弓とのお付き合い

メンバーズ・エッセイ
撮影:神永 剛

2023/11/16 (No. 401)
安在 宏明
安在 宏明

昭和48年、東大に入ってひと月たち、兄のいるラグビー部に入部しようかと駒場寮の近くを歩いていたら、袴姿の女性に声をかけられ、フラフラとついていったのが出会いです。

夏合宿が終わるころには、(女性ではなく)弓の虜になっていました。道場は、本郷の三四郎池端にあります。東大は「弓道部」と言わず、中たり優先でいまだに「弓術部」で通しています。そのせいか、「射形が良い」と言われたことはなく、「よく当たるね」と言われます。

最大の思い出は、毎年11月23日(勤労感謝の日)に行われる京都大学との定期戦です。現役最後の試合です。主将だったので自身最後の矢が、試合最後の矢。それを当てたことで、勝利できたときの安堵感です。

勝敗の決する大落の止矢(試合最後の一本)には、これを入れれば勝ち、これを外すと負けの2種類があって、自身の気の持ちようでも変化するオセロのようなものです。誠心誠意、魂を込めたのは今でも覚えています。

就職も、各場所に弓道場がある三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)としました。

三菱グループには武道会があって、柔道、剣道、空手道、少林寺、合気道、居合道、なぎなたは日本武道館(参加1,800名)を、弓道は明治神宮(参加200名)を使って、毎年大会を開いています。15人の射手が一列に跪座して的に向かう姿は壮観です。この大会参加を目標に、細々ながら弓を続けてこられたと思っています。コロナで中断しましたが、復活できたことは何よりでした。

2016年に、香川県にある直島製錬所100周年を期に武道場が改新築され、弓道場の設計や工事にも関わらせてもらいました。瀬戸内海の島なので、松と波、それと正面に見える大島を模った幕を誂えてみました。直島は最近草間弥生さんに代表される芸術の島としても注目されています。今年(令和5年)9月の月刊『弓道』の表紙にも採用されました(写真参照)。

今年から、全日本弓道連盟の副会長のお仕事を頂きました。会員は13万人ほどで、一般は4万人、体育の正課に取り上げられたことで、中高生が8万人ほどいます。少子高齢化への取り組みが最大の課題です。老若男女こぞって楽しめるライフスポーツとして、弓道の普及に向け、お役に立てればと思っています。

そういった関係で、理科実験教室の参加も減るかと思いますが、長い目で見てやってください。また、スポーツ団体も、ガバナンス、コンプライアンス、ハラスメントといった、遵守事項が増えてきました。弓道人への啓蒙ノウハウなどを経営経験豊富なDFメンバーの方からご教授頂けたらと思います。

以上

あんざい ひろあき (1418)
(理科実験グループ)
(元・三菱マテリアル)