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2022/6/1 (No.366)

勉強の面白さと学び 大学入学共通テストを通じて

柳 昭駒

柳 昭駒

DFに入会して3年。今回エッセイの執筆機会をいただき、私の好きな「勉強」について書いてみたい。勉強好きと言うと多くの方が訝しむが、勉強の本質は未知のものを知ること。例えば、ゴルフのパターが苦手なのでどういう打ち方が理想なのか動画を観る、興味を持った曲のアーティストの経歴を調べる。これらも広義の勉強であり、勉強とは本来楽しいものだ。

そんな勉強好きの私だが、今回、思い立って今年の大学入学共通テスト(旧センター試験、旧々共通1次)をこのタイミングで解いてみることにした。理由はいくつかあるが、所属している教育部会・授業支援の会で高校生に授業をするのに、彼らが学んでいることを知らないのはマイナスだと思ったから、等である。純粋に興味本位で解いてみたが、感想・結果をレポートしてみたい。問題を吟味したかったので、制限時間はなしとした。

① 国語(200点満点) : 138点(論説44小説30古文38漢文26)

【現役時】一番苦手科目。140点取れればOK。
【感想】小説では疑問が残る設問が散見。問題文のこの記載を考えるとこれは違う、と思うものが正解になっている。今も昔も変わらず、受験テクニックは必要そう。古文と漢文は知識が抜けたことによる失点が大きかった(当時でもあまり知識が無かったことにはあえて触れない)。

文章を読んだ生徒同士の議論過程が出題される形式が新鮮。読んで内容を理解するだけでなく、考える(想う)ことに重点が置かれている。

② 数学 1A : 91点 2B : 94点

【現役時】得点源で満点狙い。
【感想】1Aは平均点38点と過去最低で、当時ニュースにもなった。試験範囲の変更(自分の時は範囲外だった統計)で失点し、定義や解法を必死で思い出す等のつまずきもあったが、難易度は1Aも2Bも標準的。ただし、処理量が多く時間がかかる。

情報氾濫の現代において何を重視して高速で処理していくか、が重要というメッセージだと思う。

③ 日本史B : 81点

【現役時】得意で90点狙い。
【感想】当時の資料を読解する問題が難解。また、授業で習う項目や派生論点を抑えても正答が無理そうな問題もあった。

考えさせる問題が多い一方で知識が無いと正答できないバランス。昨今、考えることの重要性が喧伝されているが、「知識も重要だ」というメッセージを感じる良問だった。

④ 理科 化学 : 64点 生物 : 71点

【現役時】理科の先生を目指していたこともあり、得点源。目標は化学90点、生物85点。
【感想】試験範囲が変わっていて戸惑いつつも、計算・知識でかなり忘れていることを実感した。現役時代は脊髄反射的に解答できていたはずなのに、「これは何だったかな~」連発でややショック。問題自体は良問が多い。特に生物の「○○という説を実証するのに不適当な実験はどれか」という問題は、科学的思考が問われるとても理科らしい問題だった。

水素電池などトレンドを反映させたり、遺伝子関連の問題が多かったりで、国家として環境負荷低減やバイオ分野へ注力する、というメッセージなのかもしれない。

⑤ 英語 リーディング : 98点 リスニング : 77点

【現役時】国語に次いで苦手。受験当時(2000年)リスニングテストは無かったが、200点満点中160点取れれば十分。
【感想】リーディングは、端的に言えばTOEICの後半とほぼ同じ。発音、文法、会話問題は皆無で全てが文章読解。文章は絵を含めた説明文、案内文、ブログ記事、伝記等多岐にわたる。内容は比較的簡単な一方、文章量が多く時間が足りない。

リスニングは、問題形式も知らずに初めて解いた。情報量が多く結構難しい。講義を聞いて答える問題や、4人の会話でそれぞれの考え方・思想を問う問題など、内容面もかなりハード。

英語の問題全体を通じて、英文・会話の中で自分に必要な情報をいかに早く正確に探させるかが問われている。「英語で議論しよう」には至らず「英文記事や英語ニュースで調べよう」というところで止まっている。

挑戦の結果はこのようなものであったが、全体通じての学びをいくつかご紹介したい。

  • 基礎は一番大事

    数学で、忘れた公式を基礎から考えて導出できたというケースがあった。仕事でも勉強でも解決策がわからない未知の問題にぶつかることはあるが、その時こそ基本に立ち返る重要性を実感した。

  • 知識・経験も使える

    どうしてもわからないとき、最後は知識・経験や道理で考えるしかないが、案外これが侮れない。古文で、好色な院(上皇)が異母妹に恋慕する話が出てきたが、若い男女の考えは今も昔もこうだろうという予想(思い込み)が当たったのは面白かった。こういう捌き方こそ、人生経験だと思う。

  • 過信は禁物

    苦手な英語、難解な数学では健闘したが、自信があった理科の点数が低かった。昔の感覚・記憶が残っているから高得点取れるだろうと根拠のない自信を持っていたが、基礎的な知識が抜けている自分に失望した。やはり、現役から離れると知識はどんどん抜けていくので、「自分はできる"はず"」という自己評価は根本から変えないとダメだと反省した。

  • 体力がきつい

    テストを通じての一番の驚き。頭はついていくが身体がついていかない。1時間でも2時間でも集中力は続いたが、終わった後に、首肩腰足が痛くなる。現役時には感じなかった痛みで、身体を労わる大事さも学んだ。

以上がテストのレポートになる。頭の運動と言うと高校生に失礼だが、実際、プレッシャーがほぼない中で問題を解くのは楽しかったし、新たな再発見があったことも興味深かった。これが勉強の面白さだと思うので、思い立った読者は是非解いてみてほしい。そして、これらを全て勉強している今の高校生の努力には、本当に頭が下がる思いだった。

以上
やなぎ しょうご(1321)
(公認会計士・OLTA株式会社常勤監査役)
(企業ガバナンス部会/授業支援の会/麻雀同好会)

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