第18クール 企業ガバナンス部会

第6回月例セミナー

2023年3月6日
三優監査法人名誉会長 杉田 純 氏
日時
2023年2月15日(水)14:00~16:00
テーマ
「最近の社外取締役・監査役の実務課題」
— この一年間のまとめと今後の展望 —
— CGコード対応からサステナビリティ経営、ウェルビーイング経営まで —
講師
三優監査法人名誉会長 杉田 純 氏
場所
DF事務所スタジオ751 + Zoomのハイブリッド方式
参加者
49名

【講演概要】

2021年にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、取締役会の実効性の向上、サステナビリティをめぐる課題への取り組み、中核人材の多様性への取り組みなどが一層求められている。また、2022年4月より東証の上場区分が再編され、プライム市場を中心により高度なガバナンス対応が求められている。改めて社外取締役や監査役が留意しなければならない実務課題を中心に、その対応や今後の展望について講演頂いた。

【講演内容要旨】

激変する経済・環境の中でグローバリゼーションの見直し、SDGs*1推進などあり、企業も人的資本、知的資本、自然資本(環境、TNFD*2)、社会関係資本(生物多様性)経営など無形資産の活用が求められる。

具体的には人的資本活用は2023/3月期から有報で開示義務となる。内閣府の「人的資本の可視化方針」が参考になる。リスキリング、DX*3、ウェルビーイング、ジョブ型人事制度の検討などが求められる。ISO30414*4に準拠した人的資本の情報開示対応も研究しておくことも必要(米国では2020年下院で承認された)。そしてカーボンニュートラル、DX推進競争、デジタルインボイス制度(中小企業のDX促進のきっかけとなる)、サステナビリティ、ダイバーシティ(ジェンダーへの対応はグローバル企業には必須要件、日本企業はまだ弱い)、人権尊重、BCP*5におけるサイバーセキュリティ対策、取締役会の実効性評価(全上場会社では40%実施しているがまだまだ)、英文開示対応なども求められる。2024年には自然資本に関する記述がより求められTCFD*6からTNFDへ範囲が拡大する。

経産省のCGS研究会によるCGS*7ガイドライン(2022年7月改訂)等をベースに、攻めのガバナンス、監査等委員会設置会社、指名・報酬委員会の役割、社長・CEOの解任・不再任問題、社外取締役の資質・評価(社外取締役の選解任の基準を作ることが求められ、業績説明なども担うことになるかもしれない、5年後には過半数、10年後には大多数となることが予想され、自己評価・相互評価あるいは第三者により評価されるようになる)、後継者育成計画、エンゲージメント(日立のハピネスプラネットジムのアプリ開発、富士通は1on1ミーティング強化等)、人権DD*8(自社だけでなく取引先企業も入ってくる)などが今後求められるようになる。

CGC*9対応からサステナビリティ経営、ウェルビーイング経営までを網羅的に具体例を交えて熱くご講演いただいた。

【質疑応答】

Q1.
こんなにガバナンス対応に時間を割かなければならないならば、仕事をする時間がない。当然費用もかかり、どのように経費計上されるべきか?
A1.
時間のかかるもの、費用のかかるものがあるが、その企業の実情に合わせて3年程度で対応すればよいのではないか。
Q2.
CG対応は任された部署だけに負担が生じることになるが、どう考えるべきか?
A2.
既存の部署だけでなく委員会制度などをうまく活用し、全社的に対応してはどうか。
Q3.
社外取締役の評価は個人による評価あるいは外部の第三者評価によるとのことだが、どのようにするのか?
A3.
筆頭社外取締役が他の社外取締役を評価する、事務局+第三者(外部コンサルタント)が評価するなど方法は色々ある。公表するか非公表にするかもよく考える必要がある。
Q4.
環境、とりわけカーボンニュートラル問題は難しい問題だが、最終的には排出権取引を使わなければ解決できないのではないか?
A4.
プライム市場企業の30~40%は既にカーボンオフセットを表明しており、残りも殆どが表明することを検討中。TCFDも認証市場として発展していくのではないか。
以 上(越後屋 秀博)
  1. SDGs : Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標
  2. TNFD : Taskforce on Nature-related Financial Disclosures 自然関連財務情報開示タスクフォース
  3. DX : Digital Transformation
  4. ISO30414 : 人的資本経営に関する情報開示
  5. BCP : Business Continuity Planning 事業継続計画
  6. TCFD : Taskforce on Climate-related Financial Disclosures 気候関連財務情報開示タスクフォース
  7. CGS : Corporate Governance System
  8. 人権DD : Due Diligence 人権デューデリジェンス
  9. CGC : Corporate Governance Code