(2013年2月26日 )

環境部会環境新学習分科会

「環境とエネルギー」シリーズセミナー第3回の報告

講師環境とエネルギーシリーズセミナー第3回として「日本低炭素社会を展望する」と題するセミナーを2013年2月13日(水)東京ウイメンズプラザで講師に日本の環境問題の草分けの御1人で現在地球環境戦略機関研究顧問で東京都環境審議会会長も務めておられる西岡秀三氏(写真)をお招きし開催致しました。

講演は3つのパートに分けて、(1)温暖化問題の実態(2)日本はどうなっているか(3)我々はどうすべきかという順序で進められました。

 1.概要

  1. 温暖化は環境問題の最大の課題の1つで、科学の問題として調査・検討されてきたが、同時に政策、エネルギーの問題でもある。その特殊性として、自然が相手ゆえ科学的知見が大事、自然への影響が重大であり、不可逆性や不確実性を有する。
    温暖化は1970年代より農作物の被害、北極の氷の融解など現象面で現実に起きており、不確実の幅は狭まっている。IPCCは、温暖化は90%の確率で人為的な温室効果ガスに起因するとしており産業革命時より、2度C以上の温度上昇は危険レベルとしてその温度以下に抑える事を勧告している。この為にはCO2削減をすすめ、低炭素社会をつくらねばならない。
  2. 世界は、洞爺湖サミット(08年)、ラクイラサミット(09年)を通じ、2050年までに世界全体の排出量を50%削減、先進国全体では、2050年までに80%以上の削減目標で一致した。日本は2度C目標とすると50年時点で、08年から86%削減という負担を負う事となるので、社会の大転換が必要。この日本の2050年の削減は可能と思われるが、その想定する社会は、モノづくり技術の開発で世界の中心となり、ジャパンブランドの高付加値製品を販売する様な、サービス産業中心の社会で、又、再生エネ主体の資源自立社会が目標となる。
  3. 我々は、低炭素社会を作るため、エネルギーに就いてこれまで、供給面中心に見てきたが、これからは需要面から見直し無駄を省いて節約を進め、又、再生可能エネルギ―への大転換が必要である。そして地域社会を温暖化対策と共に考えていく必要があり、自動車依存を減らし、鉄道などの公共交通中心のスマートコミュニティ等の地域づくりを行うべきである。
最後に低炭素社会に向けてとして以下のメッセージ
  • 気候の大規模変化は人類の生存基盤を揺るがすもので今直ぐの対応が必要
  • 科学的根拠は固まりつつあり、対応策を深める段階に入った
  • 世界はエネルギ―高依存社会から低炭素社会へ大転換する必要あり、日本も舵を切る時
  • その為にエネルギ―を需要側から見直し、自然エネをとりいれ、経済システムを見直し、自然基盤のグリーン経済への転換等、低炭素化を進めるべき
  • 自然への畏敬の念を忘れない事

2.質疑応答

Q)2050年の80%削減可能のシナリオは、どの様なものか

A)エネルギ―の節約、CO2排出の少ないエネルギーへの転換とCCS(CO2の回収・地中貯留)による約2億トンの吸収可能性も入れている

Q)日本等、先進国が80%削減しても、途上国が問題ではないか?

A)途上国も夫々努力し、相当な削減する事が前提となっている。

Q)CO2の排出権取引は、一時、欧州でブームになったが、最近の動きは?

A)日本が京都議定書から抜けたこともあり、購入国が少なく、休眠状態であるが、現在、世界で検討されている新しい法的枠組みが出来れば、再び活発になるであろう。

Q)シェールガスは、温暖化問題でどの様な位置付けになるか。

A)シェールガスは他の化石燃料より、CO2排出量少なく、特にアメリカにとっては、2020年に向けて、温暖化対策の有力な武器たりうる。

Q)IPCCの報告による温暖化の最大原因はCO2であるとの報告は実証されたものでは無く、科学的とはいえないのではないか、又、90%の確率の根拠は?

A)世界の多数の科学者が観測地点を増やし、データを蓄積し、慎重に調査、研究した結果の報告であり、確度を高めた科学的報告と判断できる。

以上