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第7回環境時事セミナー「スマートグリッド革命」

環境時事分科会は(財)地球環境財団と共催し、日経BP社・日経エコロジー編集部副編集長の金子憲治氏を講師に、表題の第7回環境時事セミナーを7月9日午後3時から青山の環境パートナーシップ会議室で開催した。小雨のぱらつくなか53名が参加して熱心に聴講した。
 低炭素時代におけるエネルギーのインフラ革命、スマートシティー構想、脱化石燃料時代の権益争い、日本版スマートグリッドをめぐる駆け引き、産業セクター間の思惑の違い、企業間の覇権争いといった多くの側面から捉えたストリー性のある講演であった。主な内容は次の通り。



[講演内容]

スマートグリッドの定義

関係機関による定義は様々であるが、太陽光発電や風力発電により増大する電力供給の変動と、電気自動車(EV)の充電等により益々増大する電力需要の変動とを、双方向通信で制御することがスマートグリッド(SMART GRID)である。

スマートグリッドの4類型

世界のスマートグリッドには、老朽化した電力網を更新する米国、急増する電力需要を充足する新興国、太陽光発電等を大量導入する日本・欧州、低炭素型都市をゼロから開発する中東・中国の4類型がある。

スマートグリッドは様々な革命である

スマートグリッドは、エネルギーインフラとITの融合、インターネット上で飛び交うエンドユーザーの電気使用情報、太陽電池・風力発電の大量導入などにより電力需給の双方が変動する。したがってデマンドレスポンス(DR)、デマンド・システム・マネジメント(DSM=需要者側の制御)が必要であり、ID番号を付したEVと家電を包含するネットワーク、コンポーネント思考からシステム思考などの側面があり、スマートグリッドは社会インフラの革命といえる。

消費者にとって何が変わるのか

消費者には、ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)によってエネルギー使用量が可視化される。すなわち、スマートメーターが時間帯別料金を、家庭用蓄電池がリアルタイム・プライシング(RTP)*による電気代の値上がり相殺を、太陽電池・燃料電池が家庭内グリッドを、インターネットが家電機器の遠隔操作、オンライン省エネをもたらす。

要素技術と標準化争いとその行方

  • 要素技術としては、スマートメーター、電力用蓄電池(系統用、家庭用)、送電系統広域管理システムなどがある。
  • 標準化争いは2009年、国際電気標準会議(IEC)にスマートグリッド専門部会が出来、日本国際標準化研究会、米国国立標準技術研究所、欧州標準化委員会などが動き出した。
  • 国際標準は、今後10年以上かけて決まるだろう。70〜80%はIECベースで決まり、残りはローカルベースとなりそう。自動車周りではEVで日本がドイツをリードしている。家庭内通信・家電通信では、Zigbee(無線)、PLC(電力線通信)、LAN、エコーネット*などが乱立している。保安線通信では現在日本がリードしているが、地産地消がインターネットを不要とするとの意見もある。携帯電話などのように、日本だけが孤立する結果にはならないだろう。

スマートものが拡大

スマートハウス(ZEH=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、スマートビル(ZEB=ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、スマートコミュニティ(EV、新都市交通、エネルギー地産地消)、スマートシティ(環境未来都市、鉄道、上下水道、都市計画)などが構想されている。
5KWH/1家の太陽光発電でZEHが可能であり、これが義務化されるであろう。

スマートシティ構想が続々

  • スマートものの拡大で触れたように、今後、エネルギーインフラに加えて、鉄道、自動車などの低炭素型の交通インフラ、水道・下水道、海水淡水化、都市開発などが構想され、都市全体にスマートものが拡大して行きそう。
  • エネルギーインフラ市場は全世界で累計100兆円ともいわれ、NRI(野村総合研究所)によれば、今後10年のアジアのインフラ投資は、エネルギー4兆ドル、通信1兆ドル、交通2.5兆ドル、水・衛生0.4兆ドルという見方もある。ジャンピング・テクノロジーを求める国々に対し、日本は自国のニーズに関わらずショールームとするスマートシティー投資が必要である。
  • 経済産業省による支援も本格化し、スマートシティのショールーム化を意識して、4地域で大規模実証テストを始める。(横浜市、愛知県豊田市、京都府のけいはんな学研都市、北九州市)。

産業セクター間の主導権争い

  • 産業セクター間では、電力業界 vs IT業界(需要家情報を誰が取り込むか)、電力業界 vs 電機業界(スマートメーター、蓄電池は誰が担うか)、家電メーカー vs ハウスメーカー(家庭内通信の主導権は誰か)、自動社メーカー vs 電力・ベンチャー(EV、EV関連事業=充電器/交換方式)が競っている。が、需要家情報の取込み、スマートメーター、蓄電池、家庭内通信、EVおよび関連事業で、主導権を争うが、ハウスメーカーが好位置にある。

エネルギーセクター間の争い

電力業界は、家庭・工場、交通の電化。熱はヒートポンプで。ガス業界は、スマートエネルギー・ネットワーク狙いで、地域熱・コージェネ(熱電併給)、マイクログリッド水素社会へ、石油業界は、ガソリン、電気、水素スタンドへ(ガソリンスタンドから総合エネルギー提供へ)。次世代エネルギーは、太陽熱発電、宇宙太陽光、バイオマス(エネルギー作物・藻)、人工光合成などが考えられる。

海外市場で勝つには

①初期段階での参入、②資金手当て(商社、インフラファンド*、ODA)、③運営ノウハウ(PFI*、PPP*、自治体=上下水道、電力、JR=新幹線)、④差別化できる技術(HEMS、地熱、ZEB、直流送電=ABB)などが必要。

日本版スマートグリッドの3つの視点

①太陽光・EV大量導入による新産業育成、②インフラ輸出へのスマートシティー・ショールーム、③地域雇用へのマイクログリッドによる地域活性化の3つの視点があり、今後日本の経済発展をリードすると期待されるスマートグリッドを育成していかねばならない。

質疑応答で、次の通り論評された。

  1. 環境省のいう太陽光を主力とする5000万KWは現在の40倍である。その80%を家庭に依存するものであり、スマートグリッドは必須である。
  2. 消費者は、スマートハウスの発展系の家を通してメリットを享受することになる。
  3. 環境未来都市構想はあるものの予算は少なく金がない。場を創るから後は民間で実現するものとされ、大規模実証実験も規模が小さく、1プロジェクトに集約できないから行政の支援には期待できない。
  4. 日本でのスマートグリッド革命は自らの売上減少に繋がるエネルギー会社中心では進まない。需要家側からの雇用促進・地域活性化策が、電力会社への圧力となって、変革が進むことを望む。

以上

コメント

セクター間及び企業間の競争は、要素技術の革新をもたらすものの、投資を分散させ経済的にも時間的にも非効率なものとし、インフラ革命、あるいは雇用・ビジネスの拡大を遅滞させるのではないかと危惧する。

(環境時事分科会)


  • 編集註:
  • *リアルタイム・プライシング(RTP)とは卸電力市場価格における時間別変化を反映して電気料金を変動させる料金体系
  • *エコーネットとは家庭内の電灯線や無線を利用したネットワークの規格
  • *インフラファンドとは社会資本の建設や維持、運営する会社や事業権に資金を投じ、通行料や使用料などで収益をあげる仕組み
  • *PFI(Private Finance Initiative)とは公共サービスの提供に際して、従来のように公共が直接施設を整備せずに民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法
  • *PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)とは、官と民がパートナーを組んで事業を行うという、新しい官民協力の形態