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2011/08/01(No106)

「バラの香り」

佐藤 和恵

筆者皆さんはバラの花、お好きでしょうか?

バラの花はとても種類(120種)が多く、食べて良し、香り良し(贈られて良し!)。

精油(エッセンシャルオイル)は植物に含まれ、揮発性の芳香性物質を含む有機化合物です。オイルという字はついていますが、油脂とは全く別の物質で、水に溶けにくく、アルコールや油脂に溶け、300種類位の精油があります。

精油の中でローズは「香りの女王」と呼ばれ、高級感に溢れたエレガントな香りがします。また極めて複雑な構成成分を持っていて、分かっているだけでも300以上の成分が含まれており、精油全体の86%程度を占めています。残り14%は多数の微量成分からなっているので、ローズの優れた特性に重要な役割を果たしていると考えられています。抽出法の違いでローズ・アブソリュートとローズ・オットーがあります。ローズ・アブソリュートはキャベッジローズ(Rosa Centifolia)から溶剤抽出法で得られ、透き通るような赤色をしています。熱バラの花が加えられてないので、水蒸気蒸留法で抽出されるオットーより、甘みが強くバラの花そのもののような香りがします。この匂いの元はフェニルエチルアルコール(バラの香気成分)で70%前後も含まれているので、バラが濃縮された香りがします。最近、この成分が毛乳頭を活性化することが、慶応大学とノエビア化粧品の共同開発で明らかにされ、育毛剤の主成分として配合された商品が発売されました。ローズ・オットーは水蒸気蒸留法でダマスクローズ(Rosa damascena)より抽出され、ほぼ無色透明です。アブソリュートよりも大量の花びらを使うので、非常に高価、溶剤を使わないので、刺激は低く、すっきりとエレガントな香りです。成分はアブソリュートと違い、シトロネロールを50%位含んでいます。これは抗感染・免疫調整・強壮・鎮静・血圧降下などの作用があります。またアブソリュートよりも3倍ほどゲラニオールを含むので、幸福感をもたらすドーパミンの分泌をよりアップさせるとも言われています。分子が小さいので経皮吸収されるようです。トリートメントする場合はこちらがより好まれます。

精油はまだ日本では雑貨扱いですが、少しずつ精油の抗酸化作用を調べたりして、化学的な検証も行っていきたいと思っています。現在、認知症予防あるいは認知症軽減ができるかどうか?をアロマセラピーを使用しての実験で進めているところです。また薬学部の学生でアロマをやりたいという学生がやって来るようになりました。私の老後には間に合いそうにありませんが、好きなお酒を飲んでアンチエイジングしながら、アロマ三昧の老後を夢見ています。

さとうかずえ ディレクトフォース会員
現昭和大学医学部客員教授、明海大学歯学部常勤講師、東京工科大学バイオニクス学部兼任講師

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