2017/6/15(No24n)
「食と農業研究会」 四方 満
愛犬とともに |
DFの諸活動の中に「食と農業研究会」がある。
2009年より酒井世話役の下に年3〜4回、延25回勉強会や見学会を行い、農政・食料需給・食の安心安全・サプライチェーン或いはTPP等をレビューして活動をしている。
私も創業時からのメンバーでおり、永年食品会社に勤めていたが、研究会での演題、見学場所を通じて食糧品全般にわたって視野広く観ることが出来てきている感がする。
当然のことながら、食品業界出身者及び食に関するネットワークのある人たちが会員になっているので、その方々の協力によって、通常見学できない場所(流通市場、各メーカーの製造ライン等)の見学が出来たり、専門家の説明や会員からの質疑応答に必ず時間がとられている。
見学会は多彩を極め、我が国最大の卸売市場「太田市場」「東京築地市場 ①」、農産物原料の先物取引の「東京商品取引所 ②」、研究機構では筑波にある「国立農業食品産業技術総合研究機構 ③」などを訪れた。
メーカー関連では、「日本ハム」「キューピーグループ」「ニチレイフーズ ④」「味の素」「キッコーマン ⑤」、日産80万個のシューマイ生産の「横浜崎陽軒 ⑥」等の工場見学には、多くの会員が参加している。
工場見学、勉強会の後の懇親会は毎回盛り上がりを見せている。最近は、石川県一の米農家
や新潟県の十日町の刈入れを見学し、コメの付加価値である地元の酒造メーカーに寄って試飲、更に晩酌用のお土産を入手する1泊の視察旅行も好評である。幅広く日本のコメ文化に触れる奥の深い企画がなされている。お陰で、会員相互の情報交換により幅広い知識が身についてきた感がする
これらの中で “最近気になること” は、日本の農政改革である。
政府は「農業を儲かる産業に変える」と唱えて諸施策を実施しているがはたして順調に変革されてきているのだろうか。
大手の食品関係会社はそれぞれに経営をされている。
しかしながら食品産業は野菜・コメを農家が育て上げ市場に供給している。そして流通を通して我々の食卓なり、レストランのメニューになりして胃袋に入ってくる。そこに携わる人々は零細農家をはじめ、中小の業者から大手企業まで幅広く裾野の広い業種になっていることは言うまでもない。
農水省の試算では、農家の収入は売価の42%だというデータがある。すなわち1個100円のトマトをスーパーで買ったならば、その内の42円が農家の手取りとなっている。その中には苗、種代、設備関連、光熱費、商品ロス等がふくまれており、その残りが農家の人たちの生活費になっていると言っても過言ではない。
補助金ゼロ、JA関連ゼロ、すなわち完全自立農家はいるがほんの一部である。日本農業の厳しい現実をみると、2015年には主要農家が5年前より18%減り、農家の人たちの平均年齢が67歳に上がっており、数年後には大幅に離農が増え年金と農業以外の収入に頼るところにも限界が来ている。
農業は農家だけのためにあるのではなく、広く国民生活者目線で考え、自然に国産品に手が伸びるような仕組みと品質と信頼が確立されねばならない。そうなれば世界市場で稼げる体制も構築可能となってくる。完全自立農家への支援、若手就農者への支援、海外市場進出への支援等、いずれも基本は我々生活者のニーズの変化を的確に捉えて、適切に対応できなければ事業としては成り立たない。
一般社団法人ディレクトフォースは社会貢献を謳っている。だからこのような視点で物事を捉え、具体的に支援をすることを考える必要がここにあるのではないか。
しかたみつる ディレクトフォース会員(225)
食と農業研究会世話役 元中村屋
(編集註:「食と農業研究会」はこちらからご覧ください)