2014/11/16(No185)
山之内憲夫
数ある世界中のエアショーの中でも伝統のあるものは、偶数年7月にロンドン近郊のファンボローで行われるものと、奇数年6月にパリ郊外のルブルジェ飛行場で行われるものの2つです。
これらのエアショーは、冷戦終結前は、ソ連製の新鋭機を間近で見られる唯一の機会でしたし、最新型戦闘機の宣伝の場として有名でした。ベルギー等のNATO4ヶ国の次期戦闘機を、フランスのミラージュF1と激しく争っていた米国のF-16が、1975年のパリエアショーの初日に、米国国旗の3色で派手に塗装して米国から直接飛来し、その雄姿をアピールした話は有名です。地味な迷彩色塗装のミラージュは、その夜、機体を工場に持ち帰って、急遽、同じような明るい塗装に変更し、翌日に派手な飛行を披露するという対抗策を講じました。この塗装が決め手になったわけではないと思いますが、そのエアショー会場で、後日、F-16の正式採用が発表されました。
冷戦終結後も、最新型戦闘機の披露は続いていますが、エアショーの関心は、民間機に移っているようです。ボーイングやエアバスのような民間機メーカーは、地上展示や飛行展示だけでなく、「シャレー」と呼ばれるカストマー接待用の設備を会場内に持ち、エアライン幹部等のVIPカストマーを歓待しています。エアショーそのものが民間機の商談の場になることはありませんが、エアショーは、民間機メーカーにとって商談成立を発表する最高の機会です。今年のファンボローエアショーでは、ボーイング201機、エアバス496機の販売成約が発表されました。
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エアショーの楽しみの1つは、戦闘機も含めて新しい飛行機を見ることですが、今年のファンボローエアショーは、期待されていたF-35が開発遅れの影響でお目見えしなかったために、エアバスA350以外に目新しい飛行機がなく、少し失望したエアショーでした。
私にとってエアショーは、1年に1度、世界中の古い友達に会える数少ない機会です。もう、来年のパリでは誰に会えるかなと心待ちにしています。
やまのうちのりお ディレクトフォース会員(会員No.791)
オライオンネットワーク 元三菱重工 日本航空機製造 エアバスジャパン