
2021/12/16(No.355)
ーー 役所勤め10年間の独り言 ー “地方創生” 雑感
須藤 實

忘れもしない、2011年3月11日の東日本大震災発生で、我が故郷宮城県が大津波で甚大な被害を受けて多くの人々の命を失いました。大きな衝撃を受けた私は、何らかの復興支援活動をしなければとの思いを募らせていたところ、偶々宮城県東京事務所での復興支援補助金を活用した企業誘致担当の職を得て、それ以降本年3月末迄の10年間、企業誘致から農水産物・食材・食品の首都圏・海外市場販路開拓業務にシフトしながら、地方自治体での中小企業支援活動に一貫して従事して来ました。その中で “地方創生” について感じたことを、思い付くまま雑感として述べて参ります。
大震災前から、ふるさと納税や道州制への移行などを代表的スローガンに、“地方創生” という言葉が叫ばれていましたが、それが大震災発生でいつの間にか地方創生が復興支援と混然一体化して、“復興支援” が優先課題となり、“地方創生”いう言葉自体が色褪せてしまいました。また、大震災発生直後は、産官学の見識ある方々が、今こそ道州制施行のチャンスとの声を大きく上げていましたが、それもいつの間にか消え失せてしまいました。
そもそも首都圏への人口一極集中を避けるために、地方分散が推進され、本社・開発研究所等の移転推進補助金を出しましたが、殆ど成果が上がっていません。最近のコロナ禍で在宅勤務が普及したこともあり、一定の個人的な地方への移住の動きは見えるものの、これらは一時的な現象で、首都圏への一極集中は一向に留まる兆しがありません。多額の血税をこれら補助金につぎ込んだ結果について、政府サイドの効果の検証と総括・PDCAは機能を発揮できているとは思われず、一体どうなっているのでしょうか?
更に企業誘致活動で感じたことは、各県が殆ど同じようなインセンテイブ(奨励金・固定資産税免除等)を用意して、企業への誘致活動を未だに続けていることです。仮に道州制が施行されていれば、国としての全体的最適化の見地から、県単位よりも大きな括りで効率的な企業立地が可能となるだろうし、逆に、昨今のボーダーレス化・グローバル経済化が進む中で、県単位での施策では非効率で競争力を失うことは必至。先ずはオールジャパンの立場から産業の全体最適配置を議論すべきと、分不相応で無駄な抵抗とは思いながらも、言い続けてきました。更に県単位の小さな予算を大規模な予算に編成替えして、ダイナミックな企業誘致の実現が可能であるとも主張してきました。然し、地方役人は、永年の習性で殆ど思考停止状態に陥っており、現状維持に固執するのが精一杯のようでした。
企業誘致活動は経産省が主管ですが、関係省庁との調整が複雑過ぎて、物凄い時間とエネルギーが必要で、これは我々民間人の想像を遥かに超えています。何故なら国・省庁の縦割り行政は、そのまま地方自治体にも当てはまり、例えば、農政部と商工観光労働部の連携は殆どなされておらず、毎年個別予算で類似した案件に動いているのが実態で、この状況は10年間何も変わっていません。
農水産物・食材・食品販路開拓活動では、政府の農業政策が矛盾だらけの失政を未だに続けていることに唖然とする日々でした。長期に亘る自民党政権下では、農林水産業が大きな票田であることから、補助金行政が深く根付いています。その代表格が “コメ(米)” で、未だに多くの農業従事者は「補助金が付いて当り前」の感覚が日常的に身に付いています。その典型的な例が米価維持政策に端を発した「減反」「飼料米転換」「六次産業化」で、少子高齢化や後継者不足による耕作放棄地の急増や、更に食品自給率の低下、食品ロスの急増等々の問題で、将来展望と一貫性のない目先だけの対策を追いかけてきた結果、政府の農業政策は、最早手の施しようもない程に重症化してきています。
東北コメ農家出身の自分としては、この歳になっての気付きに、恥ずかしながら自己嫌悪に陥っています。この国の農業について、政府はどのような将来図を描いているのか?飽食に慣れ切った日本人の食料自給率の低下をどうするのか?等々、心配したらキリがないほど、農林水産業の行く末、
「世界の構造変化と日本の対応(平成30年5月)」(経済産業省)
最後になりましたが、役所・役人(中央・地方問わず)の社会的使命感が非常に乏しいこと、税金の無駄遣いが後を絶たないこと、縦割り行政が一向に改善されないこと、少子高齢化・人口減少が止まらないこと、労働生産人口の減少・不足、高齢者や女性・外国人の雇用が進まないこと、民間企業の農業分野新規参入制限等岩盤規制の緩和が進まないこと等、多くの課題・問題が山積で、気持ちが落ち込みます。
それでも毎日明るく、楽しく、おかしく、面白く元気で過ごそうと願っています。With Corona、After Coronaで、日本のみならず、世界には様々な意見や情報が流されていますが、第6波が襲ってきても、今度は医療施設も万全で、「課題解決先進国日本」として、世界にその範を示せるように、DF会員の皆様と共に自覚と誇りを持って、我が人生100年時代に向けて、Active Senior として、いつまでも元気で活動したいと夢見ています。![]()
すどう みのる(545)
元丸紅・アサヒビール