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(2016年2月28日掲載 )

第160回 講演・交流会(2016年2月例会 )

テーマ:「震災から5年を経た南相馬市」

講 師:桜井勝延氏(福島県南相馬市市長)

講師講演に先立ち、理科実験グループの萩原秀留会員より、同グループが毎年福島県南相馬市で開催している理科実験のご縁で同市市長の桜井勝延氏にご講演を御願いするに至った過程のご紹介がありました。

講演は「震災から5年を経た南相馬市」というテーマで、福島県南相馬市市長の桜井勝延氏(写真右)にお願いしてマスメディアでは一切取り上げられなかった、被災地の最前線で必死に復興に取り組む活動をお伺いすることが出来ました。

今回の桜井市長のお話しはとても感動的で、このレポートで桜井市長の熱意・熱気を正確にお伝えできないことがもどかしく感じます。是非とも、講演・交流会にご参加いただき講師の熱意・熱気を感じていただくことをお勧めいたします。

以下、講演の概要です。

◇ ◇ ◇

震災発生から現在まで

(画像クリック⇒拡大 以下同じ)
南相馬市と福島原発

震災発生日の朝からのエピソードの紹介の後、水素爆発の発生、それに続く避難勧告の発布となんら情報もなく想像もできない中での市長の決断、市職員の方々への説得、その後の市職員の方々のご苦労話、また、人のつながりで難局を乗り切ることができたことの感謝の言葉がありました。

特筆すべきは、近隣の8町村では震災前に76,000人であった住民が、まだ5,000人までにしか回復していませんが、同市では震災前に71,500人の住民が、避難場所より帰還し現在61,500人に回復したことです。理由の一つとして、25キロ圏にあった南相馬市役所を避難させないと宣言したことで、この決断に共鳴した東北電力相双営業所長が、停電のない電力を供給してくれたこと、また市職員自らが破損した水道管の修理をしたことで電気と水を確保できたことで持ちこたえることができ、市役所機能の求心力を保つことができたことにあります。

この間病院の医師は診療活動ではなく、避難所で健康対策にあたり、看護師は全国に分散した避難所での南相馬市民とそれ以外の市民の健康管理を実施しました。結果として120名を派遣しました。

今後の南相馬市について

2015年
「相馬野馬追」のポスター

避難対策が一段落した後には、市長としては、原発事故を乗り越えてこれからの展望を示し鼓舞しなければならない、素敵な素晴らしい街づくりをしていかなければならないと考えています。

改めて我々は1000年以上の伝統のある相馬野馬追(そうまのまおい―福島県相馬市中村地区を初めとする同県浜通り北部-旧相馬氏領。藩政下では中村藩-で行われる、馬を追う神事および祭りである。神事に関しては1952年、国の重要無形民俗文化財に指定されている。東北地方の夏祭りのさきがけと見なされ、東北六大祭りの1つとして紹介される場合もある)を受け継いできてどんな事があっても怯まない歴史と誇りと使命感のある侍魂を持っていることを再認識しました。

現在我々は南相馬市のみならず、被災にあった双葉地区一帯を再興するため存在しているという自覚をもっています。

相馬中村藩は天明、天保の飢饉で三分の一まで領民が減ったが、一向宗門徒を加賀藩から移民として受け入れるという大胆な政策をとって復興させた実績があります。

新しい人材を育てる施策とは外からの援助の受け入れと、一般財源で無償の保育園を設立です。

南相馬市として、霞が関に市の出直しをしたいということで現状を伝え続けた結果、教育・農業分野で立て直すことができるようになりました。例えば、農協がしない農業後継者育成のための農業就労チャレンジ塾を市の主導での開催、若者対象の南相馬市未来造塾の開催などです。

また、保育園に関しては、現在90人の待機者がいるという状態です。つまり新生児が増加していることを示しています。30キロ圏内では震災から5年経ち、一時30%まで減少した子供たちが70%戻って来ています。そして、子供たちは各地から支援を受けて、遭難した友人の分も頑張ろうという気概が出来ています。若い人には時間があるのでチャレンジすることが出来、素晴らしいと感じています。

戦争直後、国を立てなおすのは自分たちだという気概を持った若者が現れたように、ここでは大震災後、多くの若い人たちが『自分たちが立て直すのだ』という気持ちを持ち始めています。
若い人たちに負けないように市としては新しい産業の誘致ということに挑戦しています。原発の被害にあった自治体なので原発に依存しない産業を考えています。例えばロボット、太陽光発電、太陽光発電を利用した植物工場などです。

 

桜井市長のお話しの一部(YOUTUBE 限定公開 1分30秒)

終わりに

自分は農業の出身なので農家が自信をもって農業が出来る環境をつくることを目的としていきたいと考えています。大学卒業後27年間、汗まみれ泥まみれで農業と格闘してきました。そして消費者に直接安全な農産物を届けようと産直の販売等農協が出来ないことを試みていました。そのようななか、自分の知らないところで産業廃棄物処分場の建設の話を聞き、だれが食の安全に責任を持つのかということで市民運動を展開し、その結果政治の世界に足を踏み入れることになってしまいました。

産業廃棄物場建設の問題では様々な試練に立たされました。その中でお金では自分の生活や自分の生き方を左右されることはないという信念で戦ってきました。除染では莫大な金額が動いています。賠償金をもらうと働かなくなる人が出てきます。完全賠償がすむまで、解除するなという人もいます。しかし自分は人間の尊厳は何なのか、何のために生きているのかを自問自答しています。

講演会の様子
熱気あふれるお話をにこやかにされた桜井市長
講演会の様子
講演後の懇談会で沢山の方とお話しを交わされた桜井市長
講演会の様子
講演後の懇談会で沢山の方とお話しを交わされた桜井市長
熱い想いでお話しをされる桜井市長 講演後の懇談会で沢山の方とお話しを交わされた桜井市長

今身の回りに、震災で打ちのめされた人もいますが、果敢に復興に挑戦している人もいます。多くの子供たちは置かれた環境を受け入れ、今何をしなければならないかを考えています。

放射線被害を恐れている人をみます。津波で命をなくした人たちから見ると、命があるだけで幸せではないでしょうか。命がある限り感謝して挑戦すべきではないでしょうかと常々訴えています。

しかし、お金を積まれると楽をしたいという人がいます。お金を手に入れると働かなくなる人がいます。お金は手段でしかありません。手段に取り込まれてどうするのですかと言いたいです。自分が先達からもらった命を燃やすことによって幸せ感を持って皆とその感覚を共有することによっていい国やいい地方にしようではないかと訴えて続けています。その源泉は相馬がその歴史を持っているからです。この国を本当にいい国であるようにしたいと震災を経験して強く感じるようになりました。そして今後引き続き子供たちにご支援をいただきたい。

(森川紀一記)

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