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一般社団法人 ディレクトフォース

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2015/06/16(No199)

人みな我が師

小滝 邦宏

筆者

今や6百名余のメンバーを擁するDF事務局並びに同志の並々ならぬ日頃のご尽力に、心より敬意を表します。社会貢献を理念とされる水野初代理事長が掲げます趣意に、微力ながらも思うところあり'02年の発足時に会員No.16で入会させて頂きました。しかし、亘間、東証1部某企業の役員を仰せつかり、平素は多忙に紛れてDF活動は疎かになっており、恐縮しています。最前線をリタイアしましたら、お返ししょうと先々に胸を躍らせています。

私事、昨夏の肺がん手術で大変お世話になった入院先の看護師さんに触発され「自分の事より頼まれた事を優先する」mode へと、自らをリセットしました。本年6回目の年男を迎え、もはや出産と盗人以外は概ね体験済みと思いきや、実は手術と闘病生活も初の経験でした。幸いにも都内T病院の名医に巡り合い、先端医学の胸腔鏡下手術を施して頂き2/3の肺を摘出、リンパ節の一部も失いましたものの、お陰で手術は成功!至極懇切で懸命にサポート頂いたスタッフ、縁戚や友人、仕事仲間等々、本当に多くの方々に支えられ、転移もなく命拾いできました。今更ながらと恥ずかしく思いますが、突っ張り&マイウエイ人生を歩んできた私には、人の尊厳や傷み、優しさを体感でき、学んだコトや感化されたコト等、失ったモノより遥かに多くのモノを得たと、今では闘病生活に感謝すらしています。それにしても時間を厭わない執刀クルーの Dr. そして深夜を問わず寝食を忘れたかの様に、身内並みの献身的なケアをしてくれた看護師さんには、心底から頭が下がりました。

「どうしてここまで親身な看護ができるのですか」と聞いてみますと「私たちが平和で不自由なく、こうして過ごせるのは、多くの苦労と努力をして頑張ってくれた先人達のお陰です。挺して今日の日本を築いてくれたと思うと、尽くしても尽くし切れません」 と衒(てら)いも気負いもなく応えられる。極く自然体なところに凄さを感じました。身を粉にして相手に尽くし捲って唸らせ、心の琴線に触れる。斯様な日本の DNA を誇りに思うと共に、看護師さんに感動を覚え、感服して磁石のように惹きつけられました。やヽ不遜乍ら、営業の基本型であり理想型でもあり、孫子が説かれる "戦わずして勝つ" 本質に触れた思いで、徳の示唆を得ました。 感謝!

未だ合併症やら後遺症の加療をしており、ビジネスとケアの半々生活を余儀なくされている身であります。癌リハビリは確立されておらず、手探り状態であることも判りました。手術は他力:ケアは自力です。克服してこそ全快‥‥頼まれごとを遂行できる心身を鍛えることが先決と、術後以降、悩まされている消化器系の蠕動不全や嚥下障害等の合併症&後遺症と現在も戦いが続いています。    

節から芽が出る

20代の後半(昭和40年代中盤)に携わった岩手県雫石町における大規模地域開発プロジェクトでは、自然保護団体の専門委員や有識者を向こうに回し、田中角栄閣下が推進する列島改造論を味方に、先人の方々にも聞く耳も持たず "ブナ林や岳樺を保護するより、ご当地にとっては雇用も創出できる地域開発が優先!" と対談を組まれたテレビ全国番組で、硬派な持論を捲し立てて対抗する有様。さぞや気張った嫌な若者に映ったことと述懐します。結局は自然林を伐採して、ゲレンデやリフト敷、大駐車場を造成したりホテルの建設をしたり、大きなハゲ山を造ってしまいました。もっと自然と調和ができたのにも拘らず、若気の至りで当方都合をゴリ押しし、ビジネス優先で断行してしまったのです。そのタタリで禿げてしまったのかも(笑)

ハゲ山を造った頃の高度成長期‥‥ その後も多くの地域開発や建設プロジェクトを指揮してまいりました。重ねるごとに気付かされたのは ➀ 大義と目的を明確にし ② 公と大局に立脚した信念と使命感が着眼の大綱であり、着手には ③ ステークホルダーへの気配りと調和 ④ 周囲への感謝心をベースとした遣り抜く執念等が、成就へのパスポートであり、高みを目指すプロセスでもあると認識を新たに積み上げ、上塗りしました〜物不足を生じたオイルショックを経て〜プラザ合意後の急激な円高ドル安の進行に拠る円高不況〜産業の空洞化‥‥委細は割愛しますが、ならではの出会いや学びの数々から、大小の節も出来たと述懐します〜低金利政策に端を発し、1987年から始まった空前のバブル経済〜弾けた後の平成不況に伴うリストラクチャリング‥‥自らも役付き役員として断腸の思いで敢行した民事再生も、前職で体験しました〜負債総額、約6000億ドル(約64兆円)という史上最大の倒産により世界連鎖的な金融危機を招き、未曾有の不況に陥ったリーマンショック‥‥まるで南極で氷を売り歩くほど超厳しく、正にお客様不在だった事も記憶に新しいところです。

人生における困難や逆境、苦節、伸るか反るかの大場面をそこから逃げることなく対峙した時には、障壁ではなく、扉を開けるが如く窮すれば通じ、やがて大きな節を造り、そこから新たな芽が出るのではないでしょうか。僭越ですが、逆境それは天が与えてくれた進化・発展のための有難い試練であると思料されます。更には、人生における山あり谷ありの行路、そして出会う人は、みな師であると省みます。

推定樹齢50年、株立ちの樫の木

「節から芽が出る」真直ぐ伸びる竹でも樹木でも節から新しい芽が吹いて枝となり、その先に蕾を付け、やがて花が咲きます。前述の闘病生活も然り、節造りの契機となりそうです。私の何倍もの節を造られ、乗り越えられた胆識に富んだメンバー諸姉諸兄も多いことと察しますが、ご教示下さいませ。

気が付けば格好の樹洞(じゅどう)が、ご主人に断りもなく四十雀の住処になって、庭先に落下する糞害に憤慨しています(笑)。

不肖ながら学卒来、社会に出て半世紀に喃々と‥‥ここは憤慨することなく、報恩が眼目であり第2のテーマです。

報恩謝徳

人生論の名著と云われている「菜根譚」‥‥学生時代からの愛読書のひとつですが、一貫しているのは ① 利己抑制の美しさであり ② 閑中の忙、対する忙中の閑という様な、相反する考えを併せ持つバランス感覚など、人間における「品位や美徳」の示唆に富んだ素晴らしい書だと思います。著者の洪自誠翁は、善き人物とは "人と作りて甚だ高遠の事業なきも、俗情を排脱し得ば、即ち名流に入らん" と説かれています。見識があり、手腕もあって、高遠な事を成し遂げる人は、勿論第一級の人物である。しかし、それほどの秀でた事業の成功がなくても、名聞利欲の俗情を除き去った人であれば、その人は既に一流の域に入った人であると自己解釈しています。

世話になった社会にどうお返しするか?「報恩謝徳」とは、恩に感謝し報いることですが、その深く意味することは、恩に報いるのではなく、受けた恩徳に対して如何ともしがたい感謝の気持ちがフツフツと湧き出し、どうしても報いたくなる邪心や欲情なき無私の領域であろうと自らを諭しています。

然らば、財界人いや人として尊敬する現奉職先の堀口オーナーへの恩返しは元より、愈々、社会と後進のために、利欲と邪念から解脱して少しでも無意識レベルの滅私領域に近づけられるよう、自身が精進を重ねて同志共々に実践する所存です。

「山のあなたの空遠く、幸い住むと人は言う‥‥」ご存知カール・ブッセの有名な詩の出だしですが、人は凡そ、もっと欲しい、未だ足りないと徒らに幸福を外や遠くに求めてしまうのかも知れません。ココでなく山の向こうに幸せを求めても叶わないと自らを戒めます。能力の差はせいぜい2倍か3倍程度ですが、心意気や意識の差は何と10倍にも100倍にもなりますし、これは自分の意志で決められる世界ですから本人次第です。時に怠惰や享楽主義の人を諭します。実は真の幸福は、自分の心に内在しており、況や滅私の領域を拡げるには、今とココを大事にして何事にも真剣に一生懸命生きることだと思います。DFメンバーの皆々様、どうぞご高誼のほど宜しくお願い申し上げます。マーク

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