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スキューバアニメ

スキューバ同好会

世話役 佐藤 眞樹(2016年版)

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2019年6月10日 更新

目 次

イベント名 開催年月日 行き先
第19回 「パラオダイビング紀行」 2016/03/06~03/09 パラオ
2016年10月1日

第19回 「パラオダイビング紀行」

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昨年3月には念願のペリリュウ島でバラフエダイの産卵をメッチャ早い流れに引き込まれそうになりながら必死に岩棚にしがみついて眺めたばかりなのに、今年もまた、カンムリブダイの産卵を見にパラオ本島まではるばるやって来てしまった。

昨年8月に久米島で潜った帰りの機内で見たダイビング雑誌にカンムリブダイの産卵の記事が載っていたのを読んで、たちまち覗き見に行きたくなったためだ。5人いた同好会メンバーも寄る歳なみか次々に倒れ。今回も同行は杉山さんと私の2名になってしまった。

パラオまでは成田からDELTAの直行便が飛んでおり、4時間で行ける。いつものように空港のレストランでラーメンと餃子に生ビールで乾杯して無事を祈り、機内の人となったが、真夜中にはパラオに到着。

一緒に潜ってくれるインストラクターはいつもの様にサキさん。伊豆大島でご主人とダイブハウスを経営しているが、冬場はパラオに出稼ぎに来ているチャキチャキの元気はつらつおばさん。

1日目

初日は水に慣れるということでデクスターウオール①、ブルーコーナー②、ニュードロップオフ③で潜った。アオウミガメ始め海の王者と言った風格で悠々と泳ぐナポレオン、銀鱗を輝かせて川の流れの様に移動するギンガメアジの大群や真黄色の中に4本の黒い筋が入った花が一遍に咲いた様な明るく華やかなヨスジフエダイの群れ、縄張りを確認するように悠々と泳ぎまわるグレイリーフシャークや物凄い早さでアッと言う間に海の彼方に消えて行くイソマグロ、明日の主役になるカンムリブダイが乱交パーテイーの現場に行く途中なのか1匹でいそいそと泳いでいるのを眺め、久し振りにパラオで潜ることの楽しさを噛みしめた。関西から来た親子3人がコテコテの関西弁で皆の笑いを取り、人気者になっていた。夜は教えて貰った日本人の料理人が居る小料理屋で寿司を食べ、明日の早朝ダイビングに備えて早めに眠った。

2日目

朝6時に快速船でウーロンチャンネル④近くのグラスランドと言うスポットに向かう。大潮の4日前の朝位から、体長1メーターを超える、そのいかつい姿から別名バッファローフィッシュとも言われるカンムリブダイが1千匹以上もが何処からともなく集まり、一斉に産卵する。ここは、最近世界で初めて発見された産卵スポットであり、今回のメインイベントである。何艘かのダイブボートが乱交パーティーの現場を探して走り回る。


今回のダイビング・ビデオ 本文と併せご覧ください(約15分)

7時10分エントリー。去年見たペリリュー島のバラフエダイの産卵は海面下15メーター位の深さに横たわるテーブル状の台地に数百匹のバラフエダイが密集して集まり、産卵,放精が始まるのだが、体の大きいカンムリブダイは深さ数十メートルは有ろうと思われる深く、青く、広い海の中層に集まって来る。バッファローの様な厳つい顔が婚姻色で真っ白に変色したオスが何匹もメスの回りに集まり、急かす様に追い立てると、メスが突然急上昇を始める、何匹かのオスがメスを追いかけ産み落とされた卵に放精する。中にはオスが急上昇したのをメスと間違えて数匹のオスが追いかけ、ナーンダ違うのかと言って花火の朝顔の様に別れて行く様子も何度か見た。

広い海の中で、しかもかなり離れた場所での数百匹は、ブルーのカーテンの向こうに影の様に見え、写真を撮るには些か難しく、今回もこれはと言う動画は撮れなかった。写真には上手く撮れなくても、実際に自分の目で見た喜びは大きかった。後で聞いたところによると、ここに集まって一斉産卵するのは、若い連中だけで、大きく、強くなるとオスは自分のハーレムを作り、慌ただしい乱交パーティーに参加することもなく、岩棚の上を泳ぎながら悠々と子孫を作るのだそうだ。

大きな仕事を成し遂げた後の達成感の余韻に浸りながら、我々の舟はずっと北のユーカクチャンネル⑤に向かった。

このポイントは一昨年マンタを求めて横井さん、松本さん、杉山さんの4人で潮汐の流れは良くないが、もしかしたらと言う思いでガイドの昌子ちゃんと来て、結局1匹もマンタに遭遇せずに終わったポイントで、その時ペリリューでロウニンアジの群れを見たいと言う我々の望みを「皆さんの腕前ではとても無理、物凄いカレントに押し流されて命も保証できない」と言われて、がっかりさせられた場所でもある。

水に入ると一寸濁ってはいたが、中層を泳いでいると、右後ろから体すれすれにマンタの巨体が通り過ぎた。余りに突然なことで大急ぎでカメラを向けたが、撮れていたのは海底ばかりで、ONとOFFのシャッターボタンを押し間違えていたらしい。海底でなく中層でマンタをこんなに間近かで見られることはそんなにない。ぐっと海底にまで降りて行くと白砂の中で頭と尻尾だけ隠しきれないツカエイがひょうきんな顔をして横たわっていた。暫く行くと横幅1メーターはあるマダラエイが海底をホーバークラフトの様に滑空して行く。杉山さんがカメラで追いかけて行く。海面への上がり端にまたぞろマンタが優雅に羽ばたきながら彼方に消えて行くのを見て舟に上がった。

舟に上がると驚いたことに、海上に姿を見せながらあちこちにマンタが群れをなして泳いでいるのが見えた。中には大きくジャンプしたり、手を振る様にヒレを片方上げたりしているのも居た。皆、舟の上をあちこちと走り回りながら、次々に現れるマンタに歓声を上げた。快速船も船長が目で海上を眺めながらマンタを追いかける。正に舟の真下まで来たマンタもいた。7〜8枚どころか述べで10数枚は見えただろう。その日は後2回潜り、マンタに3〜4回遭遇し、ブラックフィンバラクーダの群れに会い、充実した1日を感謝しながら帰路に付いた。

夜は雰囲気の良い恋人同士が語らうに相応しい洋上のレストランで、お互いに女気のない、みじめな気持ちを噛みしめながら、杉山さんと2人きりでステーキを食べた。

3日目

1本目はカンムリブダイの産卵を見たグラスランド。産卵場所とは違い浅い砂地でチンアナゴがニュキニョキと砂地から生えており、インドオキアジの大群がカーテンの様に揺れ、スカシテングの小さな群れが岩の間を泳ぎまわる。そして上がり端、小さな岩根の回りを多分クリーニングに来たのだろうマンタが悠々と回遊していた。

その日、3本目に潜ったウーロンチャンネル④はグレイリーフシャークのオンパレードだった。流れが早いので岩の窪みにフックを引っ掛けて凧の様に宙吊りになって待っていると左から次から次へとシャークが目の前を泳いで行き、暫くすると反転して右から左へ列をなして戻って来る。最近の3D映画を見ている様で正に壮観、圧巻だった。

4日目

仕上げとしてブルーコーナーとジャーマンチャンネル⑥で潜った。ギンガメアジの大群、僕の大好きな黄色の地に黒のストライプのツノダシ、和風好みのウメイロモドキ、一寸小型で丸まっこいインドオキアジの大群、竜宮城に来たなと思わせるアカネハナゴイの群舞、乱交パーティーを無時終えたのかそれとも卒業したのか悠然と小魚を引き連れて泳ぐカンムリブダイ、そしてジャーマンチャンネルではクリーニングに来ていたマンタにサヨナラの挨拶をし、奇妙な擬態を見せてくれるハダカハオコゼやかわいらしいソラスズメダイの群舞を 見て今回のダイビングを終了した。

夜はずっと一緒に潜ってくれたインストラクターのサキさんと初めてパラオに来た時以来我々のマドンナだった、そして今は我々の反対を押し切ってパラオ人の彼と結婚し、モモタと言うやんちゃな男の子の母親となったマイちゃんを誘って焼き肉を食べ、1年振りの再会を懐かしんだ。

5日目(最終日)

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帰りの飛行機に乗る前の18時間は残留窒素を減らすために海に潜れないので、今年はペリリュー島の戦跡を巡るツアーに参加した。ペリリュー島は日本軍1万人、米軍3万人が戦い、日本軍は捕虜200人、生存者34人以外は全員戦死、米軍も2千人の戦死を含む1万人の死傷者を出した壮絶な戦いの場であった。草叢に覆われた塹壕や朽ちた戦車、撃ち落とされ飛行機、砲弾で破壊されつくされた司令部跡など正につわものどもの夢の跡そのものだった。陛下が昨年訪れた慰霊碑は、正に昨年我々がバラフエダイの産卵を見る為に潜ったポイントの目の前であり、真っ青な空に白い雲が浮かび、強い南国の光の中で海岸の岸壁に押し寄せる波が大きなしぶきを上げている。こののどやかな光景は水平線の彼方に、ある日忽然と現れた大艦隊の姿をふと思い起こさせ、その膨大な物量を象徴するような大艦隊を眺めた日本軍兵士の気持ちに思いを馳せざるを得なかった。
  

パラオは人口2万人のミクロネシアの島々からなる共和国だが、19世紀後半スペインはパラオを含むミクロネシア植民地をドイツに売却、第1次世界大戦後、ドイツ領から日本の委任統治領になり、以降日本は南洋庁を設置し、多くの日本人が移民、人口の3/4を占める程になった。1981年米国の信託統治から独立、最初の大統領には日系のクニオ・ナカムラが当選した。ペリリュー島で現地の方々を全員米軍の攻撃から避難させたエピソードも有り、日本人に極めて好意的な親日国であり、公募で決められた国旗が白地に赤ではなく、太平洋を表す青字にお月様を表す黄金色の円と言うことでも親日度が推し量れる。

ずっと一緒に潜って来た杉山さんが2度目の脳梗塞で遂に奥様から禁足令が出され、いよいよ活動メンバーの数が減って来たが、事務局のご協力により、有り難いことに最近2名の方が当会に加わってくれることになった。新しいスキューバ同好会の再出発である。次回の冒険談をお楽しみに!

 

今回の写真アルバムです。併せてご覧ください。

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