2024年1月19日
日時:
2023年11月21日(火)15:00~17:00
テーマ:
「秋田県における再生可能エネルギーの導入拡大と関連産業集積拠点の形成に向けて」
講師:
秋田県産業労働部 クリーンエネルギー産業振興課 三浦 均 課長
会場:
DFスタジオ751 + Zoom
参加者:
約54名
日本の風力発電の導入は世界に大きく遅れ、洋上風力発電もやっと導入の端緒についたばかりですが、日本の洋上風力発電のポテンシャルは大きく、経済産業省は2030年の導入量を1000万KWとする目標を設定しています。
この目標に向け2019年に施行された再エネ海域利用法に基づき、秋田県の2区域と千葉県の1区域が「洋上風力発電促進区域」に指定され、2021年12月、風力発電事業者が選定されました。秋田県の2区域の合計発電容量は134万kWで、2028年、2030年に発電開始予定です。
この流れを受け秋田県は新エネルギー産業戦略を改訂し、新たに3つの方向性を打ち出しました。
- 再エネ導入拡大の継続
- 関連産業経済効果の最大化
- エネ活用促進
またこの方向性に基づき以下の5つの重点プロジェクトを設定しています。
- 洋上風力の継続的な導入拡大と国内最大級の産業集積拠点形成に向けた取組推進
- 地熱発電の継続的な導入拡大に向けた取組推進
- 再エネ発電設備等の建設工事、部品製造、運転・保守への参入拡大促進
- 再エネの地産地消に向けた仕組みづくり
- 再エネを活用した水素製造やカーボンリサイクル、燃料アンモニアの取り組み推進
今回は日本の洋上風力発電のトップランナーとして、上記の5つの重点プログラムをより具体的に三浦課長よりご説明を頂き、事前提出、当日提起合わせ以下の15の質問に丁寧にお答えいただきました。
概要:
- クリーンエネルギー産業振興課のご紹介
-
第2期秋田県新エネルギー産業戦略(改訂版)
- 洋上風力の継続的な導入拡大と国内最大級の産業集積拠点形成に向けた取組推進
- 地熱の継続的な導入拡大に向けた取組推進
- 再エネ発電設備等の建設工事、部品製造、運転・保守への参入拡大促進
- 再エネの地産地消に向けた仕組みづくり
- 再エネを活用した水素製造やカーボンリサイクル、燃料アンモニアの取組推進
- 洋上電力を契機とした波及効果の創出
質疑応答(事前提出)
- Q1
- 先般来議員による風力発電絡みの汚職事件の今後への影響は。
- A1
- 今回の入札は洋上風力発電開発の国内初の本格的な競争入札であったが、結果大手商社の企業連合が三つの促進地域全てを落札し、贈賄側とされる企業は落札を逃したとされている。この汚職事件の影響かは不明だが、入札後制度の在り方に関し改善の必要性を指摘する様々な意見が出され、国は2022年11月に新たな「公募占有指針案」公表し制度改正を行った。この結果、事業計画の迅速性(早期の運転開始時期の提案)を重視するようになり、加えて同一事業者による落札制限が設けられ、一社単独での落札が出来なくなった。
- Q2
- 台風などの自然災害へのリスクが高いと思うがその対策は。
- A2
- 台風が多い日本向けに国際機関が設定したより厳しい条件(風速57mに耐える)をクリアーした機種が採用されている。
- Q3
- 関連企業誘致は進んでいるか。
- A3
- 三菱商事、日本郵船、東芝エネルギーシステム等進んでいるがデータセンター、半導体、電池等の製造業、漁業、スマート農業はまだこれから。
- Q4
- 洋上風力開発の初期段階では「セントラル方式」が進められているが、秋田県での現状および今後は。
- A4
- 平成26年に定められた既存地域では複数の事業者が調査を実施している。JOGMECが一括して実施したほうが効率的と考えているので、今後実施されるであろう深海域での調査ではJOGNECによる一括調査を期待したい。
- Q5
- 風力事業者の営業運転開始後のOM拠点としての役割は大きいと考えられるが秋田県のアピールポイントは。
- A5
- 港湾機能に加えいち早く人材育成を始めており、この点を活用いただきたい。
- Q6
- 円安やインフレによる資機材の高騰で事業リスクが高まっているが、地元自治体として大胆な施策をある程度リスクを取って行うか。
- A6
- 今後考えていく必要があると考えている。
- Q7
- 再生可能エネルギー推進プロジェクト全体の中で秋田県が中核的な役割を担っている項目は何か。その中で特にうまく推進できそうな項目、推進が困難と思われる項目は何か。
- A7
- 事業者の公募に繋げるような海域の設定が県の最も重要な枠割。次に県内企業の参入の促進、得た電力を首都圏等他地域に送電するだけでなく県内での有効な活用も重要。
- Q8
- 環境問題、景観問題等を理由に推進反対の声が出てきた時の県の立ち位置は。
- A8
-
反対は確かに存在するが、景観問題は自然公園から5kmは離すようにしている。
また風車を景観を害するものと捉えず観光資源として活用する案が能代市では出ている。健康被害も風車の低周波音や騒音との因果関係が明らかではないので、対策の講じるまでに至っていない。
質疑応答(当日対応)
- Q1
- 脱炭素化社会に対応した県内スタートアップ企業育成の施策を実施されているか。
- A1
- 残念ながらまだ対応していない。
- Q2
- e-Fuel合成燃料が脚光を浴びており、風力発電を利用して水電解から水素を作りDAC等から得るCO2と合わせて合成燃料を作るというプロジェクトがチリをはじめ世界で計画されているが、秋田では検討されているか。
- A2
- CCSで二酸化炭素を秋田沖の海底に2030年に毎年200万トン貯留すると言う計画があるが、それだけでは単なる二酸化炭素のゴミ捨て場になってしまう。このCO2を有効活用する為に風力で得る電力から水素を作り合成燃料をと言うのは将来期待できる分野と考えているが、計画として煮詰まっている訳ではない。
- Q3
- 風力発電の事業者は円安もあり競争環境が厳しくなっており、シーメンスの子会社は1兆円の赤字を出しているとの話もある。今後益々厳しくなるかもしれない風力発電事業をどう見ているか。
- A3
- 秋田の第一ラウンドではシーメンスも入っていたが、第二ラウンドではGEとベスタスしか残らなかった。40~50万kWでは規模が小さく発電機メーカーとしては魅力に映らないのではないか。もっと規模の大きい案件を提供できればと思う。
- Q4
- 欧州、アメリカでは風力発電がコスト的に厳しく計画の撤退、中断が出始めていると聞く。秋田の案件も11円というコストは応札時は出来たとしてもコストが上がると厳しく、三菱商事としても再検討、撤退の可能性が出てくるのではないか。11円が固定でなく調整するメカニズムはあるのか。また秋田県としては大変安いコストで電力を得られるメリットを生かした企業誘致が出来ているのか。
- A4
- 環境的に厳しくなっているであろうことは推察している。ただ最近も三菱商事とは頻繁に協議を続けているが、その大変さは直接伝わって来ていない。2030年に向けて順調に計画を実行していただけるものと期待している。11円はFIPではなく固定買取価格になっているので需要家はそのメリットを享受できない。第2ラウンド以降ではFIPで発電者と需要家が直接売買できるので安さのメリットが生かせる。
- Q5
- 陸上風力から洋上風力に移していく理由は。
- A5
- まだ開発は続けられているが陸上は適地が無くなってきている。洋上の方が風況が良く風車が大型化できる。コストはまだ陸上の方が安いが将来的には洋上が上回る。
- Q6
- 潮流発電、波浪発電も検討されたか。
- A6
- 秋田県沖ではまだ検討していない。
- Q7
- 洋上風力で発電された電力を船で運ぶPOWER-Xというベンチャーがあるが検討したことはあるか。
- A7
- ない。送電網を個別に引けない規模の小さな送電用のビジネスモデルではないか。
以 上(文責 石坂 直人)