一般社団法人 ディレクトフォース

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2022/3/16 (No.361)

「食品産業から見たキャリア教育」
文部科学省教育課程課編纂「中等教育資料」投稿資料から

守屋 雅夫

守屋 雅夫

文部科学省教育課程課からの要請で同省が編纂している「中等教育資料」令和4年2月号に寄稿したキャリア教育に関する小論文をメンバーズ・エッセイとして以下に転載致します。


私は大学卒業後、キユーピー株式会社研究所に入社し、主にドレッシングの新製品開発を担当しました。その後工場の品質管理、生産ラインの構築、最後は中国に新会社を設立し、社長として経営を行い、キユーピーでの仕事を39年させていただきました。定年退職後、大学時代のクラスメートの紹介で一般社団法人ディレクトフォースに入り、技術者としての経験及び海外での新会社設立を基にした中学校・高等学校・大学等のキャリア教育をさせていただいています。本稿では、そのキャリア教育の一部を紹介させていただきます。

新製品開発は多くの部署が関係しています。テーマ承認及び発売決定をする開発会議には、経営トップ、生産、経理等多くの部署が関与します。開発テーマは、主に営業企画から多くの資料を基に出されます。それらの資料から、新製品発売に向け、営業は販売計画、利益計画等を検討します。経理は事業計画、生産は製造ライン構築の他、人員計画、作業手順の教育、品質保証体制の検討等が行われます。各部署での検討内容は多岐にわたります。仕事内容だけではなく、仕事を進める上で大切なコミュニケーションカ、リーダーシップ、組織で仕事を進めることはどのようなことかを話させていただきます。

食品は安全・安心が第一です。一つの商品に仕上げるまでにはたくさんの問題が出てきます。ときには1年以上問題が解決できず、発売時期を延期するものも出てきます。そのとき担当者は周りの人から多くの問題点の指摘を受けると同時に、その対応に苦しい思いをします。そのような中でも、「こうしたらいいかもしれないよ」といった改善提案をいただくことがあります。これらの経験で私が学んだことは「問題点を見つけることは重要だが、なぜそうなるのかを考え解決案を実行することが更に重要」だということです。学生たちには「仕事とは何か」をより具体的に学んでいただければと、事例を挙げながらお話させていただいています。

社会で直面する数々の問題には何が正解か分からないことがしばしばあります。「失敗を恐れず行動することが大切」ということを語っていますが実際には大変難しいことです。責任を追及されることへの恐れ、仲間がどう思うか気になる等の原因が考えられますが、大きな理由はこれが一番正しいという自信がもてないことにあると思います。何をもってこの判断が正しいと思うのかは、現実を前にすると大変難しい。私は「社会に出て仕事を進める上で100点の答えはない、100点と思って決断し、前に進めるのみ」と考えています。決断しないことが一番よくないことです。

一方、これでよいと判断して実行してもしばしば失敗します。しかし、失敗したときこそチャンスと言えます。なぜ失敗したのかを考え、自分なりの対策を打つ、また失敗する。これらの繰り返しの中で、仲間から、これだけやってもだめなら仕方がない、と思われるまで続ければ、信頼を得ます。「難しいが、やればできる」と思って行動することが大切です。そうすることにより、その分野の知識が深まり、仲間からその分野の専門家との評価を受けるようになり、自分の仕事の幅が更に広がってきます。

これからの社会は、ますますグローバル化するとともに即戦力となる人材が要求されてきます。会社を変えていくことも当たり前の社会になるでしょう。キャリアを積んだ専門家としての人材が必要とされる時代です。仕事そのものも大きく変化していくものと思います。また、自分がやりたい仕事も時代とともに変わります。そこで大切なことは幅広い知識です。中学校・高等学校時代は全ての教科を学びます。大きく変化する時代に生きる学生たちには将来活躍していく可能性を広げるためにも、全ての教科を学ぶことが大切です。

私自身もキャリア教育を通し、多くのことを学ばせていただきました。これからも我々の仲間とともに感謝を込めてこの役割を果たしていきたいと思います。

以上
もりや まさお (520)
(元・キユーピー)

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