2021/12/01(No.354)
中田 邦臣
いきなりですが、「リスクセンス」という語彙は、リスク学事典(編 日本リスク研究学会、丸善出版、2020年7月)の事項索引に未だ採用されていない、学会内でも認知されていない用語です。この執筆を機にGoogleで検索したところ、この1〜2年で私達と全く縁のない方や分野で急に使用されはじめていると感じ、近々普通名詞化するのではと期待しています。
私が、DF技術部会で今日のリスクセンス向上活動に繋がる活動について発表をさせていただいた時の題目は「失敗学と組織行動」(第31回例会2008年5月)で、私自身、リスクセンスという語彙を知りませんでした。当時は「危険感受性」「危険洞察力」などが使用されていたと記憶しています。私達の中で「リスクセンス」を最初に口にされた方は、組織内の事故や不祥事を組織行動の視点から未然に防止しようという研究をNPOの形態で実施しないか、という提案をしてくださったO学術図書出版のI社長でした。私達の研究が目指している方向は、集英社新書の翻訳本「リスクセンス」(注1)が提唱している「日常生活には危険がいっぱい。だからリスクセンスを磨け!」に通じていて、研究成果を企業向けに普及させるべくリスクセンス研究会(以下RS研という)を発足させよう、との提案の時です。この頃には、DF内の失敗学と組織行動に関する勉強会も始まっており、NPO RS研の設立時(2011年11月)には、技術部会から保坂洋さん(元事務局長)が理事として参加されています(注2)。現在は、リスクセンス推進研究会のメンバーが、以下のように多岐に亘ってRS研と一緒に活動しています。
写真左から、梅里さん(審査委員長)と金丸さん(講演者)
上記は、RS研との直近の活動の紹介ですが、RS研の発足以前でも大きな貢献があったと感じている活動がいくつかあります。
これら活動は、DFメンバーの企業での豊富な経営経験を基にした、DF内の定常的な研究活動、技術部会とガバナンス部会の研究成果を社会へ発信するという素晴らしい活動とみなすことができます。リスクセンス力は、情報を豊富に入手でき、入手した情報を自らの経験で判断する力に比例すると言われています。多様化する判断材料を大局的に判断できる人の集まりのDFは、リスクセンス向上活動を推進できる素晴らしい組織と感じています。クレーム、事故や不祥事など組織内の芳しくない事柄の未然防止に資する活動は、DFのメンバーの出番、と感じているのは私一人ではないと思っています。今後ともご指導、ご支援よろしくお願いいたします。
なかだ くにおみ(597)
技術部会 NPOリスクセンス研究会元 三菱ケミカル
注1:ジョン・F・ロス、佐光紀子訳「リスクセンス」(集英社、2001年3月)
注2:中田は発足以来、副理事長を拝命
注3:DF監査役部会(2008年)小研究会「不祥事と監査役」の研究成果