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2022/12/1 (No. 378)

“老黄忠” 頑張っています

木口 利男

木口 利男

黄忠とは劉備配下の老齢の武将の名前だが三国志演義における戦場での活躍ぶりから、中国では老いてますます盛んな人の代名詞となり「老黄忠」は誉め言葉とされている。

67歳で第一線を退いた時、人生100年時代にこれから何をしようかと考えたがポートフォリオワーカーとしてこれまでの経営者経験、人脈を生かせそうな企業支援部会に参加ししベンチャー企業支援をすることとした。

活用した人脈は銀行の先輩後輩、中小企業の社長在任中に接点のあった人達、大学のクラスメイト、合気道部の先輩後輩、ゴルフ仲間等で企業ニーズに応じ手当たり次第に声をかけた。二つ返事で引き受けてくれる人、しぶしぶだが引き受けてくれる人、無視する人、対応は様々だった。こうした活動の過程で思いもかけない出会いがあった。「犬も歩けば棒にあたる」とはよく言ったものである。以下は面白い棒にあたった私の話である。

気候カジノ

昨年の3月に企業支援の過程で面識のできたF社長から「引き合わせたい人がいる」と言われ、髪を金髪に染めた若者(野島健史)を紹介された。その若者は白板を前にカーボンニュートラルについて説明を始めた。ノードハウス博士の「気候カジノ」という書籍を読んで気候変動問題解決のためのビジネスが重要だと思いついたという。私は業界用語を連発する説明を2時間ほど辟易しながら聞いたがその時は全く理解できなかったので「気候カジノ」を購入して読んでみた彼の主張が少し理解できた。しばらくしてF社長から彼が会社を設立するので手伝ってやってくれと言われ一緒に彼の渋谷オフィスを訪ねた。設立する会社の説明とメンバーの紹介を受け、興味と将来性を感じたので7月から顧問として必要に応じ支援するという契約を結んだ。

会社名は日本ゼルス株式会社*1、企業の脱炭素化をプロデュースする会社である。全くゼロからのスタートなので当初は会社案内の校正、銀行口座開設手続きのアドバイス、事業計画作成の手ほどきといった初歩的な仕事を手伝った。幸い創業者の野島氏が資産家で立ち上げ資金の心配がなかったのでベンチャーとしては暢気なスタートだった。

ところが8月に入り、これから営業体制を作り上げようとする時期に、海外出張帰りの野島社長がコロナウイルスに感染し10月まで職場復帰できず営業体制整備が大幅に遅れた。とりあえず営業は社長と私で役割分担して双方の得意分野へのトップ営業をすすめることとした。私の人脈ではみずほR&Tや日経新聞との接点ができた。野島社長も起業者仲間の人脈を持って広告業界などへの営業で実績を上げた。また人材確保においては社長と二人三脚で一本釣り方式で優秀な人材のリクルートを始めた。ベンチャー企業を上場させた経験を持つ知人を誘い管理部門の要となってもらい、営業部門では営業力に定評のあった銀行の後輩を誘い業務委託した。

営業戦略としては知名度や信用力を補うため有力企業との業務提携を画策し、DFで支援中のTBM社と脱炭素社会の実現に向けた業務提携にこぎつけた。8/31~9/2に幕張メッセで開催された第2回脱炭素EXPOではTBM社のブースで当社も提携先として紹介してもらった。

当社の特長は企業の脱炭素化のプロデューサーとして、①情報提供、②排出量測定、③削減目標設定支援(SBT認証取得)、④効果的な削減策提案、⑤クレジットを活用したカーボンニュートラル達成の5段階にわたるサービスをワンストップで行える体制を確立している点である。社員はまだ10人程度だが若く、国籍も多様性に富んでおりバイリンガル社員も多くオフィス内では英語や中国語が飛び交っている。野島社長は40代と若いが頭脳明晰で知識も豊富な上に決断も早い、私は古稀で業界知識も業界ネットワークも社長には及ばないがこれまで中小企業の経営経験の中での修羅場経験、シニアの知恵があると自負している。二人の共通の趣味はゴルフで、カレドニアンの会員。HCは10と11で私が優位、まだまだ若者に負けるわけにはいかない。公私で一年間付き合って信頼関係も高まり、社長の相談相手となることを求められ9月からCSO (Chief Strategy Officer) という肩書をもらい渋谷のオフィスに週2日出社勤務することになった。

社長のトップ営業に同行した際は社長プレゼン後もっともらしいコメントを添えるよう心掛けている。その為には70の手習いで業界用語や最新情報入手が欠かせない。これは 「Life Shift*2」で触れられているリ・クリエーション(再創造)のようなもので脳トレとして健康寿命を延ばすよい訓練だと思っている。

私のキャリアは51歳までは銀行、50代はアウトソーシング企業と化学製品製造メーカー、60代は調査業務(ミステリーショッピング)と異なる分野での不連続への挑戦で都度一から学びなおしてきた。古稀を迎えた70代は脱炭素業界の勉強をする時期だと新たなチャレンジに前向きに取り組んでいる。これまでの企業経営者としての経験やネットワークに加え、ゴルフの経験を活かし若い社長のよき友人、相談相手として「老黄忠ここにあり」の意気込みでよく遊び、良く仕事している。

  1. 日本ゼルスHP: https://www.xels.co.jp/
  2. リンダグラットン著
以上
きぐち としお(886)
(元・富士銀行)

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