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2015/01/16(No189)

赤坂界隈の歴史探訪記

白井 憲治

筆者2014年晩秋の或る日、赤坂界隈を趣味の「江戸の町探訪」の為に訪れた。

赤坂は江戸時代、昨年の大河ドラマでお馴染みの官兵衛が藩祖の黒田藩邸が有った。今や、往時の面影は無く、その跡地は衆議院宿舎や赤坂ツインタワーに変貌。その一角に、16代目のご当主も在住。官兵衛生誕の地の「姫路お城祭」には、ご当主も官兵衛に扮して騎馬で行列に参加。因みにご当主の趣味は乗馬でなく、ハーレイだそうです。

江戸時代末、勝海舟は赤坂の黒田藩邸に住む蘭学者永井青崖に弟子入りし、本所から赤坂田町の貧乏長屋に転居して蘭学を勉学。勝の妻民子は、深川で評判の美人芸者、客の海舟と恋仲になり結婚。2人は、赤貧洗うがごとき生活だったが、冗談を言い合う明るい夫婦だった。天井板を薪代わりに燃やしてしまい、勝「天井板の薪が無くて、冬は寒かろうな!」民子「天井板が無くても大丈夫!お釈迦様も仰っています。天井天下唯我独尊」

晩年の勝の口癖「人間、苦労して勉学や仕事に励むと、天が助けてくれるものだよ」。

勝が、蘭学修行中に古本屋で蘭和辞書「ドウーフ・ハルマ」を見つけ「幾らだ」と聞くと「60両」。現在価値で7〜800万円で貧乏御家人に買えるはずは無く、仕方なく毎日立読み。立読みを嫌な顔一つせず許した古本屋は更に函館の本好きの豪商渋田利右衛門を紹介。渋田は、ぽんと200両を出し「これで好きな本を買って読んだら函館へ送っておくれ」。

海舟邸(幕臣時代) 氷川神社(銀杏)

そればかりか、自分が死ぬと後援者が居ないと困るだろうと灘の造酒屋加納治右衛門(講道館の加納治五郎の父)を紹介。加納は、後に勝が神戸で海軍塾を開いた時に多額の資金を援助。幕臣として栄進した勝は、やがて貧乏長屋から氷川神社近くの一軒家に転居。「勝はけしからん」と暗殺の為に、この家を訪れた坂本龍馬は諭され門弟へ。その家は多くの門弟を教えるには手狭で、氷川神社の銀杏の木の下でよく講義。

維新後、伯爵となった勝は、氷川神社の東側に豪邸を構え、終の棲家とした。勝邸は、その後氷川小学校となったが、今は廃校となり石碑がぽつんと立つ。

勝邸(元氷川小跡) 氷川神社(本殿)

「氷川清話」でも有名な赤坂氷川神社は大宮の武蔵野国一宮の氷川神社を本社とし関東を中心に261社ある末社の一つ。

氷川神社(浅野邸跡)

氷川神社の祭神はスサノウ尊、奇稲田姫命(クシナダヒメノミコト・スサノウ尊の妻)大己貴命 (オオナムチノミコト・大国主命)で、出雲族が関東に移り住んだ証。「氷川」の名は、出雲の簸川(ひかわ・今の斐伊川)の名に因む。荒川を簸川に見立て、畏敬の念をもって信仰していたと考えられる。赤坂氷川神社は八代将軍吉宗公がスサノウ尊の勇猛果敢を尊び一ツ木から現在の赤坂に遷宮し、その時に造営された社殿が現存。

この神社の敷地は、元は安芸浅野家の分家三次浅野家3万石の中屋敷。赤穂藩浅野長矩(内匠頭)の正室阿久利(夫の死後、落飾して瑤泉院)の実家が、ここ三次藩中屋敷で、刃傷事件以降はここで余生を送る。持参金としての手元金694両を大石内蔵助に託し、お家再興と仇討を支援。大石内蔵助や浪士の執念だけでは成し得なかった仇討でもあった。

忠臣蔵の中でも「南部坂雪の別れ」は最大の見せ場の一つ。

内蔵助は討ち入り前日の朝、降りしきる雪の中、南部坂の瑤泉院を訪ね、明朝の討ち入りを伝え、君主の霊前にも報告し連判状を渡そうとした。

南部坂

しかし侍女に上野介の密偵が居る事に気付いた内蔵助は「西国のさる大名に仕官が決まり、長のお別れに参りました」と断腸の思いで咄嗟の嘘。忘恩をとがめる瑤泉院のののしりに耐え、無言で永遠のいとまを告げて立ち去る。無人の門前に深々と一礼し、南部坂の降り積もる雪の中に消え入る内蔵助。この名場面の舞台となった南部坂や赤穂藩中屋敷は今や米国大使館職員宿舎で異国の言葉が飛び交う、忠臣蔵とは全く違う別世界となり果てて残念。

我が田舎は播州姫路、子供の頃は討入の日から250年も経っていたが赤穂浪士を顕彰して、夜には小学生が集まり試胆会を連綿と開催。社会人に成り、播州一円の友人に聞くと皆さん、同じだったことを知り感無量。

遅いランチを南部坂の「津の井」で摂りながら、日本人とは何かを考えさせられた。マーク

以上

しらい のりはる  ディレクトフォース会員(1037)
 (元ダイエー ローソン  デイリーヤマザキ)

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