせた酒の飲み方が作法としてあった。戦後それが消えて久しいが、食に合わせた日本酒の飲み方が大事だと日頃から事あるごとに教えている。時々内外の賓客をもてなす場に呼ばれ、提供される食事にあった日本酒を選んで欲しいとの声が掛かり出かけることが多くなった。 -
米
酒米をいろいろ試してきたが、結論は飯米が一番だと思っており全て地元の半径5km以内で栽培された米を使用している。山田錦が最高の酒米と評価されているが、兵庫県の硬水で育った米を茨城に持ってきて栽培を試みたが、こちらは可成りの軟水なので良い米に育たないし、収量も落ちる。つまり適地適作ということ。また、心白が大きすぎて35%以上に精米しようとすると硬い米でないと出来ない。硬い米は酒には向かない。 -
水
昔から流れている伏流水だが、水源は不明。筑波山ではない。水を大事に維持させるためには山に木を植えしっかり面倒見ることが大事と考えている。硬度40度以下のかなりな軟水。 -
酒と器
酒を味わうには器を選ぶことが大事。酒器の形状や素材を吟味する事が重要と考えている。Riedel社(ぶどう品種ごとに適した形状を開発したオーストリアの老舗ワイングラスメーカー)と提携して日本酒用グラスを試作中。 -
正しい日本酒の提供
街の居酒屋では、その前を通ると燗酒の強い異臭を感じたり、熱くて飲めないような酒を提供したり、1升瓶を開けて何日も放置していたりと酒の取り扱い、提供の仕方が悪いなどびっくりするような店が数多ある。何とか美味しく飲んで頂きたく適切な管理と温度について知識を普及させようとしている。冷やとは酒蔵で酒がキープされている部屋の温度であって、18~20度を指すなど知って居る人は殆ど見当たらない。(冷やと冷酒は別物)
試飲
以下3種類の純米大吟醸酒を試飲。いずれも生、無濾過酒である。
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雪の舞 活性にごり酒 ¥3,000(春~秋はスパークリングタイプ)
上品できめ細かい泡が伸びるスパークリング。香り華やかで軽くて飲みやすい。
八寸から主食、食後まで通して飲める。濁り酒ではあるが一般の濁り酒のイメージと全く異なり辛口でキレが良い。40%精米。 -
山桜桃(ゆすら)¥3,000
リンゴ、バナナ、桃と言った果実香(吟醸香)が華やかに出る一般的な吟醸酒とは異なり香りはやや控えめ。味わいは軽快で辛口、飲みやすい。(欧米人に好評と。) -
郷乃誉生酛 純米大吟醸酒生貯蔵 ¥4,400
(同社の数種の酒のうち唯一の生酛酒。ワイングラスで1分間放置、其のあとスワーリングして試飲して欲しいときめ細やかなご指導があった)②よりはやや強めの吟醸香を感じ、生酛ながらスッキリ感有ながら旨味と熟成感も感じられる。
以上 (角谷 充弘)