2023年9月20日(金)15:00より、健康医療研究会主催による第32回セミナーを開催しました。
今回は先般6月21日に実施した意見交換会でも中心的な話題となった、終末期医療とその時の医師の選び方の問題について、永年東京都板橋区において訪問診療を実施してきた医療法人社団つくしんぼ会理事長の鈩 裕和(たたら ひろかず)先生からご講演を頂きました。
鈩先生は、平成8年に同地に外来診療から訪問医療・介護、さらに在宅看取りまで連続したサービスを提供されています。患者に希望する生き様、死に様をさりげなく問いかけ、実現可能な形で寄り添うスタイルをとっていて、押し付けの医療にならないように配慮し、薬物治療に依存しないことが信条とされています。つくしんぼ会は医師、看護師、介護職、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャーなど地域医療に必要な職種を揃え、患者が要介護状態になっても適切なサービスを受けて自宅での生活を維持できるよう援助、さらに自宅で最期を迎えたい方々への支援として在宅緩和ケアにも注力しており、「在宅緩和ケア充実診療所」の指定を受けているそうです。
当日のご講演の主な内容は次の通りです。
- 高齢者の医療は、その生活の内容や住宅環境等を理解しなければ完結しない
- まず在宅での日常生活を安定させることが必要
- 介護・リハビリと一体化した医療
- 訪問診療は計画に基づく医療で往診とは異なる
- 在宅死でも直近の医師の診断があれば、警察は介入しない
- つくしんぼ診療所の診ている疾患:脳血管疾患(減っている)、肺気腫、骨折等
- 睡眠薬の多重摂取も多い(多くの病院が板橋区にあるため)
- アルコール依存は在宅の方が有効。生活が見えるから
- 独居所帯も訪問診療は可能
-
緩和ケアは病院ではがんだけ。つくしんぼでは肺気腫や心不全も緩和ケアを行う
(病院での緩和ケアは医療費が安くてできない) - つくしんぼでの在宅看取り実施件数は23年間で約800件
- 点滴など余計なことはしない
- 医師、看護師、理学療法士、介護職、ケアマネの一体複合的介入が売り
全体を通じて「生活無くして医療なし」という言葉は重く感じた。
dfkenkohiryo@directforce.org までご連絡下さい。
<Q&A>
- Q:
- 在宅医療を行ってくれる診療所はどうやって探せばいいか。
- A:
- 地域包括医療センターや地域医師会に聞いたり、近所の評判などを参考にしてほしい。
- Q:
- 家族・友人等がおらず、看取りで死亡した場合、死後の処理までやってくれるのか。
- A:
- ある程度行う。葬儀委員長をやったこともある。
- Q:
- 近所で在宅医療のいい医師を見つけられるか心配。先代からのかかりつけ医の2代目を教育している。
- A:
- 是非教育してほしい。「医師は患者に育てられる」と言われている。
- Q:
- 介護人材について外国人の受入れについてどう考えるか。
- A:
- 文化・習慣の違いがある。例えば調理方法等。
- Q:
- アメリカではほとんどこういった仕事は外国人。日本もこのままでは回らないのではないか。
- A:
- 特に訪問介護はその通り。家政婦のような使い方は問題。それでは人材が定着しない。
- Q:
- 鈩先生のようなスタイルは全国的に増えているのか。
- A:
- あまり聞かない。もう少し制度等を変えていく必要あり。
以上で予定の時間となったので、最後に講師への謝意を各人盛大な拍手で表して、セミナーを終了しました。
<アンケート結果>
終了後にメールで依頼したアンケートには以下のようなご意見を頂きました。
- 訪問医療、地域医療の実態がよく理解できた。
- 自宅介護のポイントがよくわかった。
- つくしんぼのような施設が存在することを知った。
- 終末期医療について考えてみたいと思った。
これからも、健康長寿のための諸知識習得の観点から、定期的にセミナーを実施していきたいと思います。引続き会員の皆様の参加をお待ちしております。
また、テーマのご希望についても、事務局
dfkenkohiryo@directforce.org
までお知らせいただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。