サイト内検索 powered by Google

一般社団法人 ディレクトフォース

タイトルイメージ

 2021/11/1(No.352)

「STOP! アンコンシャス・バイアス」

ーー  次世代のために、私たちにできること

永合由美子

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という言葉をご存じだろうか?

私も、およその意味は理解していて、「誰にでもある、ある意味の必要悪」と思っていたが、2019年セミナーに参加し、“ステレオタイプの科学”(クロード・スティール著)を読んで、改めて痛烈な危機感を覚えた。

次世代の可能性を狭めることは絶対に避けたい、そう考えて活動中だ。

アンコンシャス・バイアスが、数学が苦手な女性をつくる?

「女性は数学が苦手」何となく、そんな気がする方は多いだろう。実験結果を見てほしい(*)。

Stereotype Threat and Women’s Math Performance

Steven J. Spencer, Claude M. Steele and Diane M. Quinn(1999)
Journal of Experimental Social Psychology

難しい数学の問題を解く際に、「男女で差がある問題」と事前に言われるかどうかで、回答スコアに大きな差が出ることが分かった。事前情報によるストレスで脳内のワーキングメモリの一部が使われてしまい、本来発揮できるはずの能力が発揮できない。1回のテストでもこの結果なのだ。繰り返し小学生や中学生時代に刷り込まれたとしたら、どうだろう?生来の能力が埋もれてしまう可能性も大きい。「女性が数学が苦手」になってしまうのは、ゆがめられた結果、アンコンシャス・バイアスのもたらす影響だと言えるのでは?だとしたら、そんなことしちゃいけない。

(*)ステレオタイプ脅威実験の再現性の問題が指摘されていますが、「リスク」として考えるべきと認識しています。

アンコンシャス・バイアスは克服できる

米国でのブラインドオーディションの導入で、オーケストラの構成員が劇的に変化した事例もある。審査員も公正を期していたはずの入団試験で、アンコンシャス・バイアスが影響し、黒人や女性が選ばれにくくなっていた。解決に向けた施策は実に簡単。スクリーンをたてて、誰が演奏しているのかを見えなくしただけだ。20%だった女性比率は40%へと増加したという。

2003年のハワード・ハイジ実験も紹介したい。同じ経歴・能力の人物について、その下で働きたいかを問う質問に、男性名のハワード氏と女性名のハイジ氏で、回答は全く異なった。大学生はハワード氏には好感を持ったが、ハイジ氏は敬遠された。しかしその後、時代の変化とともに回答は変化した。2013年、米国ではむしろ女性起業家が上司として好ましいとするアンケート結果も得られ、こうしたバイアスは修正可能であることが示唆される。そう、バイアスは修正可能なのだ。

なぜ、アンコンシャス・バイアスが存在するのか?

私たちの脳の思考には、2つのシステムが存在すると、ダニエル・カーネマンはその著書ファスト&スローで説く。システム1は衝動的・直感的で速い思考、システム2は論理的だが遅い思考でなまけものだ。私たちは論理的に考えているつもりでも、実は膨大な情報量のごく一部しか意識しておらず、ほとんどは直感的に処理している。日常のできごとは、アンコンシャス・バイアスのおかげで無意識に迅速に優先順位がつけられる。毎日を効率的に過ごすためには、アンコンシャス・バイアスは必要とも言える。

自分のアンコンシャス・バイアスを知る

一方で、アンコンシャス・バイアスは特にマイノリティに不利に働きがちだ。多様な人材の、多様な才能を認め、尊敬しあうことがこれからの社会には欠かせない。どのようにアプローチするか?
まずは、自分の持つバイアスに気づくところがスタートだ。IAT(Implicit Association Test)が、ハーバード大学や特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会のサイトで無料で経験できる。自分の思い込み、アンコンシャス・バイアスを知り、自分の脳のシステムをマネジメントする。自分の偏見を知ることから始めたい。

STOP! アンコンシャス・バイアスの再生産

しかし、成人のアンコンシャス・バイアスを取り除くのは正直かなり困難。それよりも、次世代に向けて、アンコンシャス・バイアスの再生産をしないことを考えたい。「男らしさ、女らしさ」、LGBTQ+、今おもちゃの世界、広告表現の世界でもジェンダーフリーや多様性を配慮した動きが注目される。子供に向けて、孫に向けて、次世代を担う若手への声掛けやアクションにちょっとした心配りをすることなら、私たちにもできそうだ。「男の子だから‥‥ 」「女の子なのに‥‥ 」と、口にする前にちょっと立ち止まる。小さな一歩だが、確実に社会を変える原動力になると信じている。

理工系を進路選択肢にいれてもらうための ”女子中高生夏の学校“

https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html

 

日本のジェンダーギャップ指数は120位、先進国中では最下位だ。順位だけでなく、諸外国に比べて、スコアが変化していないことが問題と認識している。また、私も学んだ工学部の女子学生比率は、いまも15%と低く、まだまだ女性はマイノリティだ。親や先生の影響も大きく、ロールモデル不在が原因ともいわれる。私たちは、この状況を少しでも変えるための活動をこの15年継続している。

副代表を務めるNPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクトでは、毎年100人の女子中高生を全国から集め、実験やキャリア相談、ワークショップなどのサマーキャンプを実施する。

2021年も40の学協会や企業のサポートを受け、オンラインで開催した。参加者それぞれが自分のやりたいことを見つけ、自分の人生の航海を楽しめるように。若者の可能性を広げるのは大人の役目。サポーターは常時募集中だ。

次世代のために、ひとりひとりにできること。身近なところから明日を変えるチャレンジに、皆さんと一緒に取り組みたい。エンドマーク

なごうゆみこ(1335)
100歳社会総合研究所 元ライオン

一般社団法人 ディレクトフォース 〒105-0004 東京都 港区新橋1丁目16番4りそな新橋ビル7F

e-mail : info@directforce.org | Phone : 03-6693-8020 | (C) 2011 DIRECTFORCE

アクセスマップ