第18クール 企業ガバナンス部会

第7回月例セミナー

2023年4月4日
 昭和電線ホールディングス(当時)、現:SWCC株式会社 代表取締役社長・グループCEO 長谷川 隆代 氏
開催日
2023年2月15日(水)14:00~16:00
場所
DF事務所スタジオ751 + Zoomのハイブリッド方式
講師
昭和電線ホールディングス(当時)、現:SWCC株式会社 代表取締役社長・グループCEO 長谷川 隆代 氏
テーマ
「当社の経営改革と人的資本戦略」
視聴者
39名

【講演サマリー】

1. 当社の紹介とこれまでの経営改革

  1. 創立1936年の老舗電線メーカー、エネルギー・インフラ事業が売上の半分
  2. 5年前までの当社は旧態依然の経営体質=中計達成は皆無、茹でガエル、現状維持志向
  3. 変革の考え方=基本は研究者:目標は常に110%
  4. 改革はまずガバナンスから=監査等委員会設置会社へ移行、指名・報酬委員会設置
  5. 子会社独自経営からセグメント制採用し全社一体経営へ
  6. ROIC*1経営を中心に据え、構造改革継続実行し、中計を初めて達成(しかも1年前倒しで)

2. 新フェーズへの挑戦

  1. 経営改革から成長ステージに移行する
  2. 社名変更=2023年4月1日~「SWCC株式会社」に
  3. パーパス制定=多様な年代層・職場・性・国籍からなる13名のメンバーが策定し提案した。「いま、あたらしいことを。いつか、あたりまえになることへ。(パーパスの一節)」は、社員の心に刺さるものになった。策定メンバーが全拠点を回って訴えたことにより社員に感動を与えた。

3. パーパスを推進力とする新たな価値創造への取り組み

  1. 4つのトランスフォーメーション=①ビジネス領域のトランスフォーメーション:強みを発揮、②ビジネスモデルのトランスフォーメーション:稼ぐ力の向上、③人のトランスフォーメーション:変化に対応できる人材確保、④組織のトランスフォーメーション:価値創造を促進する組織体制
  2. 4つのトランスフォーメーションの取り組み内容
    1. 基盤事業をベースにした新市場・新領域への展開+財務基盤を強化し成長投資
    2. 積極的成長投資+ROIC経営定着による稼ぐ力の向上+ROIC経営の全社浸透+DX推進による生産性向上+カーボンニュートラルへの取り組み
    3. 経営戦略と連動した人的資本戦略+その連動を促進させる取り組み+多様な人材活用の促進(女性活躍推進プロジェクトSWCCaratから発展形へ)+みらいへの人材育成+エンゲージメント向上に向けた健康経営ロードマップとKPI*2+エンゲージメント向上
    4. イノベーション創出環境の強化(社内ベンチャー)+リージョナル経営体制の推進(グローバル人材育成+ローカル人材活用)

4. 社外取締役の皆様へ(のお願い)

  1. 古い体質、企業文化、業務慣習等の総点検=強靭なリーダーによる徹底した社風改善の実践(社員アンケートによると、若手を含めて「安定」が好き)
  2. 構造改革の次ステージの推進=グループ会社統合、CCC*3改善、強靭な財務体制構築、ESG経営推進
  3. 社内資産の発掘と活用=①要素技術の活用、②有能な人材発掘と登用、③Dive-Inの実践「SWCCarat(女性活躍推進プロジェクト)」活動推進

[付] ガバナンスの課題 (社外取締役から経営側への提言~2021年度ESG説明会より)

  1. 古い体質、企業文化、業務慣習等の総点検=強靭なリーダーによる徹底した社風改善の実践(社員アンケートによると、若手を含めて「安定」が好き)
  2. 構造改革の次ステージの推進=グループ会社統合、CCC改善、強靭な財務体制構築、ESG経営推進
  3. 社内資産の発掘と活用=①要素技術の活用、②有能な人材発掘と登用、③Dive-Inの実践「SWCCarat(女性活躍推進プロジェクト)」活動推進

【Q&A】

Q1.
  1. 保有技術の説明を
  2. 経済安全保障についての考え方
A1.
  1. 材料技術に強み、特に金属材料、ゴム材料、+制振・免振技術+超電導+電力工事者育成しクラウド人材化。
  2. 中国のみならずベトナムでも展開しており、この度ベトナムに増産投資した。また自国内でのサプライチェーン確保している。
Q2.
数々の経営改革にはコンサルの助けを借りたのか?
A2.
人材教育の一部応援して頂いたがあとは自前。合わないコンサルもいるので。
Q3.
  1. ガバナンス改革は形から入るのが一般的と言われているが、魂を入れる際の困難は?
  2. HD体制から事業会社体制に戻る理由は?
  3. これからの監査役の役割は?
A3.
  1. 先輩役員を説得して辞めてもらうのに苦労した。担当の会社のことしか考えておらず、グループ経営になっていなかった。ここが必須と考え貫徹した。
  2. HD体制は各社が同じような事業をやっているし、人事・総務・経理・法務などの管理部門や監査部門を各社が持っているため仕事が重複し非効率なので、圧倒的に事業会社に戻したかった。しかし昔のままの事業会社ではどんぶり勘定で、赤字事業や経費の責任体制が明確でなかった。今度は小さい本社にし、管理部門を全体のシェアードサービス化し会社を効率化する。
  3. 監査役には経営者が決めたルールを逸脱するなど、本質から外れていないか、組織風土やKPI、経営の一貫性まで見て欲しい。
Q4.
講師の言う女性だからと言って特別扱いしないことに賛成。しかしどうしても女性ならではのハンデがあるが?
A4.
女性にはライフイベントがあり、人生の中で成長する重要な時期に当たってしまう。しかし産休は勿論、在宅、時短、地方勤務、男性育休などの制度も昔と比べて格段に充実している。常々、産休・育休を堂々と取りなさい、と言っているが、どうしても「同僚に迷惑をかけないか心配」と考える人が多い。決して産休・育休を取ることはプラスになりこそすれマイナスではない、と説得し続けるしかない。この「マインドの問題」を改善したいと考えている。
Q5.
TCFDや統合報告書を研究しているので、カーボンニュートラルについてお伺いしたい。Scope1、Scope2まで達成していること評価したい。KPIや中計の中に明記されているが、社内のどこまで浸透させているか?
A5.
セグメントからROICツリー、そして部、課のレベルまでは確実に下していて、方針展開などにより個人レベルまで下しつつある。当社もScope3の算定を具体化し、さらに財務情報の中での開示に進みたいと考えている。
以 上(平井 隆一)
  1. ROIC : Return On Invested Capital 投下資本利益率
  2. KPI : Key Performance Indicator 重要業績評価指標
  3. CCC : Cash Conversion Cycle