健康医療研究会Zoomセミナー

第31回健康医療研究会セミナー
「人間と感染症の長いお付き合い」

2023年5月10日

2023年4月21日(金)15:00より、健康医療研究会主催によるZoomセミナーを開催しました。

東京都健康長寿医療センター顧問医で呼吸器・感染症の権威である稲松孝思先生

今回は今般5月8日より新型コロナ感染症の扱いが2類から5類に移行され、一つの区切りを迎えることから、人類誕生以来の感染症との長い付き合いから新型コロナのこれまでのまとめと今後の展望について、「人間と感染症の長いお付き合い」と題して、東京都健康長寿医療センター顧問医で呼吸器・感染症の権威である稲松孝思先生からご講演を頂きました。

先生は2017年にも、「その肺炎治す?治さない?」と題して高齢者の誤嚥性肺炎を中心とした肺炎治療の在り方についてご講演を頂いており、DF健康医療研究会セミナーには2回目のご登壇となります。

ご講演は、「ガイア仮説」から始まりました。
地球はウイルス、動植物といった様々な生物が 共生しあって共進化してきた巨大な生命体であり、もちろん人間もその一員であるとの説で、人間は誕生以来ウイルスとともに進化してきたことになります。

以下主な内容は次の通りです。

  • 人間の体内には、人間の持つ細胞数や遺伝子数よりもはるかに多数の常在菌を持っていて世代交代(進化)ははるかに速い。
  • 感染は寄生体の毒力×数と感染防御能の相対的関係で決まる。
  • 感染防御能の大きな要素は免疫である。
  • 抗微生物化学療法(抗生物質等)により感染症の治療は容易になり、天然痘は撲滅された。
  • 一方、近年耐性株の増加が問題になっていて、特にMRSA(黄色ブドウ球菌)による院内感染対策は大きな課題である。
  • 耐性菌と抗生剤は共に進化(共進化)し、いたちごっことなっている。
  • このような中、2019年末に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、パンデミックとなった。
  • これに対して、新しいタイプのワクチンであるm-RNAワクチンが開発された。
  • オミクロン株対応ワクチンの発症予防効果はいずれの年代でも40%台、重症化予防効果は57%。
  • 日本におけるコロナによる死亡者は波が来るたびに増加しているが、致死率は第6波以降0.2%以下に留まっている。(第1波時は5.3%)
  • コロナによる高齢者死亡数増加の要因は感染そのものに起因するものの他、他の病気の併発、血栓による心筋梗塞・脳梗塞、免疫機能の低下等が考えられている。
  • 130年前にロシア風邪が発生したが、味覚や臭覚喪失など症状に共通点があり、130年前にも「コロナ禍」があった可能性が高まった。
  • コロナ後の社会の問題点として、いま話題の ChatGPT では、社会格差の拡大、経済的な不安定、教育への影響、心理的な問題等が考えられ、適切な対応が求められる、としている。
  • 寺田寅彦は「ものをこわがらなさ過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむずかしい、と言っている。
  • 何が怖いかを正しく理解するためには実害を評価することである。自分の利害から恐怖を煽っていないか。
  • インフルエンザウイルスは日本人が発見した。(1920年ランセット誌掲載)

<Q&A>

Q:
ワクチンの安全性・後遺症についてどう考えるか。
A:
有効性と安全性のバランスで、今のところはメリットのほうが大きいのではないか。まだ結論は出ていない。
Q:
ワクチンを使うべきではない、有効性の立証がないままに進められているとの意見があるが。
A:
ワクチンには反対派が必ずいる。特にマスコミには多い。HPVの時はマスコミが騒いだため迷走し、結局ワクチン推奨取りやめになった。当時騒がれたものはワクチンとは関係ない物だった。結局は安全性と有効性のバランスである。

以上で予定の時間となったので、最後に講師への謝意を各人盛大な拍手で表して、セミナーを終了しました。

<アンケート結果>

終了後にメールで依頼したアンケートには11名の方からご回答を頂きました。
結果は以下の通りです。(4月28日16時までにご回答を頂いた分)

概括的な感想としては、7名が「大変参考になった」、4名が「参考になった」との評価でした。特に参考になった点、感想、コメントにつき代表的なものを以下に記します。

人類は体外・体内共ウィルスや細菌と共生していること
感染論の歴史、ヒトと細菌、ウィルスとの関わりを再確認できたこと。
ウイルスの伝染力の拡大と毒性の関係について
過去の世界的な感染症状の歴史が把握できた。
ガイア仮説 地球自体が巨大な生命体
ヒトと細菌の関係を、自然界、人類の歴史、人体、加齢など様々な広い視点からお話しいただいたこと。

これからも、健康長寿のための諸知識習得の観点から、定期的にセミナーを実施していきたいと思います。 引続き会員の皆様の参加をお待ちしております。

また、テーマのご希望についても、 事務局 dfkenkohiryo@directforce.org
までお知らせいただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

以 上(江村 泰一)