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( 2018年7月18日 掲載 )

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2018年7月 講演・交流会(179回)

テーマ:『これからの時代を生き抜く健康管理法、血管年齢を若返らせよう』

講 師:高沢 謙二 氏(東京医科大学名誉教授)

 

伊藤 数子 氏2018年7月12日(木)15時から学士会館にて84名という多くの参加者の下、第179回講演・交流会が開催されました。

演題は「これからの時代を生き抜く健康管理法、血管年齢を若返らせよう!」という会員にとって関心の高いテーマでした。

高沢 謙二 氏のご経歴

講師の高沢謙二氏は、1952年生まれ。浦和高校、東京医科大学卒業。

現在、東京医科大学名誉教授、東京医科大学病院健診予防医学センター特任教授。北京大学医学部客員教授。国際血管健康学会(ISVH)理事、日本臨床生理学会理事、日本循環器学会専門医、日本高血圧学会専門医、日本総合健診医学会審議員、日本医師会認定産業医、等多数の要職についています。また、TVの医学、健康番組でもお馴染みかと思います。

講演内容は以下の通りです。

◇ ◇ ◇

心筋梗塞はどうして起こるのか

  1. 血管年齢とは
    1998年に米国に出したという論文の「Vascular Aging」が複数のTV番組で紹介され「血管年齢」という言葉が使われ始めた。血管年齢とは、血管の硬さを年齢で表したもので、血管年齢が高くなると、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが高まります。
  2. 狭心症は90%以上の狭窄でなければ起こりません講演会の様子
    狭心症とは急に運動したような時に胸が痛む症状をいいます。血管のプラーク(狭窄)により90%以上塞がっている状態の時に、心臓に血液を送っている冠動脈の血流を増加させる冠予備能(通常の3〜5倍の血流を増やす機能)の作用時に、発症します。逆に言えば、それほどの狭窄状態でないと発症しないということです。
  3. 急性心筋梗塞は25%の狭窄でも起こります
    血管中にできるプラークとはLDL(悪玉)コレステロールを主体とした瘤のことです。そして、この瘤が破裂して血栓が血管を塞ぎ、心臓に血液が送ることができずに死に至るのが急性心筋梗塞です。講演会の様子
    この瘤は、外膜・中膜・内膜という血管壁のうち知覚症状のない内側(内幕)にできるために自覚症状(痛み)がありません。また、狭心症の症状が出るような狭窄状態でなくても、発症します。その為に症状は突然やってきます。「サイレントキラー」と言われる所以です。
  4. 心筋梗塞は知識で防ぐ病気です
    これまでの話で分かるように心筋梗塞は心臓の病気ではありません。血管の病気です。血管の健康状態を知ることで防ぐことができます。声なき血管の声を聞くことが大切です。
    心筋梗塞の4大因子は、高血圧脂質異常症糖尿病喫煙です。
    高血圧は内圧上昇と血管壁のストレスを、脂質異常症はLDL(悪玉)コレステロールの沈着を、糖尿病は血管壁の脆弱性や血管障害を、そして喫煙は血管攣縮、血管壁障害を起こします。
    それぞれの因子を持つ人は、持たない人に比べて各々3倍の発症確立が高くなります。つまり4大因子をすべて持つ人は持たない人に比べて(3×3×3×3=)81倍の発症確立を持つことになります。逆に一つでも危険因子を無くせば64倍発症確立を減らせます。
  5. 心筋梗塞を防ぐ診断基準は?講演会の様子
    喫煙を除いた3大因子の診断基準は、血圧は、診察室血圧140/90、家庭血圧135/85以上。脂質異常症はLDL悪玉コレステロールが140mg/dl以上そしてヘモグロビンAlc(NGSP)6.5%以上であったら要注意。定期的な健診を受けてこの値が出たら、それを痛みとして感じることです。その為に、年に1回は健診を受けて危険因子のチェックをすることが大切です。
    また、血圧は自宅でも測れますから自宅で常にチェックしましょう。この時の測り方の注意点は、排尿をしてから測ること。皮膚を詰めたいところにあてないようにタオル等を敷いて、その上に腕を載せて測ること。
  6. 塩分のとり過ぎは何故いけない、しかし‥‥
    塩分を取りすぎると、昇圧ホルモンが分泌されます。このことによって血圧が上昇します。また、血管の壁が硬くなり、柔軟性がなくなります。そして、血管内の水分が増えます。塩分の取りすぎは注意しましょう。しかし、塩分を取らないことで起こる事故もあります。熱中症で倒れる人は塩分の補給が足りないからです。
    のどが渇いたら水を飲め、汗をかいたら塩も取れ」ということです。
  7. 血管年齢が若返る5か条
    1. 食事は腹八分目を心がける講演会の様子
      血液中の悪玉コレステロールが高くなり、プラークが作られ、それが元で心筋梗塞を起こします。悪玉コレステロールの吸収を抑えれば、良いわけです。
      そこで「コレステロールを摂取しなければ良いのでは」という勘違いがありました。食べたコレステロールが血中にいくのは30%です。コレステロールの70%は肝臓で作られます。つまり、総カロリーが多ければコレステロール値が上がります。腹八分目で総カロリーを抑えることが大切です。
      また、野菜優先で食事をすること。その効用は、食物繊維が脂質の吸収を抑制します。また、血糖値の急激な上昇を抑えます。野菜には血管を若返らせるファイトケミカル、ビタミンCなどが豊富。さらに、カリウムが含まれているのでナトリウム(塩分)を体外に排出します。
      野菜優先の食事に心がけましょう。
    2. 週2回、1日20分続けて歩く
    3. よい睡眠をとる
      睡眠は、血管を開いて血液の循環を良くする。血圧を下げて安定させる。心拍数を下げて心臓に休養を与える。免疫力を高めて感染症などの病気を予防、改善しやすくなる。等の効用があります。
    4. ストレスを溜めない
      ストレスを溜めずに笑うことが良い。笑いは副交感神経の働きを活発にし、血管を開きます。血圧を下げ、心臓の負担を減らします。ストレスホルモンを抑えて血糖値を下げます。免疫力を高め、病気の発症を抑えます。逆に怒ると血管は収縮します。
    5. 禁煙に努める
      喫煙は心筋梗塞発症の危険因子の一つです。喫煙をする人はしない人に比べて3倍の発症確立を持ちます。講演会の様子
    6. 血管若返り体操
      健康の秘訣は脚にあります。
      脹脛のヒラメ静脈は血液が溜まりやすい箇所です。そこで血管若返り体操をしましょう。
      鶴ヶ島市のWebサイトにその方法が出ています。こちら を参照してください。

まとめ

人生を脅かす病気である心筋梗塞、脳卒中、等の最大の原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症という生活習慣病です。この予防に最も大切な生活習慣は、年に1度は健診を受けることです。そして、LDL(悪玉)コレステロール値140mg/dlと、ヘモグロビンAlc(NGSP)6,5%という2つの健診値に注意をしましょう。それぞれこの値より大きい場合は要注意です。

以上

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(高橋宜治・記 三納吉二・写真)