環境部会トピックス

第6回 DF環境サロン開催

撮影:保坂 洋
2023年1月27日

まず、木口さんからカーボンニュートラル (CN) の実現に向けたカーボンプライシング (CP) の位置づけについて話題提供があった。

  1. CNの達成にはCO2排出量の算定、削減目標の設定、削減施策の実施のプロセスがある
  2. 削減目標の設定に関しては、TCFD(企業の気候変動への取組、影響に関する情報を開示する枠組み)、SBT(企業の科学的な中長期の目標設定を促す枠組み)認定、CDP(気候変動に関する英国のNGO)レポートなどがある。
  3. 削減施策としてはCP、ESG、金融、新技術開発がある。
  4. CPはCO2に価格を付けて排出者の行動変容を促す政策手法で、炭素税、排出量取引制度、クレジット取引制度等がある。
  5. クレジット取引はCO2削減価値を証書化し、市場や相対で取引するもので、日本政府が運用するJ-クレジット、JCM等の他、国連主導のCDM、Gold Standardなど、民間セクターが主導するクレジット取引もある。
  6. CPにはCO2価格が低い国で作られた製品を輸入する際に、生産時に排出されたCO2の量に応じて課税する炭素国境調整措置と呼ばれる制度も検討されている。
  7. CPには政府ではなく企業が低炭素投資・対策を推進するため、独自に炭素価格を設定するインターナル・カーボンプライシング(ICP)もある。
  8. 日本は2012年に温対税を導入し、現在の税率は289円/t-CO2(ガソリン1リットル当たり0.76円)である。排出量取引は2010年から東京都が、2011年から埼玉県が開始しているが、全国的な制度としては導入されていない。
  9. 一方、世界では46の国・32の地域がCPを導入あるいは導入を決定している(2020年4月現在)。しかし、パリ協定の目標と整合する水準のCPがカバーしているのは、世界の排出量の5%未満である。また、社内炭素価格(ICP)の導入を表明した企業は約1600社ある。

中西さん(900)からは、日本政府の成長志向型CP導入方針について話があった。

  1. 炭素税や排出量取引制度の導入は産業界が主張するように、国際競争力を弱める怖れがあるので最初は低い負担で導入し段階的に拡充していく。
  2. 一方、2050年CN実現という国際公約を達成するためには、今後10年間に150兆円のGX(グリーン・トランスフォーメーション)投資が必要であり、産業界は毎年15兆円規模の投資を直ぐに始める必要がある。
  3. その負担を軽減するために、政府はGX経済移行債を発行して資金を調達しそれを産業界への投資支援に使う。GX経済移行債の償還原資は、将来本格導入する炭素税や排出量取引制度から得られる政府収入を当てる。
  4. 他方、GXによる成長を確信して果敢にビジネス変革を進める企業は多数ある。これらの企業がカーボンクレジット市場を通して自主的な排出量取引を行うことを支援する。2022年3月、産官学でGXを推進する枠組みとして、GXリーグを設立した。

この後、サロン参加者と活発な質疑・意見交換が行われた。
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CNにとっては避けられない課題なので、議論は大変盛り上がり、有意義で楽しいサロンとなった。

以 上(中西 聡)