第18クール 企業ガバナンス部会

第4回月例セミナー

2023年3月6日
最近の社外取締役・監査役の実務課題
日時
2022年12月21日(金)14:00~16:00
テーマ
東京商工会議所が行う中小企業支援について
講師
小林 治彦 氏
東京商工会議所常務理事

【東商の概要】

1878年に東京法商会議所として創立、商工会議所法が法的根拠の民間組織。現在83,000余社の会員を擁する。約79%が法人会員で、法人会員の95%が中小企業。活動地域は東京23区。中小企業の経営支援、国・都への政策への提言、地域振興活動などを行う。150名の議員により統治される。議員の多くは大企業であるが、常に中小企業目線での活動・機能を目指す。

【中小企業の支援】

最近の社外取締役・監査役の実務課題

東京都に所在する中小企業の現状の厳しい経営状況についての説明があり、小規模企業になるほど厳しい経営状況にあること、価格転嫁は79.9%が希望する価格転嫁ができていないこと、円安については62.5%がデメリットの方が大きいこと、コロナ以降62.5%が新たなビジネス取り組みをおこなっていること、IT・DXについては人材不足により生産性向上に寄与できるところまで行っていないこと、64.9%が人材不足と感じていること、女性活躍は全く進んでいないこと、外国人人材も不足気味であることなどから、中小企業の経営はまだまだ厳しい現実が報告された。

これらの状況に対し、コロナ禍における中小企業の経営改善に寄与すべく、中小企業対象のワクチン共同接種、経済活動の早期再開への国・都との対話、取引機会の拡大のためのイベントの開催、中小企業の声の集約、経営支援コンサルティングの充実(実績件数は111千余件)、マル経融資(東商が推薦状を出し、日本政策金融公庫が無担保・無保証で融資を実行)364件などを実施してきた。

中小企業向けの政策としては、IT・DXおよびサイバー対策などの支援強化、最低賃金の大幅上昇への対応、ダイバーシティー推進、税制・事業承継への提言、大企業と中小企業の共存共栄(特に「パートナーシップ構築宣言」を軸に取引適正化)、東京の都市力の強化、エネルギーの安定供給体制(原子力政策推進も含む)、CN(カーボンニュートラル)の観点からの中小企業の省エネ・脱炭素化などを実行していく。
特に経営支援の体制を強化していく。特に多い金融関連の相談など、会員中小企業が相談しやすい体制作っていく。

【渋沢栄一事業】

渋沢栄一の功績や思想などについて、普及・啓発活動を展開中。

講演の後、活発な質疑応答が行われた。下記が要旨。

【質疑応答】

質問1.
中小企業をどう活かしていくのかが、今後の日本経済再生のキーになる。M&Aを活用して、小規模企業をある程度の規模にしていくことが必要。東商のなかで、M&A支援する仕組みはあるのか?
回答)
東商の別働隊の「東京都事業承継支援センター」にてM&Aの支援をおこなっているが、今後さらに周知していきたい。近々、中小企業M&A関連の冊子を出して更にPRしていく。
質問2.
良い政策が多いと認識した。具体的な政策要望・提言はどのようにして国・都に提出するのか?
回答)
実態調査アンケートに基づきデータ収集、各支部で会員との意見交換会実施により生の声を聞き、委員会で議論した上で政策提言をする。必要に応じて、副知事、都議、大臣、国会議員などにサポートをお願いするケースもある。
質問3.
大企業と中小企業との共存共栄ということで大変有難いが、東商役員はほとんど大企業。本当に、大企業が中小の目線でやってくれるのか? 中小企業庁、中小企業基盤整備機構との連携もおこなっているのか。
回答)
パートナーシップ構築宣言を軸にして共存共栄を図る。永野元会頭の「石垣論」(石垣は大きな石と小さな石が合わさって強固なものになる)が東商の中では底流にある。国機関とは密に連携している。
質問4.
中小企業が元気にならないと日本の活力は戻らない。東商が中心になって諸施策の実行のリーダーシップを発揮してほしい。
回答)
応援有難い。現在の東商への加盟法人数83千社は、まだ都内の法人の20%しか組織化できていない。もっと加盟率が高まるように皆さんの協力をお願いしたい。
質問5.
DFにも企業支援グループがあり、横浜などの中小企業支援をやっている。DFから東商の相談支援の協力はできないものか?
回答)
専門家集団として、支援相談担当部署に話してほしい。
以 上(荻野 好正)